浅間山(2568メートル)が噴火してから、2日で1カ月が経過した。噴火自体はごく小規模なうえ降灰も限定的だったため被害は最小限に抑えることができ、現在は火山活動も沈静化しているが、噴火警戒レベルは依然として「3」(入山規制)を維持したまま。春休みとゴールデンウイーク(GW)を控え、観光面への影響を懸念する嬬恋村では「早く2に下がってほしい」と祈る声が漏れ始めている。
「噴火直後はキャンセルが数件あったが、その後の影響はさほどでもなかった」。浅間山に近い村内のあるホテル従業員(29)は、こう振り返る。ただ、警戒レベルについては「この状態が続くとだんだん心配になる。早く下がってほしいというのが本音」と話す。
村観光協会によると、レベル3が維持されると立ち入り規制となる火口4キロ以内にある「浅間高原シャクナゲ園」がオープンできなくなる。現在は冬季休業中だが、見ごろの5月には大勢の観光客が集まる人気スポットで、吉田勝事務局長は「シャクナゲ目当てに他県から来る人も多い。春までには入れるようになるといいのだが」と苦り切っている。
村内の関係者には、4年前の中規模噴火の記憶が深く刻まれている。噴火は避暑シーズンを直撃し、問い合わせが殺到。宿泊施設などは安全性を十分説明できず、結果的に観光客は激減した。当時採用していた火山活動度レベルが「3」から「2」に引き下げられるまで9カ月かかり、観光で成り立つ村は大きな打撃を受けた。
こうした反省から、村観光商工課は2月、宿泊施設を対象に勉強会を実施し、浅間山に対する知識を共有した。下谷通課長は「一般的な知識でも、不安になっている客を安心させられる。風評被害を少しでも減らせれば」と話している。【伊澤拓也】
噴火警戒レベル3はいつまで続くのか。前橋地方気象台は「現在も中規模噴火の可能性は否定できず、当面は3を維持せざるを得ない」という。
同気象台によると、現在の浅間山は小康状態にある。一方で活動の目安となる火山性地震の回数は噴火直前の2月1日の245回から減りつつあるが、同23日に116回を観測するなど安定していない。ガス噴出量も同様で、火口付近が赤くなる「火映」も度々確認されるという。
噴煙は噴火時の2000メートルから50~200メートルまで下がり、降灰も2月1日以外はほとんど確認されていない。
レベル2への引き下げには、これらが低い数字で安定するのが条件だが、同気象台は「現状はまだ不安定で、見通しが立たない」という。【伊澤拓也】
毎日新聞 2009年3月3日 地方版