病気にかかっているうえ、親が働きに出ていて保育をしてもらえない子供らを預かる病児保育施設。「働くお母さん」の増加などで施設の必要性が高まっているが、病気の子供を預ければ直してもらえると勘違いしたり、必要な服を普段着せていない親などもおり、施設は親へのアドバイスも担っている。県内で唯一、自治体の単独事業として開設されている青森市古川2の「市病児一時保育所」を訪ねた。【後藤豪】
一時保育は、医療機関で受診してくることが基本で、▽体温を測る▽病院の薬を飲ませる▽食事やおやつをあげる▽昼寝をさせる--などを行っている。
定員約10人の同保育所は、0歳~小学3年生が対象で、利用料は1日900~1000円。同保育所に勤めて7年目になる保育士、篠崎美女子(みなこ)さん(46)は、2児の母としての体験を生かしている。保育園に入ったころ、1歳だった長男が水ぼうそうになり、治りかかったころに3歳の長女も同じ病気にかかった。篠崎さんは看病に追われ、約2週間、仕事ができなくなり、職場に戻りづらくなった経験がある。篠崎さんは「お母さんたちが『何とかしてほしい』と一時保育所を頼る気持ちはよく分かる」という。
一方、一時保育所の役割を分かっていない親も見られるという。ある母親は「大した熱じゃないので」と保育を予約したが、保育所に来た時は子供の体温は40度を超していた。篠崎さんらが「(小児科の)先生に聞いてみないと」と言っても、母親は「病気の子供を預かるところでしょ。病院に行く時間ないので」と、子供を一方的に置いていったこともあった。
その子は座薬でも熱が下がらず、迎えに来るよう母親に連絡しても「無理」と電話で断られたという。子供はずっと泣きべそをかき、篠崎さんは「(一時保育所が終わる午後)6時までが子供には長く感じるだろうな」と気の毒だったという。
一方、肌着を着せないのも最近の特徴という。Tシャツやトレーナーを肌の上に着た子の母親に、肌着を着せるよう指摘すると、翌日は新品を着せてきたりするといい、篠崎さんは「普段、着せていない親が多いのでは。肌着は体温を保ったり汗を吸う効果があり、とても大切」とアドバイスしている。
同保育所に近い「工藤こども医院」(青森市)の工藤協志(きょうじ)院長は、「保育所への入所時期が早まり、免疫力が不十分なのに集団生活に入っている。このため感染症にかかりやすく、一時保育所に行かざるを得なくなっている」と悪循環を指摘する。同市の鈴木良子・子ども支援課長は「『働くお母さん』が急には仕事を休めない職場も多い。保育サービスが多様化しているが、市が担える部分を継続したい」と話している。
毎日新聞 2009年3月3日 地方版