むろん公社も事態を深刻に受け止めている。「研修制度の充実」などの施策を掲げ、地方の看護学校から費用持ちでツアーを組んでまで、職員集めに奔走している。それでも、看護師不足は解消されていない。
保険外診療に乗り出す公社化予定の豊島病院
今年4月には、豊島病院(板橋区)も公社に移管される。
その豊島病院も状況は厳しい。昨年10月、2年前から休止していた産科を一部再開したばかり。逆子や双子など中リスクの妊婦に限り、ひと月に5件程度のお産を扱うレベルにとどまる。NICU6床、GCU(NICUの後方病床)19床は稼働していない。「行政が担うべき医療が削減されるのでは」と危惧する地元住民からは、公社化に強い反発が起きた。山口武兼副院長は「GCUは今年4月、将来的にはNICUも再開したい」と語るが、一度低下した機能を取り戻すのは容易でない。
豊島病院は今後、新たな医療にも取り組むという。先例では、大久保病院(新宿区)が、アンチエイジング(老化防止)やメタボ治療のための週末入院などを実施している。
「ガン治療での免疫細胞療法や歯科インプラントなど、都立時代にはできなかった保険外治療を提供したい」と山口副院長は意欲を見せる。が、東京都が出資する病院が、保険外治療に力を入れるべきなのか。地域に必要な医療がおろそかになるおそれはないのだろうか。
都立病院でも医師不足は深刻だ。墨東病院(墨田区)が発端の“妊婦搬送不能事件”は同病院での産科医の大量欠員がそもそもの原因だった。
昨年10月4日、脳内出血を起こした江東区の妊婦(36)が墨東病院を含む7病院に搬送を断られたうえ、最終的に搬送された墨東病院で出産後に死亡した。同病院は産科医の手厚い配置を義務づけられた総合周産期母子医療センターでありながら、妊婦が運ばれた日の当直はわずか1名の研修医というありさまだった。
墨田区、江東区など東京東部地区で唯一、ハイリスク出産を受け入れる墨東病院には、妊婦の搬送依頼が引きも切らない。千葉や埼玉など他県からの搬送も2割を占める。その最後の砦が、産科医不足に困窮している。
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