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_/ _/_/ _/_/_/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/ _/ _/ _/ Japan On the Globe (31) _/ _/ _/ _/ _/_/ 国際派日本人養成講座 _/ _/ _/ _/ _/ _/ 平成10年4月4日 2,358部発行 _/_/ _/_/ _/_/_/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/_/ _/_/ Common Sence: 北朝鮮に拉致された日本人少女 _/_/ _/_/ ■ 目 次 ■ _/_/ 1.失踪しためぐみさん _/_/ 2.北朝鮮からの消息 _/_/ 3.めぐみさんの両親の思い _/_/ 4.広がる支援の輪 _/_/ 5.拉致の目的は _/_/ 6.救出の方法は _/_/ 7.国民を守るのは同胞国民 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ■1.失踪しためぐみさん■ 横田めぐみさんは明るく朗らかな子だった。昭和52年、中学入 学とともに、バドミントン部に入った。秋の新潟市内中学校の新人 戦に出場し、ダブルスで5位に入った。次の日、めぐみさんは新潟 市の強化選手に選ばれた。「わあー、大変だ、えらいことになっち ゃった」と家族に話した。めぐみさんが姿を消す前日の事だった。[1] 地元紙「新潟日報」は、昭和52年11月12日に次のような記 事を掲載している。[2] 「新潟市水道町2銀行員横田滋さん(45)の長女めぐみさん (13)同市寄居中学1年は、15日の放課後、クラブ活動の バドミントンの練習に参加しており、同6時35分ごろクラブ の一年生女子二人と学校の正面を出てすぐ別れ、もう一人とも 学校から約200メートル海岸寄りの新潟大学教育学部角の十 字路で分かれたまま消息をたった。 警察は、誘拐、事故、自殺、家出とあらゆる角度から捜査を進め たが、目撃情報、遺留品などの手がかりもなく、迷宮入りとなって いた。 ■2.北朝鮮からの消息■ めぐみさんの消息は、それから17年後の平成6年に、思わぬ所 からもたらされた。韓国に亡命した北朝鮮工作員の証言に、次のよ うな内容があった。 日本の海岸からアベックが相次いで拉致される一年か、二年 前、恐らく76年(昭和51年)のことだったという。13歳 の少女がやはり日本の海岸から北朝鮮に拉致された。どこの海 岸かはその工作員は知らなかった。少女は学校のクラブ活動だ ったバドミントンの練習を終えて、帰宅の途中だった。海岸か らまさに脱出しようとしていた北朝鮮工作員が、この少女に目 撃されたために捕まえて連れて帰ったのだという。[2] 船倉に40時間以上も監禁されたまま北朝鮮に連れさられた が、この際めぐみさんは「お母さん」と泣き叫び、壁などをひ っかいたのか指は血だらけになっていたという。[3] 『朝鮮語を習得すれば5年後にお母さんのところへ返してや る』と言われ、一生懸命朝鮮語を勉強した。そして18歳にな った頃、それを拒否された。それならと彼女は、北朝鮮工作員 の監視下でいいから新潟へ連れていって、遠くから親の顔を見 させてほしいと頼んだ。自分は声もかけないし、密かにじっと 黙っているので、お父さん、お母さんの顔を見せてくれと。し かしこれも聞き入れられずに、精神に破綻をきたしてしまった。 それから数年後、平壌の金日成政治軍事大学で、めぐみさんは 北朝鮮スパイの「日本語教育係」をしていたという。[4] ■3.めぐみさんの両親の思い■ めぐみさんが北朝鮮に拉致され、平壌で生きているとの情報がも たらされた時、父親の横田滋さんは: 生きていたのか、という喜びと、こんな理由で神隠しのよう に消えたのか、との驚きが入り混じり、この情報をどこまで信 じてよいのか、本当ならどうすれば日本に連れ戻せるかとの不 安も感じました。 拉致疑惑が浮上して最初に悩んだのは実名を公表するかどう かです。公表することにより、めぐみの身に危険が及ぶ可能性 がありますが、日本はこれだけの情報を持っているのだと相手 国に知らせる事で、拉致者に手出しできなくした方が安全が保 たれると判断し、実名公表に踏み切りました。 普通のあの日の生活に戻りたい。普通の顔で、普通の言葉を 自然にかけ合い、何もなかった普通の家族の団欒の日々に戻り たい(母親、早紀江さん)[4] ■4.広がる支援の輪■ こうした情報を受けて、支援の輪が広がり、新進党の西村慎吾衆 議院議員に相談が持ち込まれた。西村議員は昨年2月に衆議院予算 委員会でこの問題を持ち上げ、政府は捜査を進めることを約束。3 月には、「北朝鮮による拉致」被害者家族連絡会が結成され、さら に拉致された人々を救出しようというボランティア団体もでき、署 名活動を開始した。 4月19日、政府は拉致疑惑を7件10人と発表した。4月25 日の日米首脳会談では、橋本首相が北朝鮮への無条件の食料援助を 要請した米国に対して、拉致問題があるため、困難である事を表明 した。さらに超党派の「北朝鮮拉致疑惑日本人救出議員連盟」が結 成され、衆参121名(5月10日時点)が参加している。 ■5.拉致の目的は■ なぜ、北朝鮮は日本人を拉致するのか、現代コリア研究所長佐藤 勝巳氏は、次のように説明する。 北朝鮮は1987年11月ソウル五輪を阻止するために大韓 航空機をミャンマー付近海上上空で爆破した。そのとき二人の テロリストが持っていたパスポートは偽の日本人のものである。 あのテロによって百余名の韓国人の命が奪われた。もしあの時 テロリストの一人金賢姫が死亡していたなら、二冊の日本人バ スポートと二人のアジア人の死体がのこっただけであった。 以上の事実から韓国人は日本人テロリストが大韓航空機を爆 破したと考えるであろう。そうなれば日韓関係は最悪の事態を 迎え、北朝鮮の思惑通りソウル五輪に悪影響を与えることにな ったと思う。しかもテロをやらせた北朝鮮は擦り傷一つ負わず 日韓の対立を高みの見物ができ、かつ韓国を窮地に追い込むこ とが出来る。あのテロ事件は北朝鮮の"一石三鳥"を狙った悪質 極まりないものであった。[12] この金賢姫に日本語を教えた日本人「李恩恵」は、やはり拉致さ れた田口八重子さんであると考えられている。日本人拉致は北朝鮮 の国家テロ戦術の一環なのである。 ■6.救出の方法は■ 拉致された人々をどう救い出せるのか? 実は、北朝鮮が拉致し た外国人を返した例が一件だけある。 一九七八年、レバノンの女性五人がべイルートから拉致され た。翌年、その内の二人が自力で脱出。拉致の事実がレバノン 政府の知るところとなった。レバノン政府は北朝鮮に抗議し、 残る三人の返還を求めた。政府の調査によって、五人を拉致し た犯人の一人はべイルートにある北朝鮮貿易代表部の副部長で あることもつきとめた。北朝鮮はしらを切り続けたが、レバノ ン政府は「三人を返さないならば、政府としてあらゆる手段を 講じて女性たちを取り戻す」と詰め寄り、結果、三人の女性は 無事解放されたのである。 この時、北朝鮮が拉致したレバノン女性を解放した理由は定 かではないが、北朝鮮と国交のある国はそう多くはない。北朝 鮮は一九八一年にレバノンと国交を開いている。 当時既に交渉に入っていたのだろう。レバノンとのこれ以上 の関係悪化は避けるべきだと判断したのだと思われる。[1] 現代の北朝鮮は、日本国憲法が「平和を愛する諸国民の公正と信 義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」と規定した「諸 国民」とは異なる存在だ。「平和も愛さず、公正も信頼も持たない テロリスト国家」から、いかに我々は「基本的人権」や「国民主 権」を守るのだろうか? ■7.国民を守るのは同胞国民■ レバノンに比べれば、日本は北朝鮮に対して、はるかに強力なカ ードを持っている。経済・食料支援である。しかし力はあっても、 それを使って断固国民を守ろうという気概に欠けているのが現状で ある。 ある外務省高官は「亡命者の証言以外に証拠がない」「彼ら(亡 命者)は何を言うか分からない」と発言している。(これは誤りで、 ある北朝鮮工作員が日本人を拉致した事を韓国の法廷で認め、その 人のパスポート、自動車免許証、保険証が証拠物件とされてい る。) また自民党の野中広務幹事長代理は、この件に関する産経新聞の 北朝鮮報道をさして、「あれは韓国の情報部から金を貰ってやって いるのだ」と知人の政治評論家に語ったそうだ。さらに「我々は過 去に朝鮮人を強制連行している事実を踏まえなければならない」と いう趣旨の発言をしている。前者は北朝鮮国営の「朝鮮中央通信」 の常套文句、後者は朝鮮総連(在日北朝鮮人の団体)幹部の発言と 同じである。野中氏は日本の政治家なのだろうか?[5] 阪神大震災の時の政府の無防備・無策ぶりに「国民の命をしっか りと守らない政府なら、納税を強制されるのは不当である」という 素朴な、しかし根源的な問いかけがなされた。今、拉致問題でも同 じ問いかけがなされなければならない。 阪神大震災の時と同様、国民を救うのは、同胞たる国民である。 「北朝鮮に拉致された日本人を救う会」が、各地に結成され、外務 大臣への請願署名も100万人を超えた。約560万円の寄付を集 めて、ニューヨークタイムズへの全面意見広告も、昨日(4月2 日)出された。日本政府の弱腰を叱咤し、金日成に圧力をかけるの は、このような国民がお互いを守ろうという意思である。 [参考] 1.「『南朝鮮革命』に利用される日本人」、鈴木由充、 祖國と青年、H9.12 2.「横田めぐみさん救出運動の中で」、小島晴則、祖國と青年、H9.12 3.「一日も早い救出を」、産経新聞、H10.03.27 4.「横田めぐみさん、有本恵子さんらを救出しよう!」、被拉致日 本人を救出する会、H9.09.30 5.「同胞の拉致を黙認する『贖罪意識』との決別を」、佐藤勝巳、 祖國と青年、H9.12 6. 現代コリア研究所ホームページ(ホームページ抹消) 救出活動の中心になっている研究所。救出活動に関するページも あり、ニューヨークタイムスへの意見広告の和訳も読める。
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