レバノンは拉致被害者奪還の成功例ではなかった
拉致被害者の家族は、26日夜、内閣府を訪れ、今回の日朝の政府間対話で、日本側の代表を務めた外務省の斎木審議官から説明を受けました。この中で、斎木審議官は、被害者全員の生存を前提に早期の帰国を求めたものの、北朝鮮側から新しい情報はなかったとしたうえで、「拉致問題と国交正常化などの協議を、来月末にも並行して行うことで合意したが、『拉致問題の解決なくして国交正常化なし』という方針に変わりない」と話したということです。このあと、家族は記者会見し、家族会事務局長の増元照明さんは、「今回は日本側が席を立つ場面もあるなど強い姿勢で臨んだということで、次回の協議で北朝鮮がどうでるのか見守ろうという気持になった。協議の成否は、交渉にあたる人の姿勢いかんなので、しっかり取り組んでほしい」と話しました。また、家族会副代表の飯塚繁雄さんは、「政府が強い態度を示し、北朝鮮から真剣に取り組む姿勢を引き出したことで、今後よい結果が出ることを期待したい」と話しました。さらに、横田めぐみさんの母親の早紀江さんは、「拉致問題の解決なくして国交正常化はないという方針に変わりないとわかり、ほっとしています。拉致問題は一番大事な時期に来ているので、しっかりやっていただきたい」と話しました。
家族会から信頼を得ている斎木審議官ですし、今回は強い姿勢をもって、かろうじて拉致問題を協議することを認めさせたので、増元さんも「見守ろう」と言ってくれています。しかし、もうこれ以上、日朝協議を北の時間稼ぎに使われてはたまらないです。
北朝鮮は,拉致問題の早期幕引きを狙いつつ,日朝国交正常化の早期実現,大規模経済支援の獲得を企図しているからこそ日本側が「生存しているはず」という前提の交渉に困り果て、偽遺骨まで持ち出してきたわけで、なんとしても小泉総理の任期中に国交正常化して2兆円ものカネをせしめたい北としては、偽遺骨も通じないとすれば、そろそろネタ切れなんですよね。
しかもポスト小泉と言われる人達がこれですから(以下ニュース)、金正日は、対北軟弱派に見える小泉さんに期待をかけるしかありません。対北強硬派を人事したのは小泉総理ですけど(笑)。公安調査庁も、焦っている北は、拉致問題で対応をせざるをえないと見ているようです。
日本と北朝鮮との政府間対話で、日本代表を務めた外務省の斎木アジア大洋州局審議官らは、26日午後帰国し、安倍官房長官や麻生外務大臣に、北朝鮮との間で年明け1月末にも拉致問題と国交正常化問題などの協議を並行して行うことで合意したと報告しました。これに対して、麻生外務大臣は、「『拉致問題が解決しなければ、過去の清算を含めた国交正常化はない』という政府の従来どおりの基本方針に従い、引き続き拉致問題の解決に向けて協議を続けてほしい」と指示しました。
田中均氏が意図したとおり「拉致問題解決のための平壌宣言」であったと家族会はじめ国民に理解できる官邸&外務省方針だと思います。認めたくない人は認めないでしょうけど。方針は方針として、結果を出すべく政府と外務省にはもっと胃の痛むような思いをしてもらわないと。国民が背中を押し続けるという意味でね。
〈 北朝鮮は今後も6者協議を利用して米国からの譲歩引き出しを企図。核兵器保有の既成事実化を図る懸念も〉
核問題をめぐる北朝鮮の対応の背景には,6者協議の枠組みが維持されている限り,イラク問題を抱える米国が軍事攻撃などの強硬策に出る可能性が低く,同時に,中国・ロシア・韓国から理解・同調を得て,経済援助を獲得することも可能であるなど,現状は有利との判断の下,あらゆる手だてを使って協議を引き延ばし,その間に核・ミサイル開発を進める狙いがあるものとみられる。
一方,米国は,大統領選挙(11月2日)でのブッシュ大統領再選を受け,今後,PSI(拡散に対する安全保障構想)の枠組みなどを活用して,ミサイル輸出や麻薬・覚せい剤取引などによる資金調達への締め付けを強めるとともに,「北朝鮮人権法」(10月18日,大統領署名・発効)に基づく様々な働き掛けを活発化させるものとみられる。
こうした中,北朝鮮は,引き続き6者協議の枠組みを巧妙に利用することを基本に,自らの平和姿勢アピールによって日米韓の協調関係を切り崩して米国の孤立化や動揺を図り,最大限の譲歩引き出しを目指していくものとみられる。また,核・ミサイル開発を続行しつつ核兵器保有を繰り返し示唆するなどして,その既成事実化を図ることが懸念される。
懸念が現実化しているので、六カ国協議もこれ以上の引き延ばしは許されません。
拉致された人々をどう救い出せるのか? 実は、北朝鮮が拉致し
た外国人を返した例が一件だけある。
一九七八年、レバノンの女性五人がべイルートから拉致され
た。翌年、その内の二人が自力で脱出。拉致の事実がレバノン
政府の知るところとなった。レバノン政府は北朝鮮に抗議し、
残る三人の返還を求めた。政府の調査によって、五人を拉致し
た犯人の一人はべイルートにある北朝鮮貿易代表部の副部長で
あることもつきとめた。北朝鮮はしらを切り続けたが、レバノ
ン政府は「三人を返さないならば、政府としてあらゆる手段を
講じて女性たちを取り戻す」と詰め寄り、結果、三人の女性は
無事解放されたのである。
この時、北朝鮮が拉致したレバノン女性を解放した理由は定
かではないが、北朝鮮と国交のある国はそう多くはない。北朝
鮮は一九八一年にレバノンと国交を開いている。
当時既に交渉に入っていたのだろう。レバノンとのこれ以上
の関係悪化は避けるべきだと判断したのだと思われる。[1]
現代の北朝鮮は、日本国憲法が「平和を愛する諸国民の公正と信
義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」と規定した「諸
国民」とは異なる存在だ。「平和も愛さず、公正も信頼も持たない
テロリスト国家」から、いかに我々は「基本的人権」や「国民主
権」を守るのだろうか?
レバノンの拉致事件は解決してないないよ。
北朝鮮・拉致問題:レバノン人の母「なぜこんなひどいことを」 早期行動訴え /新潟
◇娘の状況に早期行動訴え
「北朝鮮はなぜこんなひどいことを続けるのか」。16日、新潟市内で拉致被害者、曽我ひとみさん(46)の夫ジェンキンスさん(65)と面会したレバノン人のムントハ・シャハディ・ハイダールさん(69)。長女シハーム・シュライテフさんは北朝鮮に拉致され、今も同国に残されている。ハイダールさんは「拉致被害者すべての人が自由になれるよう祈っている」と訴えた。
ハイダールさんのもとには今でも年に1度くらい、シハームさんから電話がかかってくるという。だが、内容はいつも同じ。「ママ、会いたい。でも、すべてうまく行っているから大丈夫」。
しかし、ジェンキンスさんの語るシハームさんの状況は「あまりにもみじめで、死にたくなる」ものだった。シハームさんは97年に脱走米兵の夫と死別。以降は酒びたりとなり、厳寒の中、浴場で裸のまま倒れ、偶然シハームさん方を訪れたジェンキンスさんに助け出されたこともあったという。ハイダールさんは「娘は体調も悪く、どんどん老いていく。今、行動を起こさないと死んでしまう」と訴えた。
ハイダールさんがこの日「夫が死んだのになぜ娘は戻れないのか」とジェンキンスさんに尋ねると、「北朝鮮はシハームさんの息子3人を工作員にしたかったのだろう。だが、自分の本に3人の顔写真を掲載したので、工作員として使えなくなった。帰せない理由はないはず」と応じたという。
ハイダールさんはシハームさんが1歳の時に夫を亡くした。子どもはシハームさん1人。「一人娘と一緒に老後を過ごしたいが、レバノンでは拉致事件のことを知る人は少ない」と日本での協力を求めて来日した。すでにシハームさんと同時期に同じ病院で出産したとされる有本恵子さんの家族らと会い、「今度、シハームから電話が来たら、有本さんの消息を尋ねる」と約束したという。【前谷宏】12月17日朝刊
(毎日新聞) - 12月17日16時35分更新
レバノンの一般人の間では、拉致問題はあまり認識されていません。
以下の記事でも、すべて被害者を北が返した「成功例」として取り上げています。
レバノン拉致事件(02.10.28)
北朝鮮による日本人拉致受験が大きなニュースとなっていますが、今から20数年前に同じような北朝鮮によるレバノン人の拉致事件があったことは意外と知られていません。4人の女子大生が拉致されましたが、レバノン政府は直ちに北朝鮮に抗議し、4人を取り戻しました。拉致の事実を20数年も放置していた日本政府とは大違いです。この「レバノン拉致事件」を改めてご紹介し、日本人拉致事件の今後の展開の参考にしたいと思います。
1978年、レバノンの首都ベイルートにある秘書養成学院にアジア人の男1人が訪ねて来ました。「私は日本のヒタチという企業に勤めているが、うちの会社で秘書として働かないか」と4人の女子学生に接触しました。4人は応諾し、その男と飛行機に乗りました。ところが着いた先は北朝鮮の平壌。4人は初めて騙され、拉致されてきたことを知りました。4人は招待所で1年間、洗脳教育を受けましたが、レバノンの4人の家族が「娘が行方不明になった」と騒ぎ始めました。そこで北朝鮮は4人のうち2人をユーゴまで連れ出し、ホテルからレバノンの家族に電話をさせ「私たちは無事」と偽装工作を行いました。
しかし、2人は隙をみて、ホテルを脱出、レバノン大使館に駆け込み、レバノン政府も拉致事件を知ることとなりました。
レバノン政府は直ちに北朝鮮に抗議、事件発生翌年の1979年、4人を送還させ、取り戻しました。北朝鮮が抗議に応じた背景には、レバノン政府がベイルートにあるアラブゲリラの組織、PFLPに仲介を頼んだことも効果を発揮しました。PFLPは直ちにゲリラルートを通じて北朝鮮に話を持ち込み、早期決着となったのです。
以上、経緯を読めばわかりますが、抗議した段階で北は被害者を返しています。証拠が挙がっているので、言い逃れできなかったと思われます。北に拉致を認めさせる手間が省けたのがラッキーでした。制裁すれば北朝鮮が返すという成功例にはなっていないということです。つまり北が抗議に応じた理由は、国交正常化の準備が進んでいたことであって、しかも全員は取り戻せていない。要するに、それほど悪辣でしたたかな北朝鮮であるという実例ではないでしょうか。
制裁を否定するのではありません。制裁手段をもって強く交渉に臨むべきです。ただ「レバノンを見習って経済制裁すれば帰ってくる。日本政府は何も学習しないのか」という主張には、客観的に見て無理があるんですね。レバノンは過激派の巣みたいなところで、ワルはワルの過激さを知るで、証拠の挙がっている拉致ならなおさら“抗議”だけで取り戻せたのかな?というのは私の想像ですが。レバノンもまた「対話と圧力」であったわけです。
やはり来年こそは、日米同盟主導で、金正日体制転換まで視野に入れた動きをしてほしい。国際社会が極悪非道な北を放置すれば、北朝鮮の犯罪拡大に手を貸すという最悪の結果しかありません。それまでに日朝交渉でなんとか安全に拉致被害者を取り戻してほしい。それだけです。
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» 国民大集会(12.22)安明進さん [Blue jewel]
◆司会:櫻井よし子さん
日本人、レバノン人、タイの人、韓国の人、これほど多くの悲しみと苦しみを与えている憎むべき北朝鮮の金正日政権について非常によく知っている元工作員の安明進さんにお話を伺いたいと思います。
◆安明進さん(日本語で、一生懸命お話になりました)
みなさまこんばんは。
今日は本当に大勢の方々が非常に貴重な話をしますから、私に与えられた時間を少しでも節約するために日本語で話します。まだまだ不十分な日本語ですが、(拍手)まだほんとに不十... [続きを読む]
受信: 2005/12/28 01:31
» あらためて、「日朝平壌宣言」を見直す [Dogma_and_prejudice]
・「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」に拉致が含まれているか
日朝平壌宣言に、拉致の文字がはいっていないという批判に対し、拉致は、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」という文言に含まれるという反論があります。
「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」という表現が「拉致」を含むか含まないかというのは、言葉の定義の問題で、何の定義もされなければ、「含む」と思う人が見れば「含む」けれど「含まない」と�... [続きを読む]
受信: 2005/12/28 01:38
» 日朝国交正常化の行方は・・・? [世界日報サポートセンター]
日朝関係正常化は日本側の出方次第-北朝鮮外交筋
過去問題で日本側に真摯な謝罪を要求
【ウィーン3日小川敏】当地の北朝鮮外交筋は三日、本紙の電話取材に応じ、二〇〇六年の対日関係の見通しについて、「日本が戦争中に犯したわが民族への蛮行を真摯に謝罪、賠償金を... [続きを読む]
受信: 2006/01/04 16:07
コメント
みずきさん、ご無沙汰しています。
この件に関して、昨日の産経新聞でもフジテレビでも懸念を強調していました。
産経新聞東京版の2面の見出しは「『拉致』置き去り懸念」
実際の記事としては「拉致事件の早期解決を目指す日本と『過去の清算』を含む国交正常化交渉に重心を置く北朝鮮との思惑が絡み合うだけに、どんな展開を見せるか予断を許さない」という書き方で、見出しとは少し違う印象を持ちましたが、フジでは堂々と、拉致問題の解決の優先順位が低いため「家族会からの反発が予想される」とナレーションが流れていました。
新聞をじっくり読む人も少なくはありません。
しかし朝の忙しい時間、テレビからの音声を聞き流している人は、もっと多いはず。
家族会が何も表明する前から、どうして反発だの懸念だのリードしようとするのでしょう。
不思議です。
投稿: るびい | 2005/12/27 08:22
追伸。
むかしむかし、朝日新聞は拉致問題解決について「じっくりと、粘り強い交渉が欠かせない」と言うとき、必ず「レバノンは、こういうやり方で被害者の奪還に成功した例である」と、お題目のように言い続けていましたね。
まあ、忘れているでしょうか、今は。
投稿: るびい | 2005/12/27 08:25
こんにちは。ずっと読んでましたが、バランスの取れた論調だと思いますよ。応援している人も私以外に沢山いると思います。ちょっと休んで、また元気を出して、今までの調子で楽しませてください。
投稿: kumakichi | 2005/12/28 17:12
あけましておめでとうございます。
昨年同様、今年も宜しくお願い致します。
今年こそは拉致被害者の方々が日本の土を踏むことができますように。
投稿: 鮎川龍人 | 2006/01/01 09:04
るびいさん、kumakichiさん、鮎川さん
新年おめでとうございま~す。
今年もよろしくお願いします。
うかうかしていたら年が明けてしまいました。
kumakichiさん、ありがたいお言葉感謝。ちょっと休んだら、めんどくさくなってしまった(爆)
でも、ブログ更新は楽しみですので、がんばります。
レバノンはお題目ですね、ほんと。日本の過激派もいっぱいいますしね、一緒くたに語ることはできません。
>今年こそは拉致被害者の方々が日本の土を踏むことができますように。
祈ります。今年こそ!
投稿: みずき | 2006/01/02 04:27