研修医、大阪と東京で大幅減へ
医師臨床研修制度の見直しを検討している厚生労働省は3月2日、東京や大阪など大都市部の研修医を大幅に抑制する試算(今年度の研修医採用実績ベース)を公表した。それによると、今年度の採用実績が都道府県別の「上限」を超えたのは、東京、神奈川、京都、大阪、福岡の5都府県。これら大都市部の研修医定員を大幅減とし、地方の医師不足の解消につなげたい考えだ。「上限」を最も上回ったのは大阪の61人で、これに東京(51人)、神奈川(46人)、福岡(43人)、京都(27人)と続いた。逆に最も下回ったのは埼玉の215人で、次いで石川(114人)、新潟(111人)、北海道(97人)、島根(93人)などの順だった。同日開かれた医道審議会医師分科会医師臨床研修部会(部会長=齋藤英彦・名古屋セントラル病院長)で明らかになった。 「研修医の募集定員」について厚労省が示した案は次の通り(同省が配布した資料より抜粋)。
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臨床研修期間、2年制を維持へ この日の部会では、病院の研修医募集定員や都道府県別の「上限」などについて議論。厚労省案では、研修プログラムや臨床研修病院の指定基準などについて、前回の案に新たな文言や計算式などが追加された。
2年目に必修となっている「地域医療研修」については、患者の生活や居住地域の特性に則した医療(在宅医療を含む)の理解、実践の趣旨の下、へき地・離島診療所、中小病院、診療所などで行うと明記。また、研修を行う施設に関しては、「関係自治体や地域医療対策協議会の意向を踏まえるなど、地域の実情に応じて選定されるよう配慮する」とした。
医師不足の診療科への対応では、「研修医の募集定員が一定数以上(例えば20人以上)の臨床研修病院は、将来小児科医および産科医になることを希望する研修医を対象とした研修プログラム(募集定員2人以上)を必ず設ける」と定めている。
臨床研修病院の指定基準では、「医療機関の連携による臨床研修病院群の形成を推進する」ことを基本的な考え方として、臨床研修病院(協力型臨床研修病院を除く)が満たすべき基準を示した。具体的には、▽救急医療の提供▽年間入院患者数が3000人以上▽研修医5人に対して指導医を1人以上配置▽臨床病理検討会(CPC)を適切に開催▽協力型臨床研修病院その他の医療機関と連動して研修を行う―の5項目。
この指定基準により、指定取り消しの対象となる場合などについては、一定期間の経過措置を設け、「地域の実情や研修医の受け入れ実績などを考慮したきめ細かな対応に配慮する」とした。また、臨床研修病院の新規指定の取り扱いについては、「協力型臨床研修病院として一定の実績があることを前提に、指定基準を満たす場合は新規指定を行う」としている。
研修医の募集定員では、「病院の募集定員」と「各都道府県の募集定員の上限」を設定するための計算式を示した。このうち、「病院の募集定員」については、過去数年間(例えば過去3年間)の研修医の受け入れ実績の最大の数値を上限とするが、一定の定義に基づいて、「当該病院から他の病院に派遣されているとみなされる常勤医師がある場合には、その数を勘案して一定の限度内で定める数を加算する」とした。
委員からは「派遣」の定義についての質問が出たが、厚労省の担当者は前回の会合と同様、「大学医局が行っている無料の職業紹介のようなもの」と回答するにとどめた。
最終的に厚労省案は大筋で了承された。同省は3月中旬にも国民に意見を求め、その結果を次回の部会で報告した後、2010年度の制度導入に向けた省令改正などの手続きに入る方針だ。
■研修医の募集定員について
<基本的な考え方>
○研修希望者に見合った募集定員の総枠を設定するとともに、研修医の地域的な適正配置を誘導するため、都道府県別の募集定員の上限を設定する。
○各病院の募集定員を、過去の研修医受入実績等を踏まえ適正規模に見直すとともに、医師派遣実績等を勘案した上で、都道府県の募集定員の上限と必要な調整を行って設定する。
(1)病院における研修医の募集定員は、以下の数値を超えないこととする。
@A
A:当該病院の過去数年間(例えば過去3年間)の研修医の受入実績の最大の数値。ただし、一定の定義に基づき、当該病院から他の病院に派遣されているとみなされる常勤医師がある場合には、その数を勘案して一定の限度内で定める数を加算する。
A当該病院が所在する都道府県内にある臨床研修病院および大学病院の募集定員の合計が、(2)で定める当該都道府県の募集定員の上限を超える場合は、以下の計算式により算定した数値A×B/C
B:(2)で定める当該都道府県の募集定員の上限
C:当該都道府県内における臨床研修病院および大学病院が希望する募集定員の合計
B経過措置
BがCより小さい場合は一定の経過措置を設け、地域の実情や研修医の受入実績等を考慮したきめ細かな対応に配慮する。
(2)各都道府県における募集定員の上限とは、以下の計算式により算定した数値をいう。
* 研修医の数については1学年分
@D+E+F
D:D1とD2のうちの多い方の数値
D1:全国の研修医の前年度総数×当該都道府県の人口/全国の総人口
D2:全国の研修医の前年度総数×当該都道府県内の大学医学部の入学定員の合計/全国の大学医学部の入学定員の合計
E:D×α(100平方q当たりの医師数が60.7未満の道府県に限る)
*60.7は東京都、大阪府を除く全国の100平方q当たりの平均医師数)
F:D×離島人口×β/当該都道府県の人口
*離島人口とは、離島振興法および沖縄振興特別措置法における指定離島の人口
*αβとは、調整係数(例えばα=10%〜20%、β=5)
A都道府県の募集定員の上限が、当該都道府県内における病院が希望する募集定員の合計よりも大幅に下回る場合は一定の経過措置を設ける(例えば削減率は当面10%を上限とする)。
(3)各病院の募集定員の増員の取り扱いについて
○当該病院の所在する都道府県内にある病院が希望する募集定員の合計が当該都道府県の上限を超えない場合には、当該病院の前年度の研修医の採用実績や地域の実情等一定の条件の下に、増員を認めることにする。
(4)新規指定における募集定員の取り扱いについて
○臨床研修病院を新規に指定する場合は、募集定員を2名とする。
更新:2009/03/02 22:52 キャリアブレイン
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