2009年2月26日
障害者郵便DM悪用 女性社長ら逮捕
大阪市西区の広告代理店「新生企業」(現・伸正)が障害者団体向け割引郵便制度を使い、広告用ダイレクトメール(DM)を不正に安く郵送した上、約9000万円を脱税していた疑いが強まり、大阪地検特捜部は26日、郵便法と法人税法違反の疑いで、同社社長の宇田敏代(53)と元取締役の阿部徹(55)の両容疑者を逮捕、関係先の家宅捜索を始めた。
関係者によると、同社と障害者団体の仲介役として大阪府議(60)と吹田市議(60)の関与が判明。両議員は「新生企業が制度を悪用しているとは知らなかった」と話し、仲介料などの授受もないという。特捜部は今後、数年間で100億円以上とされる正規料金との差額に着目、両容疑者について詐欺罪の立件を視野に捜査する。
捜査関係者によると、宇田容疑者らは平成18~20年、障害者団体の定期刊行物に適用される「低料第三種郵便物」の割引制度を悪用。大阪府などの障害者団体に刊行物製作を持ち掛けるとともに、健康食品などのDM広告を顧客に送る企業に「発送料が格安」と勧誘し、広告商品に沿った内容に仕上げた刊行物とDM広告を同封、割引制度の1通8円(本来は1通120円)で大量発送していた。
割引制度は刊行物の8割以上が有料購読者であることが条件だが、宇田容疑者らは自ら刊行物を製作、広告主に買い取らせ、購読率100%を装っていたという。障害者団体も新生企業から「寄付」の形で現金を受け取っていた。
一方、吹田市議は18年秋、知人を通じて新生企業から障害者団体の紹介を頼まれ、市庁舎内で宇田容疑者と会った。「団体にも金が入る」と言われ、市内の2団体を紹介した。市議は「資金難の団体が助かる話と思って善意で紹介した。金は一切もらっていない」と話している。
府議も同時期、同じ知人を介して障害者団体を運営していた家族に宇田容疑者らを引き合わせたという。
宇田容疑者を両議員に紹介した知人は「宇田容疑者に頼まれ、2年前から障害者団体の代理人として郵便物を郵便局に持ち込んだ。合法と思っていた」と話している。
認可後「ほぼノーチェック」
割引郵便制度を適用した障害者団体の定期刊行物をめぐる不正はなぜ、まかり通ったのか。背景には、日本郵政グループの郵便事業会社の甘いチェック態勢と割引制度の規定のあいまいさがある。
障害者団体の定期刊行物が低料第三種郵便物の承認を得るには障害者団体であることを示す公共機関の証明書などが必要。だが、いったん認可を受ければ、郵便物の内容は「ほぼノーチェックに近かった」(郵便事業会社の窓口担当者)。
発送の際、窓口でサンプルの提出を受けて検査するが、検査対象は刊行物だけ。同社の広報担当者は「同封された広告用ダイレクトメールを抜かれて刊行物だけが提出された場合、チェックのしようがない」と嘆く。同社が行う年1回の定期検査を免れるため、対象となる定期刊行物ではなく、「臨時増刊号」と称して大量発行していたという。
また、承認条件の解釈のあいまいさも指摘されている。刊行物1回の発行部数の8割以上が有料購読という規定は、本来は「障害者団体の支援者らによる定期購読分が8割以上」という趣旨だ。が、購読対象者が厳密に規定されておらず、新生企業は「広告主が一括購入しても有料購読」と独自に拡大解釈していた。
郵便事業会社の窓口担当者は「承認条件などの規定を現場のほとんどの担当者が知らない」と明かす。近年、企業の低料第三種郵便物の取り扱い量が急増していたが、現場では「単純に購読者が増えているだけ」と見逃されたという。
広報担当者は「障害者福祉を目的とする低料第三種郵便の悪用は想定外。約款の改定も含めて検討したい」と話している。
【写真説明】大阪地検に任意同行される「新生企業」(伸正に改称)の宇田敏代容疑者=大阪市北区(甘利慈撮影)
(2009年2月26日 14:26)
タグ:脱税, 障害者団体向け割引郵便制度
Category:社会
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