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【産科医解体新書】(27)課題も多い医療補償制度 (1/2ページ)
出産事故で重度の脳性まひとなった新生児に対する「産科医療補償制度」が1月から始まりました。病院側の過失の有無にかかわらず、保険金がおりるシステムです。これにより迅速に補償される患者さんが出てくることは、ひとまず良いことでしょう。
ただし、皆さんも理解しておかなければいけないことがあります。まず保険の掛け金3万円は患者さんが分娩費として払うことになります。最終的には健康保険などから支払われる出産一時金の値上げ分で相殺されますが、払うのはあくまでも患者さん自身で、医療者側ではありません。
そして、障害の見つかった赤ちゃんすべてが補償されるわけではありません。補償されるのは、身体障害者級数が1級または2級相当と診断された赤ちゃん。しかも、「出生体重が2000グラム以上で妊娠33週以上」が条件になっています。ただ、28週以上の場合は、個別審査で補償の対象になることもあります。無過失ではあるけれども無制限ではないわけです。みなさんから集める保険金には限りがありますから、やむを得ないともいえますが。
また、染色体異常などの先天性要因や、生まれた後で感染症などで脳性まひになった場合は補償対象となりません。制度の目的の一つが発症の原因分析のため、原因が分かっているものははじかれているのです。
さらに、脳性まひの判断基準ですが、一般の方が考える重症感との間には乖離(かいり)があるかもしれません。例えば身体障害者級数でいえば3級でも、一般の人には重症と映る場合もあり、なぜ3級は補償されないか、といった意見も出てくるでしょう。