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テレビ局の事情もある。ドラマ制作には、俳優をそろえ、ロケをしたり、セットを作ったりと多大な費用がかかる。しかし、局のアナウンサーを使った情報番組なら「ドラマの半分の制作費ですむものもある」(プロダクション関係者)という。景気低迷の影響は、華やかに見えるテレビ業界にも出ている。
シリーズ最後を飾るのは、2月から放映の「大好き!五つ子」。主役の森尾由美さん(42)は「『大好き』は今回で11作目。これまでは夏休みにやっていたので、親子そろって楽しんでいただいたようです。最初のころは、子役のセリフまで私たちが覚えていたんですけど、そのうちこちらのセリフを覚えてくれるようになって。ドラマの中で家族が成長してきただけに、番組の終了はとっても寂しいです」と話す。
一方、ライバル局はどうか。フジテレビ系で午後1時半から流れる30分の昼ドラは、ドロドロの愛憎劇が多く、こちらもファンが根強い。今月から始まった東海テレビ制作の「非婚同盟」を見ると--。
父親と宝塚歌劇を見に行く約束がかなわなかった少女に、家政婦がきっぱり。「世田谷の方に二号がいるんですよ」。続いて、兄もきっぱり。「僕たちの腹違いの弟がいるんだよ。世の中はきれいなことばかりじゃないんだよ」。この後、妻と愛人の同居が始まる展開だとか。ウワサにたがわぬドロドロだ。
脚本は、話題になった「真珠夫人」や「牡丹と薔薇(ばら)」も手がけた、中島丈博さん(73)。「夜のドラマに比べ、欲望むき出しでも、思想的な表現でもわりと自由に書かせてくれる。人間の美しさと醜さを、セリフを通して生々しく伝えることができる。それが昼ドラの魅力になっているのでは」。愛の劇場の終了については「ぼくとは違うホームドラマでしたから、見る人は両方楽しみにしていたのでは。競争相手がいなくなるのは残念だね」と話す。
テレビ文化を彩った一つの昼ドラ。消えてしまうのは、主婦ならずとも惜しい気がする。
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タイトル 放送開始時期 主演
女の絶唱 1969年 2月 三ツ矢歌子
人生の並木路 73年 8月 松本留美
赤い殺意 75年 5月 市原悦子
ここに幸あり 75年 9月 松本留美
名もなく貧しく美しく 76年 3月 島かおり
私は忘れたい 77年 1月 大空真弓
岸壁の母 77年11月 市原悦子
別れて生きる時も 78年 1月 松原智恵子
わが子よ 81年 7月 小林千登勢
黒革の手帖 84年 1月 大谷直子
その時、妻は 84年 9月 中田喜子
ああ嫁さん 88年 1月 池内淳子
天までとどけ 91年 3月 岡江久美子
家族の物語 93年 1月 赤木春恵
ぽっかぽか 94年 6月 七瀬なつみ
39歳の秋 98年 8月 片平なぎさ
大好き!五つ子 99年 8月 森尾由美
温泉へ行こう 99年 9月 加藤貴子
新・天までとどけ 99年12月 松田美由紀
ママまっしぐら! 2000年 6月 芳本美代子
コスメの魔法 04年 1月 萬田久子
吾輩は主婦である 06年 5月 斉藤由貴
砂時計 07年 3月 佐藤めぐみ
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毎日新聞 2009年1月8日 東京夕刊