公共事業の費用負担に地方が反旗を翻している。整備新幹線の建設費用の増額負担に新潟県などが反対し、大阪府は府の予算案から国が行う直轄事業の負担金を減額した。
地方財政が厳しさを増す中、国の負担押しつけに地方が異を唱えることにはもっともな面もある。国策の基幹にかかわるプロジェクトは国が責任を持ち、他は極力、地方に事業・財源ともに委ねる仕分けを徹底すべきだ。最終的には負担金の制度廃止に向け、議論を加速すべきである。
国の直轄事業は国が行う道路、ダムなどの公共事業だ。地方も便益にあずかるとの理由で建設費の3分の1、維持管理費の45%を通例、法律に従い地方が負担する。09年度の国の当初予算案の公共事業費約7兆円のうち直轄事業は約2兆4000億円を占め、地方負担は約1兆円にのぼる。
今回、議論に火をつけたのは大阪府の橋下徹知事だ。関西国際空港の連絡橋の国による買い取り費の分担を「関空の将来ビジョンが見えない」といったん拒み、国土交通省と渡り合った。「(これでは)地方は国の奴隷」と負担金の現状を批判、国の行革努力が不十分として、国直轄事業の負担金を府予算から事業ごとに原則10~20%削った。
直轄事業に似た仕組みである整備新幹線をめぐっては資材価格の高騰を理由に国が工事費増加分の一部負担を地方に要求。新潟、福岡、佐賀、熊本4県がこれに反対している。
国の事業で請求書だけを地方に回す仕組みの底流には上下、主従関係的発想がある。自治体が行う補助事業ですら国は補助金を通じ、その内容に過剰な「縛り」をかける。整備新幹線の場合、いったん事業を始めれば地方も追加負担を拒みにくい、との安易さが国にありはしまいか。国は増額の根拠や負担軽減策について、地方と協議を尽くしてほしい。
負担金の議論を通じて浮かぶのは、国と地方の役割分担のあいまいさだ。国策の要素が強い事業については整備、維持・管理併せて国の全額負担が筋だろう。特に国の管理物の維持・管理費まで地方が約半額を負担し続けることは疑問だ。
一方で、公共事業を幅広く国の全額負担にすると、地方の陳情合戦が激化し国の支配を強化しかねない。公共事業はできるだけ地方に委ね、必要な権限や財源を移譲する流れを定着させなければならない。国の直轄事業の総量を圧縮することが必要だ。
政府は地方分権改革として国道の整備や管理の移管をめぐり地方と調整を続けている。負担金のあり方についても、国と地方の協議の場が設けられる見通しだ。地方の反乱を国との負担の押しつけ合いに終わらせてしまってはもったいない。分権論議に発展させる好機である。
毎日新聞 2009年3月3日 東京朝刊