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不況に学び、誇れること

2009年3月3日

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 「一呼吸消費」と名づけられた消費スタイルがある。欲しいものがあっても、すぐには買わない。1週間、1カ月の期間を待って、それでも欲しければ買う。「待ち得消費」は、欲しい商品を、バーゲンやワゴン販売になるまで待って、安くなってから買うという消費スタイルだ。スーパーの閉店近くまで待って、半額シールが張られてから買う人もいる。民間の研究所が生活者に、「あなたやあなたの知人が最近している買い物のスタイル」を尋ね、わかりやすいように名前をつけてもらった。不況のなかで、生活者は、生活のレベルを下げずに自分の生活を守る様々な挑戦を続けている。

 これは、日本経済は回復したと言われていながら、まだ実感のなかった05年1月に「経済気象台」に執筆した原稿の要旨である。そして、そのほぼ4年後、日本は100年に一度の世界経済金融危機に巻き込まれ、大型不況に直面している。

 オバマ大統領は、バブル崩壊から不況を経験した日本に学びたい、と景気対策に関する演説のなかで述べている。そして、速やかに大型景気対策に着手した。早急に銀行の不良債権処理をせず、不況を長引かせた日本の行政を反面教師にしたともうかがえる。

 今、日本の企業は赤字予想を前に速やかに生産計画を縮小し、人件費を削減し、在庫の拡大を防ぎ、自らを守ろうとしている。まさに、不況の経験を生かした形だ。

 しかし、その結果、再び、大量の失業者を生み、社会不安を招いている。不況から学んだと日本が誇れるのは、痛みの代償として獲得し、日本の生活者に定着したと考えられる新しい消費スタイルだけなのか。(深呼吸)

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