「核のない世界」実現を目指すと公約する米オバマ大統領の登場で、核軍縮交渉の停滞打破へ機運が高まりつつある。六日にジュネーブで開かれる米ロ外相会談では両国の核削減条約づくりが協議される見通しで、世界的な核軍縮進展へ弾みとなることが期待される。
外相会談では、今年末に失効する第一次戦略兵器削減条約(START1)の後継となる条約が議題になる。START1は核兵器の査察・検証措置などを定めており、これに代わる新たな検証体制と核の削減規模が焦点になる。両国外相は突っ込んだ協議で新しい枠組みへ踏み出してもらいたい。
世界的核軍縮の鍵を握るのは核拡散防止条約(NPT)だ。条約は米ロ英仏中の五カ国を核保有国とし、他国の核開発を禁じ、保有国に核軍縮の努力を義務付けている。二〇〇〇年、NPT再検討会議は保有国の核兵器全廃への明確な約束、包括的核実験禁止条約(CTBT)早期発効、兵器用核分裂物質生産禁止条約交渉の五年以内の妥結―など十三項目の核軍縮措置を記した最終文書を採択した。
だが、具体化が期待された〇五年の再検討会議は決裂、核軍縮の機運はしぼんでしまった。保有国の核削減より非保有国やテロ組織への拡散防止を重視したブッシュ政権下の米国と非保有国が対立したためだ。
核に関する不公平感は置き去りにされ、イランや北朝鮮の核開発問題が深刻化、パキスタンのカーン博士による「核の闇市場」問題も明らかになった。
核について歴代政権と一線を画すオバマ政権は、核政策の見直しに着手している。具体的には、〇〇年にまとまった十三項目の核軍縮措置を現状に合うよう手直しした新しい指針を一〇年の再検討会議で採択し、NPT体制のてこ入れを図る構想と伝えられる。
核廃絶に向けて朗報ではあるが、当の米国の取り組みが問題だ。CTBTの扱いが試金石になろう。CTBTの早期発効には米国の批准が欠かせない。米上院は一九九九年、共和党の反対で批准を否決した。その後、反対論の根拠だった核実験監視システムの未整備は改善され、議会も民主党主導となった。大統領が指導力を発揮し、早期に批准できるかどうかだ。
二月に開かれた国際有識者会議「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」で、広島の被爆者が「新しい風が吹き始めた」と希望を託した米新政権の積極姿勢に期待したい。
文部科学省が小中高校生の携帯電話の利用について、初の実態調査を行った。携帯を持っている率は小学六年で24・7%、中学二年で45・9%、高校二年では95・9%に達した。
携帯やネットを利用した犯罪や「ネットいじめ」が年々増えている。調査では、中二と高二で65%程度が他人の悪口などを書き込むチェーンメールなどのトラブルを経験していた。
掲示板などに自分の悪口を書かれた経験が高二で9・4%あった。中高生の20%以上は自らチェーンメールを送り、約5%は悪口を書き込んでいた。
今年一月、文科省が公立小中学校への携帯持ち込み原則禁止を通知した。既に大部分の学校が原則禁止にしている実情に基づいたものだ。岡山県内では昨年十二月時点で、小中高の持ち込み禁止比率が全国平均を7―3ポイント下回っていた。
しかし、今回の調査では実際に使う場面は小中高とも「部屋などで一人で」が最多だった。学校への持ち込み禁止が、いじめ防止などにどの程度効果があるのか疑問が残る。
親と子の「ずれ」も明らかになった。犯罪に結びつく事例が出ている自己紹介サイト「プロフ」に自分の情報を公開したことがある高二は44%に上った。だが、高二の保護者で「公開したことがあると思う」と答えた人は17%だった。
子どもたちの間に爆発的に広まった携帯の負の側面が顕在化してきた。情報教育やアクセス制限の強化がいわれる中で行われた、初の本格的全国調査である。さらに調査を重ね、大人が実態をより深く認識しつつ対応策を探り、実行していく姿勢が肝要ではないか。
親もまず、子どもとネット社会のかかわり具合を正しく知ることから始めよう。
(2009年3月2日掲載)