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報道内容は、下記。
→ 読売のサイト
一部抜粋すると、次の通り。
グーグルに対し、全米作家組合と全米出版社協会が、「著作権への重大な侵害」などとして訴えた。両者は昨年10月に和解で合意、今夏にも出される連邦裁判所の認可を待って発効する。──
合意の対象は、今年1月5日以前に出版された書籍で、同社は……をそれぞれ支払う。
見返りとして同社は、絶版などで米国内で流通していないと判断した書籍のデジタル化を継続し、書籍データベースアクセス権の販売や、広告掲載などの権利を取得することが定められた。
また、対象書籍に関連して同社が今後得る総収入の 63%を著作者らに分配することも決まった。
和解の効力は米国での著作権を有する人すべてが対象となる。著作権に関する国際条約「ベルヌ条約」の規定で、加盟国で出版された書籍は、米国内でも著作権が発生するため、影響は世界中に及ぶ。
本文閲覧を含む新サービスは米国内の利用者に限られる。
和解に拘束されることを望まない著作権者に対しては、和解からの「除外」を認め、今年5月5日を除外通告期限としている。
問題点はいろいろとあるが、特に重要な点は次の二点。
(1) 総収入の 63%
総収入の 63%というと、かなり高額になる……と勘違いしている人がいるが、実は、微小である。というのは、ただの広告収入にすぎないからだ。
書籍を一冊売れば、千円の1割で百円が入る。しかし、広告収入だと、一人に見てもらったときの広告収入は1円程度(?)であるから、その 63%だとしても、微小な額である。通常、総額でも1万円ももらえないだろう。
村上春樹の本を例に取ると、販売すれば莫大な収入になるが、(もし)かわりに Google からもらうことにしたら、もらえるお金はスズメの涙だろう。
(2) つまはじき
全米作家組合と全米出版社協会が Google と取引した。一方、当事者である外国の著作権者は、つまはじき。
村上春樹の例で言うと、村上春樹の著作物をどうするかを、彼に関係のある日本の作家組合でなく、米国の作家組合が、条件を勝手に決めてしまうわけだ。
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以上のことの馬鹿らしさをはっきり示すには、次のことを考えればいい。
「日本でも同じことを米国に対してやり返す。日本で流通していない米国製の書籍を、勝手に『日本では絶版だ』と見なして、日本人が勝手に利用のし放題。そして、そのためには、はした金の広告費だけを払う」
これは、書籍にも当てはまるが、映画にも当てはまるだろう。
たとえば、米国製のハリウッド映画で、DVD化されていないものを、勝手に利用する。そして、料金を払わないで、広告収入の一部(63%だけ)を払う。米国のテレビドラマも同様。ニコニコ動画などでは、米国のテレビ番組を勝手に利用し放題になる。
しかも、このことを、米国の著作権者とは相談しないで、日本の著作権者と話しあうだけで決める。日本の著作権者は、米国の著作権なんかどうでもいいから、タダでも構わないで、あっさりOKを出す。
また、そのことに対して異議を立てることのできる期間は、たったの3カ月だけ。それ以降で米国人が異議を出しても、日本では彼らの異議の権利を認めてやらない。すべて無効とする。
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こういうことは、はっきり言って、著作権泥棒だ。そして、Google は今回、それを「米国の立場から、日本の著作権を侵食する」という形で実行しようとした。
著作権における植民地主義。── 米国の側は、植民地の権利を侵害のし放題。しかし、植民地の側(日本)は、米国の権利を侵害することは許されない。片務条約みたいなもの。
[ 付記 ]
このことを逆手にとって、次のことをするよう、私は提案したい。
「 WindowsXP が絶版になったら、日本では WindowsXP を無償で利用し放題とする。公開するサイトでは広告収入を得て、その広告収入の 63%だけを、マイクロソフトに支払う」
すばらしいアイデア!
[ 補説 ]
この件について、次のように異を立てる人もいるだろう。
「どうせ絶版の商品なのだから、広告収入が増えるだけ、マシじゃないか」
しかし、そんなことは、成立しない。そのことは、上の WindowsXP の例でもわかる。( WindowsXP が無償化されれば、現在のバージョンが売れなくなるから、マイクロソフトは損する。)
また、雑誌や新聞もそうだ。絶版になったあとで無償で得られるのであれば、雑誌や新聞の購読者は激減する。そのことで、雑誌や新聞は次々と廃刊になる。
もちろん、書籍も同様だ。今の書籍は「もうすぐ絶版になるかもしれないな」と思うから、「ちょっと高いけど今のうちに買っておこう」と思う。それで、必要度が少し足りなくても、学術書などを買うものだ。(その分、学術書は、多く売れる。採算に乗って、出版されるようになる。)
以上のことは、本を買う人ならば、すぐにわかることだ。社会常識。
ただし、現代では、本を買うこともないようなオタクが多い。ネットでゴミみたいな情報を得るだけで、有償で高品質な情報を購入することがない、というオタクが。……そのせいで、以上のような常識もわからない。だから、「広告収入がもらえるだけマシだろう」という発想を取る。
そういう非常識なオタクがやたらと増えたのに付け込んで、Google はごっそりボロ儲けしようとする。他人の著作権を利用して、自分ががっぽり儲けようとする。自分では何一つ情報を生み出さず、単に情報を整理するだけで、(他人のフンドシから得られた富のうち)37%もの富を世界中から根こそぎ奪おうとする。
「♪ オレのものはオレのもの 人のものはオレのもの だから地球はオレのもの 何でもかんでもいただき」
( → ひょっこりひょうたん島 )
こうして Google という大泥棒がのさばるようになる。
あらためて考え直そう。
ネットでは、素人の情報を無償公開できるようになったことで、存在しなかった情報が存在するようになった。それはすばらしいことだ。
しかし、だからといって、有償公開されていた情報を無償化することで、有償公開する(ハイコストな)情報を発生させなくすることは、すばらしいことではない。
前者は(低品質な)情報を増やすが、後者は(高品質な)情報を減らす。ネットの技術には、このような二面性がある。そのせいで、現在、アメリカでは雑誌や新聞が次々と廃刊されている。……このような光と陰は、やむを得ない面があるとはいえ、陰の部分をなるべく少なくする努力が必要だろう。なのに、Google は、その逆のことをやろうとしている。光を増やすだけでなく、陰をも増やそうとしている。
Google は、現代の天使であると同時に、現代の悪魔でもある。……その両面性をはっきりと認識することが必要だ。
[ 余談 ]
「 Google は現代の天使だ!」
「 Google はすばらしい!」
「自分を Google 化して儲けよう!」
「そこのけそこのけ、Google 様が通る」
「ははっ」(ひれ伏す)
そうやって泥棒を崇拝する連中が多い。だから、ネット詐欺みたいなことをやる犯罪者が増えるんですよ。Google と同じ穴のムジナ。泥棒ばっかり。
【 関連項目 】
→ グーグルの書籍検索