バークシャーがデリバティブで大幅損失、バフェット氏は投資姿勢を擁護
[ニューヨーク 28日 ロイター] 米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ(BRKa.N: 株価, 企業情報, レポート)の2008年通年利益は、デリバティブ関連の損失が響き6年ぶり水準に落ち込んだ。
バフェット氏は、投資家への書簡で「デリバティブは危険」との見解を示しつつも、同社のデリバティブ関連取引を擁護する姿勢を示した。
バフェット氏は、投資家への年次書簡の5分の1を、株式市場や企業クレジット物などの長期的見通しをデリバティブにどう活用したかの説明に割いた。
モーニングスターのシニア株式アナリスト、ビル・バーグマン氏は「資本市場で市場参加者が評価するリスクに関する想定ポートフォリオの一部で、今後のバークシャーにとり一段のビジネスにつながるための関係構築に役立つ」と評価した。
同社は規制当局の要請で251のデリバティブ契約についての詳細情報を開示。それによると、全デリバティブ投資について見通しが100%外れた場合、672億9000万ドルの支払いが発生する可能性があるという。
バフェット氏は、金融のレバレッジを大きく活用し、投資家が理解することがほぼ不可能な状態になり、ベアー・スターンズの破たんなどに影響したデリバティブと、同社のデリバティブは異なることを強調。バークシャーのデリバティブは、カウンターパーティーからアップフロントで受け取る数十億ドルのプレミアムがあることなどから「金融の大量破壊兵器」の性質を持つ他のデリバティブとは異なっているとの認識を示している。
バークシャーは08年に投資・デリバティブ純損失46億5000万ドルを計上、利益は62%減の49億9000万ドルになった。
<4種類のデリバティブ>
バークシャーは年次報告書で、同社のデリバティブを主に4種類に分類している。
1つめは、株価指数のプット・オプション。S&P総合500種、FT100種総合株価指数、ユーロSTOXX50種指数、日経平均が対象、期間は2019年9月─2028年1月。株式市場が大幅安となったことから、これらの計算上の負債は100億2000万ドル。理論上は、全指数がゼロになった場合には負債は371億3000万ドルに膨らむ。ただこれらの取引は通常は、早期に取引を終了することはないという。
2つめは、高リスクのジャンクボンドに関連したクレジット損失で、期間は2009年9月から2013年12月。想定負債は30億3000万ドル。負債は最終的に78億9000万ドルに達する可能性もある。アナリストは、このデリバティブの期間が比較的短いことから、短期的なリスクとなる可能性があると指摘。
3つめは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)。2008年末時点で、42企業をカバーする39億ドルのCDSの負債は1億0500万ドル。
4つめは、デリバティブとして構成された免税債保証契約で負債は9億5800万ドル、最大で183億6000万ドルに膨らむ可能性がある。
<下振れが商機に>
同社に出資しているガードナー・ルソー&ガードナーのパートナー、トーマス・ルソー氏は、バークシャーの収益に影響を及ぼしたデリバティブによるボラティリティをさほど重要視する必要はないとしている。同氏は「市場の専門家はカウンターパーティーリスクを嘆いているが、それは誤った解釈。バフェット氏はキャッシュのアップフロントを受け取っている」と指摘。「株式デリバティブ取引は通常、期限前の取引終了がないことから、小幅な動きの余地が多少あるとバフェット氏は指摘している」と述べた。
その一方、バークシャーの格付けはトリプルAで、255億4000万ドルの手元資金があることから、最終的にデリバティブの支払いは可能で、仮に今後10年で株価が上昇すれば、プットオプションの損失も縮小する可能性がある。
バフェット氏は「時価会計によりデリバティブは決算で大きな変動をもたらす」とした上で、「上振れも下振れも(ミュンガー副会長や)私にとって喜びでも厄介なことでもない。下振れは、好ましい条件でのポジションを拡大できる機会として有益」との見方を示した。
(Richard Cowan記者;翻訳 伊藤恭子;編集 村山圭一郎)
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