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『ウィキッド』 ブックレビュー [ウィキッド]

(『ウィキッド』前田貞一郎)


100年に一度と言われるほどの世界的な不況に見舞われている昨今、
小林多喜二の「蟹工船」を読む人が増えているそうです。
プロレタリアート文学の代表作であるこの本が
再び脚光を浴びるのも、世相の反映なのでしょう。

では、この時代、『ウィキッド』カンパニーの面々はどんな本を読んでいるのか
ちょっと調査してみましょう。楽屋前の廊下の一隅に
読み終わった本を持ち寄るコーナーがあるので、まずそこを見てみると・・・。

山崎豊子「華麗なる一族」、小川洋子「博士の愛した数式」
恩田陸「夜のピクニック」等々テレビドラマや映画の原作本、
伊坂幸太郎「終末のフール」「フィッシュストーリー」などの人気作家本、
マット・ヘイグ「英国の最後の家族」、デイヴ・ペルザー「Itと呼ばれた子」等の翻訳本、
太宰、谷崎、宇野千代もいます。

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吉村和敏「プリンスエドワード島」これは写真集。
変わったところでは、
安東みきえ「頭のうちどころが悪かった熊の話」等、童話とおぼしき本や
江原啓之のスピリチュアル本がありました。

こんな小さなスペースに、まだまだ古今東西いろいろな本があり、
あらためて様々な個性をもった人たちの集まったカンパニーだな
という思いがします。

そこで、今度はもう少しその個性を追いかけてみることにしましょう。
何人かに最近読んだ本を教えてもらいました。
まずは我らがエルフィー、樋口麻美さん。

「今、ルソーの『社会契約論』読んでます。
 自由とは何かってことについて考えたくて・・・」


ルソー・・・、アッソー・・・。

感動のあまり思わず近頃板に付いてきたオヤジギャグを発してしまった私でした。
エルフィーは一日にしてならず。樋口さんさすがですねえ。

ではフィエロの北澤裕輔くんはどうでしょう。

「やっべ、最近、本読んでない」

彼の名誉のために言っておきます。
彼は公演委員長として本当に忙しい日々なのです。
このカンパニーがみんな生き生きしているのは、
彼の支えが大きいと断言できます。
体のためにも読書時間つくってくださいね。

ボックとネッサはどうでしょう。

金田暢彦くん、
「角田光代『プレゼント』とても良かったんです」
目をキラキラさせて言ってます。

鳥原如未さん、
「太宰ですかね。短編の方ですけど」
清く、正しく、美しくも激しいトリちゃんのお言葉でした。

カンパニーのムードメーカー、三宅克にいさんは・・・。
「ハーブ・エッカー『ミリオネア・マインド』。
 物事をマイナスの方向に考えないようになるから」


世間の荒波にもまれながら20数年、
波乗りの術を身に付けた人の読む本はひと味違います。

このネットのシリーズで登場した
縄跳びのお品、こと品川芳晃くんにも聞いてみました。
「僕は宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を読み直してみました。
あと一緒に松本零士の『銀河鉄道999』も・・・」

彼はここでも見事な二重跳びを披露してくれました。

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蟹“光線”!

怖ろしい魔女の母親役で、絶世の美女
(と台本に書いてある)間尾 茜さんは、
「今さらなんですが、リリー・フランキーの『東京タワー』。
 お兄ちゃんとかが読んだお古がまわってくるので、
 流行から少し遅れて読むんです」


間尾家の家庭内エコは本にまで浸透しているようですが、
ある意味新鮮な読み方かもしれません。
世間的評価と時間の淘汰にさらされた後で冷静に読めるわけですから。

陛下の松下武史さんはどうでしょうか。
とお聞きしようとしたのですが、陛下はただいま
ナンプレ(数独)に夢中のようです。

産婆役の増山美保さんにきいてみました。
「司馬遼太郎『竜馬が行く』の第4巻。
 今、船に乗っているところです」


あたかも今、自分が大海原へこぎ出しているかのような臨場感を
ともなって語ってくれました。こういう女性が多いと、
今の時代も明るくなるのでしょうね。

モリブル先生の武木綿子さんは、
「今泉忠明『猫の本当の気持ちがわかる本』。
 ちゃんと哺乳類学者が書いた本ですよ」


その前に同じ哺乳類として「僕の気持ちもわかってよ」
と嘆く武さんファンの男子諸君も多いことでしょう。

シェンシェン役の光川 愛さんも「犬と私の10の約束」に泣き、
「夢をかなえるゾウ」に笑ったそうです。
負けずに頑張ろう。ヒト科ヒト目の男子。

最後はグリンダ姫の沼尾みゆきさんにきいてみましょう。
「あの、ほら、経済学者が書いた輪廻転生の本」

禅問答のような答えが返ってきましたが、
どうやら魔女の父親役の白倉一成くんから借りた本らしく、
彼に問い合わせたところ、
経営心理学者(経済学者とはちょっとちがったかもしれないけど)の
飯田史彦「生きがいの創造」と判明しました。

『ウィキッド』をご覧になった方が少しでも前向きになるには、
演者はよりいっそう前向きな姿勢で事に臨まなくてはなりません。
それを模索する沼尾氏の一端を垣間見た気がしました。

まだまだほかの人にも聞いてみたかったのですが、
またの機会にします。

昔、私の知り合いに、こう言った人がいました。
「他人に自分の本棚を見られることほど、恥ずかしいことはない。
 頭の中身を見られているようだから」

皆様、個性的な『ウィキッド』メンバーの精神的なヌード、
ちらっとご鑑賞いただけましたでしょうか。

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