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2009年3月2日

◎売れるエコカー 税制の後押しを速やかに

 自動車の記録的な販売不振が続く中、北陸の新車販売市場では、ハイブリッド車を中心 にエコカー(低公害車)の売れ行きが堅調という。世界的な不況で自動車文明の一大転機とも言われる状況にあって、環境対応車の売れ行きの良さは、自動車産業の進むべき方向をあらためて明示している。

 政府も政策面からの後押しを強めるべきであり、当面まず求められるのは、エコカー購 入の税負担を軽減するグリーン税制の拡充である。二〇〇九年度税制改正法案では、エコカーの自動車重量税の減免などが盛り込まれており、速やかな成立を望みたい。

 政府はハイブリッド車や電気自動車、天然ガス自動車、燃料電池自動車などのエコカー を広げるため、〇一年に行動計画を策定している。実用段階のエコカーを一〇年度までに一千万台以上にするという当初目標は、既に〇五年度に達成された。自動車不況の今は、新たな目標を掲げてエコカーの普及を図るべき時と言える。

 エコカーに対しては、環境優遇税制として自動車取得税の軽減措置が取られてきたが、 不況下の〇九年度税制改正では優遇税制の大幅な見直しが行われ、ユーザーにとって負担の重い自動車重量税の減免も三年間の時限措置として実施されることになった。

 歴史的な自動車不況に対応して欧米各国や中国、韓国などは業界支援を強めており、中 韓両国は自動車の取得税や消費税を減免している。中国が一月の新車販売台数で米国を抜いたのは、小型車の減税効果が大きいといわれる。こうした動きは保護主義批判も招いているが、日本の優遇税制はエコカーが対象であり、環境政策として正当化されよう。

 自動車販売業界では、エコカー減税が実施されるまでの一時的な買い控えを恐れる声も あり、早期の実施が求められる。

 北陸の製造業にも大きな影響を及ぼす自動車産業の目指すべき方向は、やはり環境対応 と安全性の徹底追求であろう。販売不振による減産を余儀なくされても、次世代の技術開発の投資をおろそかにしてはなるまい。

◎北朝鮮ミサイル 迎撃準備も同時進行で

 北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の改良型を日本に向けて発射した場合、 ミサイル防衛(MD)システムで迎撃する検討を防衛省が始めたのは、国防上必要な措置である。整備中のミサイル防衛システムは、このようなケースを想定して巨額の予算を投じているのであり、限りなく実戦に近い訓練になるだろう。迎撃する、しないは最終的に政治決断に委ねれば良いのであって、防衛省は情報収集から迎撃準備までを完ぺきにこなしてほしい。

 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議は、核実験や弾道ミサイルの発射はもとより、「 弾道ミサイル計画に関連するすべての活動」の停止を求めている。北朝鮮は、ミサイルではなく、あくまで人工衛星用のロケットと言うつもりだろうが、ロケットに核兵器を積めば核ミサイルになる。

 弾道ミサイルも衛星用ロケットも基本的に同じ技術が使われている以上、国連決議に違 反するのは明らかだ。ミサイルであろうと、人工衛星であろうと、打ち上げを認めるわけにはいかない。政府は迎撃準備と同時進行で、米韓両国と歩調を合わせて、中国への働きかけを強め、北朝鮮の野望をくじく努力を続けたい。

 北朝鮮は一九九八年にテポドン1号を発射し、日本列島上空を越えて三陸沖の太平洋に 落下した。このときも北朝鮮は人工衛星「光明星1号」を打ち上げたと発表したが、該当する衛星は見つからなかった。これがミサイルの発射実験だったのは明白であり、今回も同じ手を使うつもりだろう。

 ミサイルないしロケットを打ち上げる場合、青森・北海道方面に向けて発射し、太平洋 側に落とす説が有力と言われる。米国と連携して、まずはしっかりとした監視態勢を構築し、発射に備えたい。

 迎撃するかどうかは、オバマ米大統領の判断に左右されよう。失敗すれば北朝鮮を喜ば せることになるが、改良のための貴重なデータが入手できる。成功すれば、北朝鮮に大きなダメージを与えられる。ミサイル発射は、北朝鮮にとっても大きな賭けになる。


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