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2009年3月2日

 携帯電話が普及し始めたころ、街角の電話ボックスに入って通話している人を見かけた。携帯を自慢しているようで、キザなヤツ、と思った

あれはいやみではなく、実は正しいマナーだった。人込みで大声を上げたり、すれ違う人とぶつかる寸前まで携帯を離さぬ人より、数段礼儀正しい。文科省の調査では、高校2年で92%、小学生6年でも24%という携帯所有率である。電話ボックスが乏しくなったせいではなかろうが、人目をはばからぬ携帯族が目立つ

通勤バスで、化粧する女性も目にする。揺れる車内で手際よく塗りたくる姿に、あきれもし、感心もする。車内は時折、混雑する。座れなかったら、彼女はどんな顔で出勤するのだろうと、いらぬ心配までする

携帯や化粧品のせいでは、決してない。便利な道具を使うマナーと、人目をはばかるという美徳が急激に薄れている

もうろう会見が批判され、「入院しながら職務に励む」と言った揚げ句にクビになった大臣がいた。そんな「ながら」ができるものか、と誰もが笑ったが、似たような「ながら」は街にあふれる。前大臣を笑えぬ人もいる。


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