ここから本文エリア 性犯罪 許さない 屈しない2009年03月02日
もっと子どもと性を語ろうよ――。米軍基地の街、沖縄県宜野湾市で、声を上げ続ける人がいる。性教育の啓発を進めるNPO団体代表、玉元一恵さん(48)。米兵の性犯罪で被害を受けたのに中傷される女性を目の当たりにしてきた。性と命の尊さを知れば、自分と相手を大切にできる人が育つ。そう信じて奔走している。 「妊娠した女子中学生の親は性教育に無関心だった」「高校生にもデートDVがある」。宜野湾市役所の会議室で1月中旬、若年出産や非行を抱える家庭を支える家庭相談員の研修があった。性をめぐる事例が次々に挙がり、講師の玉元さんは聴き入った後に語りかけた。「レイプなどの暴力は命にかかわる。性教育は難しいけど、だから大切なのです」 玉元さんが性教育に問題意識を持つようになったのは、95年に米兵3人が起こした少女暴行事件がきっかけ。長女におっぱいを含ませながら、食い入るようにニュースを見た。当時は米軍基地のない石垣島に住んでいたが、沖縄本島中部の故郷、具志川市(現・うるま市)での記憶が一気によみがえった。基地が集中し、米兵に暴行された女性や妊娠させられた女性がいた。 娘のためにできることは何か。考えた末、99年に子どもの人権啓発に取り組む団体に参加。04年に性教育の啓発もしようとNPO団体「i―Dear舎」をつくった。 95年以降も米兵の性犯罪はたびたび起きている。しかし、玉元さんは表だって抗議の声を上げてきたわけではない。米兵が相手だと、被害者だけでなく支援者も中傷されがちだ。自分や家族がそんな目に遭うのが怖かった。 昨年2月、14歳の少女への暴行容疑で米兵が逮捕された事件でも、少女に落ち度があったかのように責める声がインターネットにあふれた。玉元さんは憤った。「ちゃんとした大人なら暴行なんてしない」。まもなく少女は告訴を取り下げた。検事に「そっとしておいてほしい」と話したという。「バッシングに耐えられなかったのでしょう。守ってあげられなかった」 気持ちが変わった。支える側が中傷を恐れていては、被害者を守れない。活動を性教育にしぼり、この1年間で約30回も講演を重ねた。 被害者の痛みを受け止め、性犯罪を許さない社会にしたい。願いを込めて子どもたちに訴える。「あなたたちは選ばれて生まれてきた大事な命。自分と同じように、周りの人も尊重できるようになってほしい」
マイタウン沖縄
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