中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索

尾道方式の在宅ケア 広げたい開業医の参加 '09/3/2

 開業医が中心になり、地域の医療関係者だけでなく、福祉のスタッフも加わって、在宅の患者を支える。そんな取り組みが、尾道市で本格的にスタートして十年。「尾道方式」として全国から注目されるようになった。

 なかでも特徴的なのが「ケアカンファレンス(会議)」だ。かかりつけ医がリード役となって患者本人や家族の意見も聞きながら、医療、介護スタッフと話し合い、一人一人のプランを練り上げる。

 開業医のほか、看護師、ケアマネジャー、リハビリのスタッフらが、入院先の病院や開業医の診療所に顔をそろえる。福祉用具の事業者や地域の民生委員を交える場合もあるという。

 現在の心身の状態についての情報をまず参加者で確かめ合う。自宅での暮らしをサポートするために、それぞれがどんなサービスを提供するか。同席した患者や家族の意向に沿いながら、十五分間の会議で申し合わせていく。

 開業医が積極的にかかわることにはいくつかのメリットがある。病状が変化した場合、臨機応変に応じられることも一つだ。

 痛みを和らげたり、よく眠れるようにしたりするなど、柔軟な医療ケアによって、生活の質も改善されるという。

 豊かな診療経験を生かしたアイデアを出すこともできる。自宅に戻った寝たきり状態の末期がん患者が、開業医の往診を受けて足のリハビリをするうち、自分で座れるようになった例もある。

 かかりつけ医は一人でなく、皮膚科や泌尿器科の開業医も含め、チームで対応しているケースが少なくない。患者や家族にとっても、退院後の大きな安心につながっているようだ。

 市医師会に加入する開業医の九割以上が在宅医療を担い、末期患者の緩和ケアやみとりにも取り組んでいる。開業医の意識も高まっている。

 その開業医を、病院や近隣の開業医、他科の専門医などが連携してバックアップしている。地域の医療ネットワークが機能していることも、尾道方式が根付く鍵になっているといえそうだ。

 介護保険導入をきっかけに、開業医や病院が参加する在宅ケアシステムの重要性が叫ばれて久しい。しかし、全国的にはあまり進んでいないのが実情だ。

 尾道市では医師会が先頭に立ち、ケアマネジャーなどの研修を地道に重ねた。それが原動力になったといわれる。

 いつでも相談できて、すぐ駆け付けてもらえる開業医の支えがあれば、自宅で暮らす患者も心強い。それだけに、忙しい医師がケアカンファレンスに参加しやすいように会議の時間を設定したり、あらかじめ患者情報を伝えるなどの工夫も必要になる。

 尾道方式の生みの親である片山壽・市医師会長は「医師が率先して動かなければ」と言う。他の地域にも広げていくためには、開業医の理解と積極的な参加が欠かせないだろう。

【写真説明】開業医ら医療、福祉関係者が集まるケアカンファレンス




MenuNextLast
安全安心