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妊婦死亡、墨東・救命センター長の見解

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 昨年10月、脳内出血を起こした妊婦が都内8病院に受け入れを断られ、都立墨東病院で死亡した。これが周産期母子医療センター再編の議論が沸騰する発端となったが、その時、現場では一体何が起こっていたのか―。これまで同病院の医師が公の場で釈明する機会はほとんどなかったが、先日開かれた周産期、救急医療の専門家会議で、救命救急センターの濱邊祐一部長がその沈黙を破った。

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 会議は周産期、救急医療の今後の在り方を検討している厚生労働省の研究班が主催。周産期母子医療センターの指定基準の見直しなど、同省の懇談会で年度内に検討するとしている事項について、現場の医師から意見を求めた。

 「今回のようなセッションが開かれたのも、うちの病院が発端だと認識している」。周産期と救急医療の連携がテーマとなった第1部で、濱邊部長はそう語り始めた。

 病院側は当日、妊婦のかかりつけの産科医院から受けた最初の照会を断り、2回目の照会で受け入れを決めている。厚労省の調査によると、病院から呼び出された産科部長が女性を診察した際、患者の頭痛が悪化していたため、ER(緊急救命室)の担当医が呼ばれた。その後、医師が脳卒中の可能性を指摘し、ようやく脳外科医の診察に至ったという。
 マスコミの報道の後、「救命サイドは、『墨東の救命センターは何をやっているんだ』とあちこちから責められたが、残念ながら、それに対して釈明の機会はまったく与えられていないし、釈明する気もない」と前置きした上で、濱邊部長は「患者受け入れまでの(開業医との)情報のやり取りは3回やっているが、救急のラインの医者は全くかかわっていない。すべて産科同士だった」と明かした。

 また、妊婦の死亡について、「私も含め、全く問題視していなかった。妊婦が脳出血を起こして死亡することはあり得ることで、今回のケースも、周産期ネットワークの中ではうまく処理された。不幸な結果になったが、(産科の医師も)ネットワークは機能していたという認識を持っていたはずだ。なぜかと言えば、(直後に)そのことが一切院内で話題にならなかった」と、当時の状況について説明。
 「搬送までに1時間も2時間もかかったが、『周産期のネットワークでは早い方だよね』『最初に断ったのによくとってくれたよね』とほめられても良いという認識が、おそらく関係者の中にはあった。ところが、一般人の感覚から言えば、『受けるんなら最初から受けろよ』という話になる。マスコミを含めた一般の方の受け止め方と、我々の受け止め方は全く違う。問題になるという認識自体がなかった」と、医療現場と一般の間の認識の乖離(かいり)について言及した。

 周産期システムが連携を図るための方策として、濱邊部長は受け入れ窓口の一本化すべきと強調。「今回も、情報が救急センターに入っていれば、まったく別の展開になっていただろう」と述べ、問題は「(収容の)キャパシティだ」と指摘した。そして、その解決策としては、「各ブロックにある地域周産期母子医療センターを整備した上で、各地域で責任の所在を明確にし、地域主導のネットワークをつくれば、いまの医療資源でも対応は可能だと思う」との認識を示した。
 ただ、この問題については、「最終的にどこに改善を求めるかと言えば『病政』。東京都で言えば、福祉保健局の医療政策部になる」とし、「これまで中から発信できなかった最大の理由は、うちが都立病院だからだ。都内の周産期センターでも都立は墨東だけ。うちから言うことは実は内部批判になる」と、苦しい胸の内を明かした。


更新:2009/03/02 14:10   キャリアブレイン


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