●市場関係者が怯える3月末金融クライシス
株式市場に緊張が走っている。何とかバブル後最安値近辺でウロチョロしているものの、これが公的年金資金に支えられた薄氷相場であるのは市場関係者なら誰でも知っているからだ。公的資金が入っているのに、この程度しか上がらない。むしろ、こちらの方が恐怖なのだ。
「株式市場にはまったく買い手がいません。唯一の買い手が公的年金資金なのですが、3月末までに残された資金は1兆円ぐらいでしょう。この程度では3月末に株価7000円を死守できるかどうか……」(市場関係者)
7000円割れになれば、金融機関はアウトのところが続出する。株の含み損で自己資本比率が大きく下がってしまうからだ。別表でも明らかなように7500円割れで全メガが水没なのである。
金融機関は自己資本比率を維持するため矢継ぎ早に手を打っている。三菱東京UFJ銀行は4500億円にのぼる個人向け社債(劣後債)発行、野村証券は3000億円増資(発行済み株式の38%相当)する。この規模は絶句だ。みずほFGは利回りが14.95%という信じがたいドル建て優先出資証券を発行する。どこもかしこもなりふり構わずという感じだ。
しかし、平均株価が暴落すれば、こうした防衛策も水の泡。そこで、政府は新たな公的資金投入の検討を始めている。その規模も20兆円というのだが、これでも株価が上昇する保証はない。投資顧問会社マーケットバンクの黒岩泰氏がいう。
「20兆円も投入すれば一時は株価が押し上げられるでしょう。しかし、これは企業の業績とは無関係に株価だけが上昇する作られた相場です。その結果、株価は上昇しているのに、思いもよらない企業が資金繰り倒産する事態も起こりうる。市場は疑心暗鬼になり、売り圧力が強まれば平均株価7000円維持はとても無理です」
第一生命経済研究所の嶌峰義清主席エコノミストはこう指摘する。
「現在、日本株はPER(株価収益率)から見てかなり割高です。公的資金による株買い取りで株価が上昇すると割高感がいっそう高まりますから、そのタイミングで海外投資家を中心とした売りがかなり出てくるでしょう。株価上昇は期待薄とみています」
東証1部のPERは約66倍(25日)だが「60倍に下がれば平均株価6000円」(前出の嶌峰義清氏)だ。米シティの国有化や大型倒産などの不測の事態が起きれば3月末に株価が5000円台になってもおかしくない。
【保有株の平均株価損益分岐点】
◆みずほFG/9500円
◆三菱UFJ・FG/9000円
◆中央三井トラストHD/9000円
◆住友信託/8500円
◆三井住友FG/7500円
◆りそなHD/7500円
(08年9月末)
(日刊ゲンダイ2009年2月26日掲載)