数日前に米ロサンゼルス市役所で行なわれた「ミュージアム・オブ・トラレンス」(寛容の博物館。ユダヤ人の大量虐殺、人種差別などがテーマのミュージアム)の増築のための公聴会に出席した。増築工事をしなければならないが、騒音問題で住民が反対していており、公聴会が開かれたのだった。工事を支持する人の大半は、ナチスによる大量虐殺で生き残ったユダヤ人直系の子孫だった。
最初に支持の発言をした人は博物館側の女性で、2人目がラビ(ユダヤ教の聖職者)、3人目が筆者だった。筆者はユダヤ人の共同体で17年間にわたりユダヤ人の子ども教育について研究した。筆者がコメントを要請された理由は、ユダヤ人だけではなく多様な種族が博物館の増築を支持していることを示すためだった。
筆者は人格教育の専門家であり、人格教育に関するベストセラーの著者だと自己紹介した。続いて、子どもに対する人格教育の本質は「垂直文化」であり、これを形成する最も重要な要素は「親孝行」と「苦難の歴史」についての教育だと説明した。ユダヤ人が子どもの教育に成功する理由はこの2つの要素をきちんと教えているからだ、と話した。
この博物館を通して「親や以前の世代の苦難」を体験させる歴史教育は、子どもに自身のアイデンティティーの根源を忘れさせないために必須であり、人類の普遍的な価値である正義の具現に向けても必要とされる、と力説した。第2次世界大戦当時に周辺諸国に苦痛を与えたドイツと日本の「蛮行」を後世に教えなければならないのはこのためだ、と強調した。そして、博物館を増築した後、ナチスだけでなく日本の蛮行に関する資料も展示することを要請した。
三一節(3月1日の独立運動記念日)を迎え、我々は先祖の犠牲に報いるために何をすべきかについて考えなければならない。日本の右翼は日増しに強まっている。旧日本軍の従軍慰安婦事件もついても「合法だ」と主張している。ユダヤ人が自らの苦難の歴史を世界に告発する方法の一つは、博物館を作って世界の人々に知らせることだ。米全域にはおよそ20カ所のユダヤ人虐殺をテーマにした博物館がある。米ワシントンのホワイトハウス付近に建てられた博物館には世界から毎年約200万人の観光客が訪れている。もちろん周辺の小中高生には博物館の見学が義務付けられている。その博物館には「苦難の歴史を記憶するとき、希望が生き返る」というスローガンがある。苦難の歴史を記憶できなければ希望がないということだ。
芸術を通して告発する方法もある。ユダヤ人のスティーブン・スピルバーグ監督が作った映画『シンドラーのリスト』はドイツの右翼を沈黙させた。世界の人々に対し、ナチスの蛮行をこれ以上に強力に告発できる方法はあるだろうか。ユダヤ人の人権団体で働くラビは筆者に次のように話した。「なぜ韓国人は慰安婦事件を世界の人々に告発する映画を作らないのか。これをテーマに映画を作れば、2つの成功を一度に収めることができる」と。
まず、テーマ自体が多くの人々の好奇心を誘発し、世界的に大ヒットするはずであり、さらにその余勢で日本側の主張を直ちに黙殺させることができる、ということだ。映画を作るためには2つの点に注意しなければならない。扇情性よりも歴史的なドキュメンタリーに、また「憎しみ」よりも容赦と正義の具現、そして和合に焦点を置かなければならない。未来のより大きな災難を防ぎ、平和をつかむためにだ。
韓国の各人権団体が厳しい状況の中、慰安婦の真相を知らせるために米国や日本へと東奔西走する姿が痛ましく思える。当事者がこの世を去る前に、急いで大作映画を作らなければならない。ナチスによって1100万人(ユダヤ人600万人とユダヤ人以外の500万人)が死亡したが、唯一ユダヤ人だけがその苦難を忘れるなと世界に繰り返し告発している。ドイツ政府が耳を傾けるしかない理由もここにある。
韓国の経済的な繁栄も、苦難の歴史を体験・記憶している世代が成し遂げた奇跡であるという事実を見過ごしてはならない。それだけ「苦難の歴史」の教育は子どもの人格教育の中核となる。韓国の若年層に何故あれだけ失業者が多いのだろうか。必ずしも不景気のせいだけではなさそうだ。