県立中央病院(高松市)の受精卵取り違え疑惑で、28日に東京都内で開かれた日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長)の定例理事会が、川田清弥医師(61)にどのような対応をとるかが注目されたが、理事会は再発防止策が実施されているなどとして「処分しない」と決定。会告(指針)に抵触していた複数の受精卵移植については「『抵触イコール処分』ではない」との認識を示した。【三上健太郎】
理事会後の会見には、落合和徳副理事長や星合昊・倫理委員会委員長らが出席。星合委員長が「まずは(取り違えの可能性のあった)2組の夫婦にお見舞いを申し上げる」と述べ、学会の声明文や再発防止に向けた取り組みを説明した。
学会の処分は重い順に、除名▽退会勧告▽会員の資格停止▽けん責▽厳重注意--の5段階ある。川田医師については、27日に学会が聴取した際の口頭注意にとどめた。処分の必要はないと判断した理由について、星合委員長は「今回は安全管理上の問題」として「病院が新たな安全管理マニュアルをつくりそれに準じて実施している」と説明した。
また、昨年4月に改定した「移植する受精卵は原則1個」との指針について星合委員長は「原則1個というのは世界中でもない。一つの努力目標」と説明し、「個々の症例に関する判断も伴うので、違反したらすぐ処分ではない」と繰り返し、「(指針は)当面このままでいく」とした。
星合委員長は会見後、指針に抵触する複数の受精卵移植は中央病院以外でもあると思うか、と問われ、「そう考えている。順守してほしいが医師の判断で行われることは、個人的にはあっていいと思う」とも話した。
理事会を受け28日、川田医師は「声明文の趣旨を厳粛に受け止め、ダブルチェックなど安全対策を徹底し、再発防止に努めるとともに、学会の見解(会告)を順守し、妊娠を希望される患者様の治療を続けたいと考えています」とのコメントを出した。
毎日新聞 2009年3月1日 地方版