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【どうなった?ニュースその後】

ペット識別のマイクロチップ(神奈川県厚木市) 助成終了も啓発継続へ

2009年2月24日

猫にマイクロチップを装着する青木泰道獣医師=神奈川県厚木市で

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 「ほんの一瞬で終わるよ」。厚木市の青木泰道獣医師(61)は猫にマイクロチップを装着してみせた。長さ約十二ミリ、直径約二ミリのチップを専用の注入器を使い、首の後部に埋め込む。猫もほとんど気付かぬまま、わずか数秒で完了した。

 チップ装着の犬や猫に、保健所や動物病院などに置いてある読み取り機をかざすと、十五ケタの個体識別番号が表示される。地震などの災害時にパニックのため逃げたり、ペット同伴の海外旅行の検疫時に効果があるとされる。国や動物の種類、個体番号が記されており、データベースから検索すると飼い主が特定できる。

 厚木市は五千−六千円かかる装着費用のうち三千円を補助。昨年末までに犬や猫など計千二百五十三匹が装着済みだが、事業は本年度で終える。市の担当者は「普及や周知はある程度図れた」と強調し、成果はあったとみる。特に犬の場合、市登録の一割強に装着され、全国では5%以下の地域も多い中、その認知度は高い。

 地域の獣医師会長を務める青木さんは「この三年でだいぶ普及した」と実感する。狂犬病予防や各種ワクチンの接種、不妊手術を兼ねて装着する飼い主が増えたという。市の補助終了には「世の中厳しい状況。動物より人間にカネをかけろということかな」と推測する。

 主に猫の保護に努めるボランティア清水光子さん(59)は「助成の終了は残念。迷子を保護しても、飼い主が見つからないと多くは処分される。チップが付いていれば積極的に保護できる」と説明し、今後は「行政、獣医師、市民が一体となり意識を高めてほしい」と願う。

 一息ついた感の同市に対し、環境省は新年度から、装着を促す事業に乗り出す。年間約三十四万件(二〇〇六年度)の犬や猫の処分数を減らす狙いに加え、全国数カ所にモデル地区を設定し、装着の利点を理解してもらう説明会を企画する。

 四世帯に一世帯がペットを飼うという現代。青木獣医師は「少子化時代で、ペットが夫婦間の仲をとりもったりする」と家族のような役割を唱えるが、「高齢化し徘徊(はいかい)する犬もいる。『あの時装着しておけばよかった』と後悔してからでは遅い」と早めの行動を促している。 (藤浪繁雄)

あのとき

 二〇〇六年十月から、神奈川県厚木市は災害などで迷子になったペットの身元や連絡先が判別できるように、個体を識別する「マイクロチップ」の装着費用の一部助成を始めた。ペットブームの中、安易に捨てられる犬や猫も増加傾向にあることから、飼い主の責任の所在を明確にする狙いも込められた。全国の自治体に先駆けた取り組みは愛好家や獣医師らの注目を集めた。

 

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