MONO雑誌サイト-Blog

カセットボンベの可能性

2009/02/25 20:48
印刷用ページ
後からこの記事を見られるように保存する
記事のタイトルとURLを入れたメールを作って,知人に紹介する
この記事にタグを付ける
中山 力=日経ものづくり

 家庭用の卓上ガスこんろ用燃料としておなじみのカセットボンベを燃料として使う耕運機が相次いで発売されました。三菱農機が2009年2月に発売したのに続き,ホンダが同年3月に発売の予定です(Tech-On!関連記事1およびBPtvの動画)。ホンダが開催した発表会では開発担当の方にお話を聞くことができたのですが,両社がほぼ同時のタイミングになったのは全くの偶然だったとそうです。ある展示会で三菱農機の開発品を初めて知って「びっくりした」とのことでした。

 耕運機にカセットボンベを適用するに当たっての工夫点などについてはTech-On!の関連記事や日経ものづくり誌の記事を参照して頂くとして,ここでは,カセットボンベの適用可能性について書いてみたいと思います。編集部でも「他にもカセットボンベを適用できる製品があるのではないか?」と話が盛り上がりました。

 カセットボンベの利点は基本的に,その手に入れやすさと保管も含めた取り扱いのしやすさです。こんろやストーブ,ランプ(ランタン)といったアウトドア品で使われていることからも,電源コンセントやガス栓などが近くになく,非日常的な状況だがユーザーは一般の人という条件があるようです。

 そこで,適用候補として第一に上がったのが携帯型の発電機でした。災害時の停電などに備えての保管といったことを考えると,カセットボンベは適しているように思います。ホンダも,発表会の時点では明らかにしませんでしたが,後日,発電機への適用を検討していることを明言しました。

 ところが,少し調べていくうちに発電機は既に実用化されていることが判明しました。三菱重工業やマキタ沼津(本社静岡県沼津市,旧:富士ロビン)が製品化していました。三菱重工の名前が出てきて,「これはもしや」と三菱農機に問い合わせてみると,案の定,三菱農機の耕運機のエンジンは三菱重工製で,カセットボンベを適用したエンジンは三菱重工の発電機がベースになっているとのことでした。つまり,発電機から耕運機へと適用範囲が広がったわけです。

 さて,耕運機に近いもので思い付いた機器の一つが芝刈り機です。このことをホンダの方に提案(?)してみたところ,「芝刈り機はほとんど家の近くで使うので,家のコンセントから電力を供給すればいいんです」と,あっさり却下されてりましました。

 では,燃料電池はどうかと調べてみます。ありました。パナソニック電工(当時は松下電工)がカセットボンベから取り出したブタンガスと水蒸気を高温の触媒中で反応させて水素を生成する改質器を開発しています(Tech-On!関連記事2)。その後,製品化されたのかどうかは不明(明らかになりましたら,ここでご報告します)なのですが,少なくとも既に検討されたことは確実でした。

 このほか,屋外で使う扇風機や冷蔵庫などはどうだろうかと思ったのですが,あまりピンときません。ホンダにおける耕運機の開発では,電動化を検討した際にバッテリ容量がネックになったそうなので,電動アシスト自転車とか電動車いすなど,現時点では電動の機器について検討するのも面白いかもしれません(もちろん,道路交通法上の規制やアイドリング・ストップなど技術上の規制はありますが)。

バックナンバー

とても参考になった 34
まあ参考になった 44
ならなかった 1
 投票総数:79
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはこちらの入力画面をお使いください。編集部へのご連絡

最新号

2009年2月号
日経ものづくり
2009年2月号から
Cover Story

しなやか作戦

淡々とヒットを飛ばしている企業がある。背伸びも無理もすることなく,自然体で開発した製品が,顧客の支持を受けている。(続きを読む)。


詳報
技術者を元気にする薬は「世界一の目標」
特報
“知りすぎ”にご用心
定期購読のお申し込み 最新号を一冊買う

定期購読者限定サービス

雑誌掲載記事の検索&PDFダウンロード
● 本誌記事を全文検索で探すことができます。
● 探した結果は,本誌記事とほぼ同じ体裁のPDFファイルとしてダウンロードできます。
● 1カ月あたり40ページ分までのダウンロードは定期購読者なら無料です。
アーカイブサービスとは
雑誌掲載記事の検索&PDFダウンロード

購読のご案内

毎月1日発行
年間購読料(税込み)
1年(12冊):13,200円
3年(36冊):28,600円
一部売価格(税込み): 1,400円

バックナンバー

2009年1月号
2009年1月号 特集 後悔しない設計

設計者が後悔するのはどんなときか。それは,自身が設計した製品で死亡や火災などの重大事故が起きたときではないだろうか。


2008年12月号
2008年12月号 特集 匠からのメッセージ

「ものづくりは人づくり」とはよく聞く言葉だ。人づくりの大切さを否定する人はいないだろう。


2008年11月号
2008年11月号 特集 特集:派遣の現場

2度のバブル崩壊と今回の素材高・金融不安で,メーカーは正社員を減らし,代わりにコストメリットの高い派遣社員を多く登用した。あたかもオセロの石をひっくり返すかのごとく。働く人たちは疲弊し,日本は「人材消耗型社会」になりつつある。

雑誌バックナンバー
日経ものづくり定期購読キャンペーン