カセットボンベの可能性
家庭用の卓上ガスこんろ用燃料としておなじみのカセットボンベを燃料として使う耕運機が相次いで発売されました。三菱農機が2009年2月に発売したのに続き,ホンダが同年3月に発売の予定です(Tech-On!関連記事1およびBPtvの動画)。ホンダが開催した発表会では開発担当の方にお話を聞くことができたのですが,両社がほぼ同時のタイミングになったのは全くの偶然だったとそうです。ある展示会で三菱農機の開発品を初めて知って「びっくりした」とのことでした。
耕運機にカセットボンベを適用するに当たっての工夫点などについてはTech-On!の関連記事や日経ものづくり誌の記事を参照して頂くとして,ここでは,カセットボンベの適用可能性について書いてみたいと思います。編集部でも「他にもカセットボンベを適用できる製品があるのではないか?」と話が盛り上がりました。
カセットボンベの利点は基本的に,その手に入れやすさと保管も含めた取り扱いのしやすさです。こんろやストーブ,ランプ(ランタン)といったアウトドア品で使われていることからも,電源コンセントやガス栓などが近くになく,非日常的な状況だがユーザーは一般の人という条件があるようです。
そこで,適用候補として第一に上がったのが携帯型の発電機でした。災害時の停電などに備えての保管といったことを考えると,カセットボンベは適しているように思います。ホンダも,発表会の時点では明らかにしませんでしたが,後日,発電機への適用を検討していることを明言しました。
ところが,少し調べていくうちに発電機は既に実用化されていることが判明しました。三菱重工業やマキタ沼津(本社静岡県沼津市,旧:富士ロビン)が製品化していました。三菱重工の名前が出てきて,「これはもしや」と三菱農機に問い合わせてみると,案の定,三菱農機の耕運機のエンジンは三菱重工製で,カセットボンベを適用したエンジンは三菱重工の発電機がベースになっているとのことでした。つまり,発電機から耕運機へと適用範囲が広がったわけです。
さて,耕運機に近いもので思い付いた機器の一つが芝刈り機です。このことをホンダの方に提案(?)してみたところ,「芝刈り機はほとんど家の近くで使うので,家のコンセントから電力を供給すればいいんです」と,あっさり却下されてりましました。
では,燃料電池はどうかと調べてみます。ありました。パナソニック電工(当時は松下電工)がカセットボンベから取り出したブタンガスと水蒸気を高温の触媒中で反応させて水素を生成する改質器を開発しています(Tech-On!関連記事2)。その後,製品化されたのかどうかは不明(明らかになりましたら,ここでご報告します)なのですが,少なくとも既に検討されたことは確実でした。
このほか,屋外で使う扇風機や冷蔵庫などはどうだろうかと思ったのですが,あまりピンときません。ホンダにおける耕運機の開発では,電動化を検討した際にバッテリ容量がネックになったそうなので,電動アシスト自転車とか電動車いすなど,現時点では電動の機器について検討するのも面白いかもしれません(もちろん,道路交通法上の規制やアイドリング・ストップなど技術上の規制はありますが)。