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社説:小沢氏米軍発言 体系的な安保政策を聞きたい

 小沢一郎民主党代表の日米関係をめぐる発言が波紋を広げている。

 「(米海軍)第7艦隊がいるから、それで米国の極東におけるプレゼンス(存在)は十分だ」(2月24日)、「日本の安全保障、防衛に関連することは日本が果たしていく」(25日)、「米軍でやらなくても自衛隊でやれることはやっていけばいい」(27日)

 政府や自民党の幹部が発言を「非現実的」「暴論」と批判すれば、社民党からも日本の軍備拡張につながるとの懸念が出ている。民主党内でも、評価する声が一部にある一方で、戸惑いや懸念が広がっている。

 小沢氏の一連の発言が、国民への説得力を欠いているのは事実である。

 第7艦隊は、広く西太平洋からインド洋を担当している。極東における米軍の抑止力がこの第7艦隊だけでよく、海兵隊や空軍を主力とする在日米軍のほとんどは無用ということであれば、在日米軍の抑止力を全く無視した主張であり、乱暴な議論であろう。米軍の日本駐留を定めた日米安保条約の不要論に結びつきかねず、日米安保体制の根幹にかかわるテーマである。

 また、小沢氏の発言は、在日米軍の大幅削減によって生まれた「空白」の一部を、日本の自衛隊によって補うと読み取れる。そうであれば、自衛隊の増強と膨大な防衛予算を伴う日本の防衛政策の大転換となる。発言はこれらをすべて見通したものなのだろうか。

 第7艦隊だけで「十分」と言いながら、一方で「(在日米空軍が)いらないというのではなく」とも語った。真意は不明である。

 「対等な日米関係」が小沢氏の持論だ。これを展開しようとして生煮えのまま安保問題に踏み込んだというのが実情ではないか。

 もちろん、政権が代われば在日米軍に関する政府の政策も変わり、そのあり方を日米間で協議することはあり得る。しかし、前提として、政権を目指す政党は、国家の帰趨(きすう)を決める安保政策を提示し、有権者の信任を得なければならない。

 ところが、民主党が昨年発表した「政策INDEX」では、日米同盟について「日米両国の対等な相互信頼関係」をうたったものの、「アジア太平洋地域の安全保障における米軍のあり方や在日米軍基地の位置付けについて検討」との表現にとどまっている。

 米軍再編だけではない。民主党が政権に就けば、ただちにアフガニスタン政策が問われる。インド洋での給油問題、日米地位協定改定などで米政府と対立する可能性もある。こうした課題でどんな解決の道筋を描くのか。

 総選挙を経て政権交代を実現し、首相を目指している小沢氏の言動には、国民の目が注がれている。その小沢氏から、体系的な安全保障政策をぜひ聞きたい。「口べた」を理由にした説明回避はもう許されない。

毎日新聞 2009年3月1日 東京朝刊

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