滝川市立江部乙(えべおつ)小学校の6年生女児(当時12歳)が05年9月、いじめを苦に自殺を図り、06年1月に死亡した問題で、母親の松木敬子さん(40)が市と道を相手取り「いじめ防止の義務を怠った」として計約7600万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が27日、札幌地裁(中山幾次郎裁判長)であった。市と道はいじめと自殺の因果関係は認めたが、「自殺は予見できなかった」として請求棄却を求めた。
原告側は裁判を機に実名を公表した。訴状によると松木さんの長女友音(ともね)さんは5年生のころから同級生にいじめられるようになり「キモい」などと言われ仲間外れにされた。いじめ被害を担任教諭に訴えたが学校側は対応せず、友音さんは「みんな私のことがきらいでしたか?」「とても悲しくて苦しくて、たえられませんでした」とつづった遺書を残して05年9月、教室で首をつり、06年1月に死亡した。
市は答弁書でいじめの防止義務違反があったことは認めたが「自殺を予見することはできなかった」と主張。教職員の人事管理をしている道も「市の報告書の範囲内でいじめを承知しているが、校長以下の教職員が自殺を予見することは不可能」と争う姿勢を示した。
原告側は「市教委が当初、いじめを否定し、遺族への説明も行わなかったため精神的損害を受けた」とも主張したが、市は「いじめの調査、報告に法的義務があるのか疑問」と反論した。滝川市の田村弘市長は「市としては調査報告書の中で『いじめ』の事実を認めており、これに基づいて法的な整理を進めたい」とのコメントを出した。【芳賀竜也】
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■ことば
滝川市立江部乙小6年の松木友音さん(当時12歳)が05年9月9日早朝、自分の教室で首をつり、06年1月6日に死亡。同級生からのいじめを訴える遺書を残したが、市教委は「遺書は友人関係の好き嫌いを表現したもの」として、いじめを否定した。06年10月に遺書の内容が報道されると、市教委に抗議が殺到。市はようやくいじめを認めて遺族に謝罪し、教育長と教育委員長が辞職した。札幌法務局は07年5月、人権侵害があったとして校長に改善措置を求めた。
毎日新聞 2009年2月28日 北海道朝刊