緊急保証制度(これは東京の場合)
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私はM銀行(メガバンク)の支店で法人営業を担当する若手行員です。異常に情報管理が厳しいので会社名は伏せますが、今回お伝えしたいのは、昨年10月から始まった「緊急保証制度」の問題です。銀行がノーリスクで金利をかすめとれる仕組みのため乱脈融資になりがちな制度で、“ゾンビ企業”を延命させた挙句、最後は税金で穴埋めすることになるでしょう。最も利益を得るのは明らかに銀行で、最も不利益を被るのは、納税者。国民の金利が銀行に移転された「失われた15年」と同じ構図があります。
【Digest】
◇8~9割はセーフティーネット融資に
◇現場はモチベーション下がりまくり
◇2割は不良債権化する
◇「返済期間10年」はおかしい
◇新産業の促進を阻んでいる
◇「納税者から銀行への利益移転」再び
政府は、今回のいわゆる「リーマン・ショック」以降の急激な不況への緊急措置として、中小企業の資金繰りを支援するために、昨年10月から「緊急保証制度」を始めました。いわゆるセーフティネット保証制度です。中小企業信用保険法第2条第4項第5号の規定により、売上総利益率か営業利益率が減少していれば、銀行から融資を受ける際、信用保証協会が保証人になって100%返済を保証してくれる、というものです。
中小企業庁の発表によると、既に1月末の時点で5兆円を越えています。2008年度第2次補正予算で保証枠が6兆円から20兆円に拡大されましたので、まだまだ利用は進みそうです。日本の単年度国家予算が約80兆円ですから、20兆がいかに巨額か、分かると思います。
◇8~9割はセーフティーネット融資に
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これは新宿区の場合。面接をして区の認定を受けねばならず、中小企業側は手間がかかるが、銀行は何もしないのでラク(なのに金利だけは掠め取る)![](/contents/026/672/303.mime1)
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今、社内では、このセーフティネット保証付き融資を徹底的にやれ、という大号令が出ていまして、新規融資の8~9割がセーフティネット保証になっています。十人前後の法人営業担当者が、ひたすら融資先を開拓しています。なにしろ取りっぱぐれがないのだから、当然です。
ノーリスクなのに、2%弱の金利を確実にとれる。審査も保証協会に丸投げで、行員の手間もかかりません。通常、大企業には0.5~1%で貸しますから、大企業に融資するよりも、緊急保証制度を使って中小企業に融資したほうがトクです。
通常の中小企業向けプロパー融資では、金利を2~3%、足下を見て3~4%とりますが、倒産でとりっぱぐれるリスクを考えると、なかなか貸せません。だから、確かに企業からすれば助かるのですが、銀行が怖くて貸せないような再生の見込みもない企業に貸し付けて延命すべきなのか、という問題はあります。
◇現場はモチベーション下がりまくり
我々は何をするのかというと、簡単に言えば、「中小企業から必要書類をもらって、保証協会に投げて、あとはヨロシク」です。企業は認定を受けるために書類作成や行政機関との面接など面倒なのですが、銀行側は、自分で審査をしないために時間が余ります。
時間が余る分、数をたくさん回ります。しかし、自分の頭で審査をしない銀行員など、アルバイトと何が違うのか、と思います。
うちは東大卒も多いですが、東大卒でもこればっかりをやっているわけで、当人からしたら、やってられない、という思いでしょう。正直、ヘコみます。誰でもできる仕事ですから。11月から、ずっとこんな感じです。もちろんウチだけでなく、地銀も信金も含め、同じでしょう。
結果、ますます、融資の仕事ではなくて、提出書類を丁寧に書くほうが社内評価が高くなります。メガバンクはどこも似たようなものだと思いますが、社内の検査部による検査が支店に入って書類に不備が見つかったら、その人はもう2度と出世コースに復帰できない.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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業績が悪化していないと認定されない![](/contents/026/672/303.mime1)
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減少率3%以上が必要。一応、業種指定はあるが、ほぼなんでも当てはまるのではないかと思われるほどに幅広い。![](/contents/026/672/303.mime1) |
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