自殺が多発する三段壁。夕闇が迫るなか、町職員や警察官らが巡回パトロールをしていた=和歌山県白浜町、高島写す
景気悪化で自殺者の増加が懸念されるなか、自殺が多発する各地の景勝地や観光地が警戒を強めている。地元自治体や警察などが連携し、自殺を未然に防ぐための巡回パトロールを始めたり、監視カメラの導入を急いだりしている。
高さ50メートルの絶壁から太平洋を一望できる和歌山県白浜町の三段壁(さんだんべき)。そそり立つ岩肌に波の砕ける音が響く。18日、役場職員や白浜署員ら9人が巡回パトロールをした。手分けして岩場を歩き、全長2キロのがけに目をこらす。
日没前、中年女性が独りで歩いてきた。現場に緊張が走る。「お一人ですか」。すかさず声をかけて趣旨を説明する。「私は大丈夫です」と元気な声が返ってきた。「あの笑顔ならば大丈夫」。白浜署の矢野勝正・生活安全刑事課長は胸をなで下ろした。
三段壁は南紀白浜を代表する景勝地。「自殺の名所」としても知られる。署によると、三段壁での自殺者は06年5人、07年9人、08年21人と急増。警察に保護された人も06年20人、07年29人、08年32人と増えている。
自殺者の急増を受けて、町は今月4日、警察や県などと連携し、現場周辺で週2回の巡回パトロールを始めた。自殺防止に向けた初めての取り組みで、1カ月間試行してより効果的な回り方を探る。
立谷誠一町長は「雇用悪化で自殺者の増加が予想され、一刻の猶予もない。町民からボランティアを募り、続けて活動できるパトロール隊を早急に結成したい」と話す。
富士山の北西に位置し、毎年80体ほどの遺体が見つかる山梨県の青木ケ原樹海。地元の富士河口湖町は、周辺の駐車場や売店の協力を得て、監視カメラ設置を急いでいる。