なぜ、娘は死ななくてはならなかったのか――。札幌地裁で27日開かれた滝川市の小6女子いじめ自殺を巡る民事訴訟の法廷で、母親の松木敬子さん(40)は「事実を知りたい。それがいじめに気付いてあげられなかった親としての償いだと思うから」と声を振り絞った。長女友音(ともね)さん(当時12歳)の死から3年。敬子さんは、短い人生を自ら閉ざさざるを得なかった愛娘を思う母親の心境を吐露した。【芳賀竜也】
敬子さんはこの日を機に実名を公表し、友音さんの写真を報道機関に提供した。これまでは市教委や報道陣への対応を親類男性にほぼ一任してきたが、「名前も顔も伏せるのは、事実解明を望む親の態度とは言えない。友音が生きた証しも残らない」と思い直したためだ。
「いまだに亡くなったことを受け止められないでいる」というが、その理由の一つが市教委の不誠実な対応だった。「(いじめ加害者の)保護者から子供に聞いてほしいと言っても説得してくれない。担任教師に面会を求めても『本人の意思に任せている』と言うばかり」。この日の弁論でも市教委はいじめの事実を認めたものの、原告代理人の内田信也弁護士は「世間の批判にどうにも耐えられなくなって『自白』したのが実情」と批判する。裁判では、いじめを防止する義務を怠った学校側の対応に加え、事後の調査報告義務違反も主張した。
敬子さんは「私と同じ気持ちの人を次々と出さないためにも、裁判しかないと思った」と話す。友音さんが亡くなった後も、学校でのいじめが原因とみられる自殺や不登校などは後を絶たない。「いまだにいじめを苦にした自殺がなくならない中で、いじめをなくすためには事実の解明が必要だと思います」。法廷で敬子さんは裁判長に向けて気丈に訴えた。
◇支える会が発足 北広島のいじめ問題家族も
この日の裁判に絡み、「滝川いじめ自殺裁判を支える会」(谷口由美子代表)が27日、発足した。メンバーは「登校拒否と教育を考える会(愛称・もぐらの会)」(江別市)が中心で約20人。北広島市で06年9月にあったいじめ問題の被害者家族も支援に加わった。
北広島市のいじめ問題では、「同級生がいじめを受けた」と担任に訴えた市立東部中1年の女児が逆にクラス内で孤立。その後、不登校になり転校を余儀なくされた。このケースでも市教委はいじめを認めず、女児の両親と市教委の間の謝罪に向けた交渉は決裂した。
この女児の母親は「教育委員会や学校、教員が同じことを繰り返さないためにも、裁判の中で事実と向き合うべきだ」と訴える。支える会は今後、裁判の傍聴を呼びかけたり、裁判の内容をインターネットで速報したりする。【水戸健一】
2月28日朝刊
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