サキの想い事。
(Interviewer:菊池直哉/Respondent:華群サキ 2008年12月某日)
華群サキ(都内某喫茶店にて)
━━━サキさんと音楽との出合いは?
私は小さい時から絵を書くことや、物を創る作業がとても好きでした。
小学、中学時代は音楽に対してはそれほど興味は無かったのですが、高校に入って友人にあるCDを貸してもらい、そのCDに感銘を受け音楽に興味を持ち始めました。
当時は美術部で「音楽を聴いてそのイメージを絵にする」みたいな作業が好きでよくENYAやOrigaやADIEMUSなんかを聞いていましたね。
19歳で30歳のとあるベーシストさんと結婚をして更に奥深く音楽と 触れ合う機会が増え、私も音楽に携わりたいと強く願うようになったのですが、彼は束縛の激しい男性でしたので私のやりたい事を何もさせてもらう事ができませんでした。
例えば、友人と遊ぶにしても門限があったり、仕事をするにしても”人と触れ合う機会の多いものはダメ”等々。それを破ると彼は私を精神的に追いつめられたり、家の中で暴れたりするので私は逆らう事ができませんでした。
それに、それが深い彼なりの愛情表現だと勘違いをしていました。
まぁ、それがDVだと気付くのに4年かかりましたけどね(笑)
離婚してからは籠から出た鳥のように自由に羽ばたいております。もう自由すぎる程に。
━━━サキさんはアイドル活動も行っていたそうですが?
そもそもアイドル的な活動を行っていたのは何故かを自己分析したところ、私自信、決して良い家庭環境でなく育ってきて「人から愛されること」に対しての強い執着と「孤独感」が強い人間だったので、「私を見て欲しい」という願望があったのだと思います。
━━━サキさんは尼崎出身ですよね?どういった家庭環境だったのでしょうか?
父が企業舎弟(*1)、母はその愛人の北新地のホステスで、私は所謂、妾の子です。
父と母は私を祖父母に預け、日本各地、世界各地を飛び回っていました。
そんな状況なので周りから奇異の目で見られて私はいつも独りでした。
そして父と別れた母は新しい男性と結婚をしたのですが、私は彼に虐待
を受けていました。しかし母は助けてはくれませんでした。
只、祖父母だけは私の味方でした。
しかしもう、そんな唯一の私の心の拠り所だった二人はいないのですけどね。
━━━愛されて育ってこれなかったので注目されるアイドル的な活動を始めたのですね?
はい。私にはその世界がとても甘美な世界に見えたので。
それで安易に始めたのがきっかけだったのですが、その世界は私が思い
描いていたような世界では無く混沌とした世界だということに気付いた
のです。
自分を押し殺し、人に媚を売り、友人のフリをして他人を蹴落とす同業
者(しかし、同じ境遇の子もいたりして仲良くなる場合もありますけどね。)、嫌な仕事でも受けないとやっていけなかったり、利用しようと近づ いてくる人間、仕事を提供する代わりに体を・・・と求めてくる業界人・・・
━━━甘美な世界だと思っていたけども実際に足を踏み入れると嫌な事もたくさんあったと?
はい。でもここで詳しく書くと夢見がちな人達に過剰な迄の現実を押し付ける事になるので(笑)
でも嫌な事もたくさんありましたが、自分を好いてくれるファンの方々がいたことはとても嬉しい事で、ファンの方々のお陰で頑張れていた部分がありましたが、よくよく考えてみるとそれは"仮の私の姿"に対して応援をしてくれているという事に気付いた時、私にとって罪悪感が芽生えたのです。「嘘をついてまで人に好かれて何になるのか?ありのままの自分を受け入れて欲しい。」そう思い、それらの仕事は辞めて自分のありのままの姿で好きなように自分を表現する音楽という道を選びました。
そしてありのままの姿を受け入れて欲しいという願望があります。
━━━「過剰な迄に現実」というバンドを始めたきっかけは?
昔から音楽もやりたかったんですが、バンドを結成するにしてもなかなか気の合う音楽関係者と知り合う機会もなかったのでしばらく出来ずじまいでしたが、2007年の冬にウチのベースである尾崎氏と出逢い、バンドを結成してみないか?ということになり、私のできる限りのコネクションでギター、ドラムを集め、なんとなく始めてみたのがきっかけです。始めてみて自分に合わなかったらすぐに辞めようと思っていましたが、音楽の奥深さに触れ、気の合う仲間とひとつのものを創り上げていく喜びを感じるうちに虜になってしまいました。元々物創りが好きという部分もマッチしてか今や音楽は私の生活の一部です。
━━━サキさんにとって音楽とは?
私にはなくてはならない存在・・・
例えるならば、精神安定剤であり、排泄行為でもあります。
━━━精神安定剤とはどういう事でしょうか?
私は毎日精神安定剤を飲んで生活をしています。
精神安定剤を飲むと苦しみから解放され何も考えないでいい状況になります。
いわば現実逃避のような異世界へのトリップです。私にとって音楽もそれに近いです。
━━━では排泄行為とは?
人が何かを摂取したら、必ず排泄をします。排泄をしないと病気になります。
私が心で摂取してきたものを、私の体を通して歌で吐き出す。
私にとっての自然な行為です。
━━━最後に一言ありますか?
"過剰な迄に現実"の作詞は殆ど私の実体験に基づいて書き上げたものです。
それを尾崎さん、市井さん、松田さんが音にして私が感情を吐き出して一つのものを創り上げています。メンバーには心から感謝しています。
私は痛々しい程の現実と向き合ってかろうじてまだ生きています。
其れに共感する人、嫌悪感を示す人、色々な人が
"過剰な迄に現実"を通して何か少しでも感じてくれる事があれば
私は「此処に存在している」と感じられる事ができるので、唯其れだけで幸せです。
(*1)企業舎弟
企業舎弟(きぎょうしゃてい)は、暴力団の構成員や暴力団周辺者(準構成員)が、資金獲得(シノギ)のために経営する企業・及びその役員や従業員をいう。そこで得られた資金は、上部団体に上納され、最終的に暴力団の資金源になる。暴力団対策法の成立によって、従来型の資金調達が困難になったため、法律適用の回避手段として多くの企業舎弟が生まれた。現在では「フロント企業」と呼ばれることが多い。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』