◎北陸の雇用悪化加速 労使が対立している時でない
北陸でも春闘が本格化してきたが、厚生労働省が新たに発表した非正規労働者の深刻な
失職状況や有効求人倍率の大幅な低下をみれば、労使が角を突き合わせて、従来通りの対立をしている場合ではないだろう。
県や各自治体がまとめた新年度予算案で、当面の雇用対策が出そろってきた。職業訓練
や再就職支援などは行政が担う役割が大きいとしても、この危機的な状況をしのぐには官民が一体となってスクラムを組むしかない。民間も雇用維持へ、できうる限りの努力が求められるのは当然である。
連合は石川、富山県ともに中央の闘争方針に沿い、前年を上回る九千円以上の賃上げを
要求している。赤字決算の企業が増え、減産が広がる中ではこの要求を通すことは難しく、いまは雇用維持を最優先せざるを得ないのではないか。年度末へ向けて離職者の急増が懸念され、企業のリストラは北陸でも非正規から正社員へ及ぼうとしている。労組の存在価値がまさに問われる局面である。
厚労省の調査では、昨年十月から今年三月までの非正規労働者の失職は全国で十五万人
を超え、石川は二千四百三十二人、富山は三千百四十一人となった。北陸財務局によると、北陸の雇用悪化は全国平均より急速に進んでいるという。経済もほぼ同様の状況であり、このままでは雇用不安が消費を冷やし、景気の足を引っ張る悪循環が他の地域以上に加速しかねない。
北陸でも製造業を中心に、社内で仕事を分かち合う「ワークシェアリング」を導入する
動きが出始めた。この方法は二〇〇二年に政労使が導入で合意しながら、その後、景気が回復したため議論が深まらなかった。業種や労働形態によっては検討の余地があろう。政府は従業員の休業手当を助成する「雇用調整助成金」など、雇用維持を図る企業への支援策をさらに拡充する必要がある。
自治体も雇用の受け皿を広げているが、ミスマッチも生じており、求職者は臨時職員よ
りも安定雇用を求める傾向も鮮明になっている。企業は国や自治体の制度を最大限に活用しながら、雇用維持へ知恵を絞ってもらいたい。
◎政治のリーダー 日本を泥舟にせぬ覚悟を
「この人の言うことなら信頼でき、安心して、踏ん張ってついて行ける」という、どっ
しりしたものを国民に与えることができるかどうかによってリーダーの良しあしが決まる。この物差しからすれば、麻生太郎首相も、野党・民主党の小沢一郎代表も仲良く合格点に達しないのではないか。世界同時不況のただなかにある日本を「泥舟」にしない覚悟や、そうならないという安心感を国民に与えているかとなると、ともに心許ない。
麻生首相は、二〇〇九年度予算案の年度内成立にメドがついたことから、定額給付金の
財源を確保する〇八年度第二次補正予算関連法案成立後の三月上旬にも懸案の大規模な追加経済対策の策定に取り組む方針を固めたが、どういうものにするのか急所だけでも明らかにする必要があるのに、それがずしんと伝わってこない。
そもそも個人消費を喚起する目的の定額給付金をめぐって、麻生首相は所得の高い人が
もらうことに関して参院で「さもしい」と口走ったことから二転三転した。郵政民営化など他の重要な問題についても発言のブレが多かった。これでは国民がついて行かれない。支持率の急落は何よりもそのことを語る。
他方、小沢代表の方は遊説先での記者会見で在日米軍再編に関し、日本の現状を「米国
におんぶにだっこ」と批判し、「対等の関係」が望ましいと強調したものの、「日本に関係する事柄には日本がもっと役割を分担すべきだ」とし、その具体策を示さないまま「極東における米軍のプレゼンス(存在)は第七艦隊で十分」とする抽象論を口にした。
安全保障の問題は民主党のアキレスけんだ。それで「あるべき姿」だけ述べたのではな
いか。根底に極東の安全保障問題に対する甘さや、あいまいさがある。これでは民主党に政権を委ねてよいのかとの不安が消えない。リーダーは当面の問題の打開策を分かりやすく語り掛け、将来についても明確なビジョンを述べるときだ。そうでないと国民は安心してついて行くことができないのである。