違法にコピーされたゲームソフトを携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」で使えるようにする機器を巡り、任天堂とゲームメーカー54社が、中国系のソフト販売会社「嘉年華」(東京都文京区)など5社を相手に販売禁止を求めた訴訟で、東京地裁は27日、輸入・販売の差し止めと在庫の廃棄を命じた。市川正巳裁判長は「原告の営業上の利益が侵害されている」と指摘し、輸入・販売禁止の仮執行も認めた。
問題の機器は「マジコン」(マジックコンピューターの略称)=1面NEWSLINEに写真=と呼ばれ、主に中国から輸入され、国内に少なくとも数十万台が流通しているという。DSには、複製された違法ソフトを差し込んでもゲームできない制限システムがあるが、違法ソフトをマジコンに装着し差し込むと制限を解除できる。
被告側は「ユーザーが自分で作ったソフトも使えるようにする機器」と主張。しかし、判決は「マジコンの大部分は複製ゲームの使用に用いられている」と指摘し、不正競争防止法が販売を禁じている機器に当たると判断した。【銭場裕司】
妥当な判決。同種の「マジコン」と呼ばれる機器にも断固たる法的措置を講じる。
判決は不正競争防止法の条文を無視するもので非常に遺憾だ。
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■解説
「マジコン」販売差し止めを命じた東京地裁判決は、ネット上で野放し状態になっている違法ソフトの使用に歯止めを掛けるものだ。任天堂は被告側への賠償請求も検討中で、ゲーム業界に与える影響は大きい。任天堂とセガ、ハドソンなど主要ゲームメーカーが結集した異例の訴訟だった。背景には、違法ソフトがネット上ではんらんし、正規ソフトの売り上げが伸びないことへの強い危機感があった。
07年11~12月に任天堂が海外の7サイトを対象に行った調査で、違法ソフトのダウンロードが1億回以上確認された。同社は訴訟で「天文学的な損害を受け続けている」と訴えた。
ソフトの著作権保護に取り組む社団法人「コンピュータソフトウェア著作権協会」(東京都文京区)は「新たな被害拡大を抑制できる」と評価した。一方で「ネット上での違法流通を防ぐ仕組みが必要で、プロバイダーや行政に働きかけたい」と話した。【銭場裕司】
毎日新聞 2009年2月28日 東京朝刊