Vol.14 No.556  (2007年11月21日  水曜日)

「関西は十分に元気だ」―下妻関経連会長が、関西プレスクラブ定例会で

下妻博・関経連会長(写真)が11月6日、関西プレスクラブの定例会で講演し、関西文化学術研究都市などの実例をあげながら「関西は元気がないというが、私は昔から元気があるよと言っている。関西のさまざまな魅力や価値を、関西の人たち自身が気づいていない」などと語った。
 「私と関西」のテーマで講演した下妻会長は、しばしば論議される東京との比較に対し「東京と比較しても仕方がない。地に足のついた文化もないし、住んでいる人が愛着を持っていない土地と比べる必要があるのか」との持論を披露。
 その上で、2011年に街開きする大阪・梅田北ヤードの再開発計画に盛り込まれているアジア太平洋研究所について「大阪・キタに外国の研究者が集まる立派な交流センターがあることを夢見て、絵を描きたい」と言明。16年完成予定の第2期については「ニューヨークのセントラルパークのような公園はできないか」などと、収益だけの開発にしない考え方を改めて示した。(田原) 



神戸港・大阪港などが「阪神港」に統合―12月から

国土交通省はこのほど、湾港の海域区分を改め、大阪港(堺泉北港を含む)、神戸港、尼崎西宮芦屋港の大阪湾内の3つの国際貿易港を「阪神港」に統合すると発表した。港則法と関税法の両施行令を改正し、12月1日から施行する。
 従来、外国船が入港時にそれぞれの港に、船舶の登録トン数に応じた「とん税(国税)」と「特別とん税(地方譲与税)」を支払っていたが、今回の改正により一元化される。激化する国際港湾競争に対する大阪湾諸港の競争力増強を図る。各港に寄港する外国貨物船の約42%が、特に外国コンテナ船は約62%が2港以上に寄港している。07年4月より実施した入港料5%低減とあわせて約15%低減されるという。
 すでに、東京湾では、東京・川崎・横浜の各港が「京浜港」として扱われている。

問合せ先:国土交通省 近畿地方整備局 港湾空港部
電話:078−391−8361
URL:http://www.kkr.mlit.go.jp/



大型複合商業施設、関空対岸に12月オープン

大和ハウス工業株式会社(大阪市)はこのほど、関西国際空港対岸のりんくうタウンに大型複合商業施設「りんくうプレジャータウンSEACLE(シークル)」を12月8日開業すると発表した。スーパーマーケットやドラッグストアなど周辺地域の日常のニーズに応えることを基本としながら、子供向け職業体験施設、アミューズメント施設、大阪湾に沈む夕日が見られる温浴施設や関西最大級の観覧車などのエンターテイメント施設が入る。
 りんくうタウンのアウトレット、イオンモール、ニトリ、ヤマダ電機などとシークルを加えると商業施設の売り場面積は約12万8000平方メートルとなり、大阪・梅田の百貨店3店の合計売り場面積に迫り、南大阪圏最大級の商業ゾーンとなる。「シークル(SEACLE)」の名称は、ショッピング、体験などの英語の頭文字からできている。
 
問合せ先:大和ハウス工業株式会社 広報企画室
電話:06−6346−2111
URL:http://www.daiwahouse.co.jp/



世界文化遺産・国宝姫路城「平成の大修理」―2009年度から

世界文化遺産・国宝姫路城(写真)で2009年度から「平成の大修理」が始まる。今回は大天守(高さ約46メートル、5層6階・地下1階)の保存修理工事が中心となる。
 姫路城は、徳川家康の庇護を受けた池田輝政が9年の歳月と推定2400万人の人々を動員して、1609年に築城。「昭和の大修理」(1956年〜64年)で大天守をいったん解体し、組み直す修理をした。今回の修理は、耐用年数を越え傷みが目立つ大天守の漆喰の塗り替えと瓦の吹き替えが中心で、耐震補強も施す。工事は3年以上要する予定。
 大修理目前の来年は姫路城が完成して400年目、世界文化遺産登録15周年の節目にあたる年で、姫路城周辺では、全国からお菓子に関するあらゆるものや情報が一堂に会する「姫路菓子博2008」が2008年4月18日〜5月11日に開催される。

問合せ先:姫路市広報課
電話:0792−21−2125
URL:http://www.city.himeji.hyogo.jp/



「大阪そのものが宝物」在関西外国人が関西の魅力を発信―21世紀ジャーナリストフォーラム

関西プレスクラブ、関西広報センター(KIPPO)、大阪国際交流センターが共催する恒例の第13回ジャーナリストフォーラムが11月7日、同交流センターで開かれた。大阪、京都、神戸などで活躍する4人の外国人パネリストが、関西人が見落としがちな地元の魅力を熱弁し、約130人の参加者に「日本人は歴史ある日本文化の素晴らしさに気づいていない。もっと自信を持って」とアピールした。
 フォーラムでは黒田勇・関西大学社会学部長が基調講演し「メディアはステレオタイプ化された関西人・大阪人のイメージを意図的に発信している」などと指摘。
 その後、道浦俊彦・読売テレビアナウンサーの司会で英語落語家のダイアン吉日さん▽J・カーペンター同志社女子大教授▽C・スティヴンズ関西タイムアウト編集長▽壁画家のH・マシューさんが、それぞれの関西体験をもとに討論。
 数カ月ないし数年の滞在予定から関西定住に至った4人の関西論に参加者も納得顔。「大阪の何がではなく、大阪そのものが宝物」との意見に、会場から思わず拍手が起きていた。(田原)



Historic Kansai:安らぎを求めて広がった晴明信仰≠フあれこれ

いつもは宗教に無関心にみえる日本人も年末年始には神社仏閣にお参りすることが多い。さて、日本の宗教活動には縁がないものの、歩きまわるのは苦にならないという向きは、いちど、「この近くにアベノセイメイさんのお社はありますか」などと尋ねて歩いてはどうだろう。すると、「ああ、すぐそこに」という、思いがけない発見があるかもしれない。
 「安倍晴明」は実在の人物。高貴な家の子孫で921年生まれ1005年没。公的な記録はわずかだが、史上まれな腕前の陰陽師であったとされて、その生涯は神秘的な伝説に彩られる存在になった。
 古代中国に、万物は陰陽によって生じるという説があった。陰と陽によって天地の異変や、人事の吉凶などを予知したり、左右することもできる。それを受け入れた古代日本でも政治に生かそうと役所を設け、陰陽師が生まれた。晴明はそのひとりだった。
 陰陽師・晴明は超能力によって、恵まれない人を救い、悪いものをこらしめた。その目をみはるような言動は、口伝や歌舞伎などに伝承されてふくらんでいった。
 これらは合理主義の観点からみれば根拠のないことと切り捨てられそうだが、人々が晴明によって、安らぎを得たい、という願いからだ、と解釈すれば納得できる。
 いわば、晴明信仰ともいえるものが民衆のあいだに生まれたのである。晴明ゆかりの地が、ひとつしかないはずの生誕地でさえ、各地に複数、存在するのも同じ理由からであろう。21世紀の今も、美男子・晴明が活躍する映画やテレビドラマが絶えず制作されている。
 17世紀末にオランダ船の医師として来日したドイツ人博物学者エンゲルベルト・ケンペル(1651年〜1716年)や、19世紀末から20世紀初頭にかけ日本の山々を探索した登山家ウオルター・ウエストン(1861年〜1940年)も晴明に関心をよせ、著作で触れている。
 あてもなく歩くより、なにか手がかりがほしい、という向きは、京都の晴明神社へどうぞ。京都市上京区堀川通一条上ル晴明町。晴明の念力で湧き出したという井戸がある。
 ついでにひとこと。神社近くの小さな橋「戻橋」には――晴明伝説とはかかわりないが――昔この橋を渡った死者が息を吹き返した、という伝説を持つ。
 それにちなんでか、第2次世界大戦中「ここを渡れば生きて帰ることができる」という話がひろまり、若者たちが戦場へ向かう前に渡った、という切ない話も残っている。(田中準造)



Kansai in Focus: 英字誌「関西タイムアウト」は 編集長スティヴンズさんの研ぎすまされたセンスで…

おたがい、住まいが近い。「なら、待ち合わせ場所は阪神間の私鉄駅にしましょうか」と。で、ホームから見ると、まわりの木々が色づき始めている。でも、もう一つ、色がさえない。猛暑の影響か。曇りのせいか。思いをめぐらせていると、頭の上から「今日はお世話になります」と、声が降って来た。長身、色白、秀才タイプ。英文の総合情報誌(月刊)「関西タイムアウト」の編集長、クリストファー・スティヴンズさん(43)=写真=だった。さきごろ、大阪市内で開かれた「ジャーナリストフォーラム2007」で関西の現状と未来について熱弁を振るった気鋭のジャーナリストである。駅前の喫茶店に入った。
 「A4判、70ページ、発行部数は1万部です」。スタッフは数人しかいないという。これはすごい。日がわり弁当のように創刊廃刊を繰り返している出版業界で、この雑誌はたくましく30年も生きつづけている。「ユニークで一味違った情報を掲載するよう心がけています」。長年、日本に住んでいる外国人は、ありきたりの生活情報やイベントガイドでは満足しない。お祭りを紹介するにしても、その源流から現在にいたるまでの系譜をたどり、歴史の中に踏み込んでいきたいというロマンを求めている。音楽好きの若者にはディスクジョッキー担当者が記事の中から巧みに話しかける。要するに深みのある記事、斬新な切り口、手法で良質な情報を届ける…となると、編集者は高度な知識、研ぎすまされたセンスが必要になる。この雑誌は、その条件をみたしている。
 スティヴンズさんの名物コラム「jitsu wa」の一例。「日々という言葉の〈々〉を何と呼ぶかご存知か? 踊り字というのです」。これは日本人もあまり知らない。
 米カリフォルニア州出身。「母親が大の日本好きで、家にはダルマ、マネキネコなどが飾ってありました」。カリフォルニア州立大で英米文学を専攻。「でも、英訳の源氏物語、川端康成の雪国、それに三島、谷崎文学などを読みふけっていました」。85年来日。関西各地で英会話教師などをつとめ、10年前、今の仕事についた。
 実はスティヴンズさんには、いくつもの顔がある。美術評論家、美術関係の翻訳家、大学講師。主要訳書『具体ってなんだ?……』は、芦屋から世界に広がった「具体美術」を論及した書籍として知られている。
 「頭髪やヒゲを半分刈った前衛芸術家が東欧ハンガリ(半刈)でアクションアートを演出したことがあります。〈紙破りパフォーマンス〉として、何枚も重ね合わせたフスマ紙を体当たりで突き破る。その時の大きな音…」。目が輝いて来た。話は尽きない。「じゃ、わたしはここから歩いて帰ります。10分くらいですから」。あたりはもう暗くなっていた。(大森)