09年度予算案の衆院通過で、経済政策の焦点は追加対策に移る。与党内では、事業規模20兆円程度の対策を09年度予算成立後、ただちに策定し、補正予算を早期に成立させるべきだという意見が強まっている。
政府も、官民一体の景気対策づくりに向け、各界横断的な有識者会議を創設することにしている。経済財政諮問会議と連携しつつ、景気浮揚に有効な施策を策定していこうというのだ。
27日発表された1月の鉱工業生産指数は前月比10%の大幅低下となった。雇用情勢も一段と厳しさを増している。消費者物価もデフレ傾向を呈してきている。景気の底割れを阻止し、反転の手掛かりをつかむためにも、政府の経済運営は決定的に重要である。
財政諮問会議の民間議員がワイズ・スペンディング(賢明な支出)という表現を使ったように、効果的、効率的な財政政策は不可欠ということである。それは、目先の需要喚起のみにとらわれるのではなく、新たな発展を用意するものでなければならない。
しかし、最近の与党内の議論がそうはなっていない。公共事業の大幅な前倒し執行や整備新幹線の建設促進など、従来型景気対策への回帰が起こっている。ばらまき型の経済対策への郷愁と言ってもいい。
従来型の公共事業による需要追加に問題が多いことは、これまでの公共事業改革の中でも確認してきたはずだ。それに基づき、ここ数年、公共事業予算の削減が行われてきた。この原則は好況、不況にかかわりなくあてはまることだ。
公共事業の削減が地域経済に打撃になっていることは事実だ。だからといって、かつての姿に戻ることは間違いである。さらに、公共事業への回帰が総選挙を意識した動きだとすれば看過できない。
地域振興や地域再生は公共事業に頼らない別の道を通じて行われるべきだ。そうした先進事例は少なくない。地域資源の活用などを軸にした内発型の地域振興が好例だ。
同時に、地域自立のための社会資本整備は必要だが、これは景気対策とは別だ。しかも、地域規模の事業は大がかりではない。
ところが、与党は、整備新幹線など大規模な事業を先行して実施することで、景気テコ入れをという思惑のようだ。こうした開発主義への回帰は許されない。
また、設備投資減税も需要減少で設備稼働率が大きく低下している時に効果があるのか疑問が残る。個人消費支援の所得税減税は政策として筋は通っているが、抜本改正との関係を明確にしておく必要がある。
このように、与党が議論中の追加対策には問題が多い。景気対策には与野党とも異論はない。参院での予算審議では与野党での政策論争を深めるべきだ。
毎日新聞 2009年2月28日 東京朝刊