日本の主力産業である自動車や家電、電子部品に関連する企業の生産ラインは、現在、おしなべて50%程度の低い稼働率にとどまっている。米国の金融危機は世界各地へ飛び火し、同時不況へと突入。時がたつにつれて悪化している。消費の減退は工場の稼働率低下を招き、設備投資の意欲をなえさせる。企業活動は、守りの姿勢になった。
だんだんと深まる不況感は、市場における急速な在庫整理と、生産現場における人員整理の結果だ。しかし、在庫整理を中心とした生産調整も、3〜4月で底を打ち、やがて緩やかに回復へ向かうはずだ。稼働率は最盛期の80%程度といったところだろうが、世界同時不況といえども、必ず回復する。
なぜなら、衣食住や家電、自動車には、買い替え需要というものがあるからだ。さらに米国や中国のような国々は、今後も人口増や経済成長に伴って市場が拡大する。世界の潜在的な需要を背景に、景気は回復することだろう。そして、回復と同時に厳しい企業間競争が幕を開ける。新しい技術やビジネスモデルを競い合う。
目先の不況に目を奪われ、じっと景気回復を待っているだけでは、不況の沼からの脱出は難しい。世界中の企業が同時に不況の沼に沈んだが、抜け出すときまで一緒とは限らない。
オバマ米大統領は、グリーン・ニューディール政策を掲げた。省エネ、省資源、地球環境の改善。この三つは、景気回復期に企業を復活させる推進エンジンのキーワードだ。不況は現在進行形だが、いまは次に備える大切な時期。それなのに、日本の政治はどうか。不況対策は絵に描いた餅。失った10年を繰り返すつもりなのか。(樹)