HOME > Topics
「第7回 大学進学のためのワンデーセミナー2008」開催される
 平成20年6月14日(土)に、進路指導部主催の「第7回 大学進学のためのワンデーセミナー2008」が開催されました。 今年も全国の大学から豪華な講師の方々がお集まりくださりました。高校生は知的好奇心を大いに刺激され、充実した一日を過ごせたようです。 以下に、講義内容と生徒の感想を紹介します。

招致大学 招致学部 招致講師 テーマ
@筑波大学 日本語・日本文化学類 小口千明教授 「日本人が好む海岸風景とは
  −人々の思考に着目した地理学的文化論−」
A東京大学 理学部 須藤靖教授 「夜空の向こうの物理学」
B大阪大学 基礎工学部 新井健生教授 「ロボット工学入門−ロボットの現在と未来−」
C大阪大学 理学部 野末泰夫教授 「ナノと物性『スーパーアトムと強磁性』」
D高知大学 理学部 近藤康生教授 「古生物学入門:二枚貝が見た地球史」
E北里大学 薬学部 伊藤智夫教授 「チーム医療と薬剤師
   /飲んだ薬は身体の中でどうなるのか?」
F慶應義塾大学 経済学部 塩澤修平教授(学部長) 「経済理論の役割」
G中央大学 法学部 橋本基弘教授 「法を学ぶとはどういうことか
   −国籍法違憲判決を題材にして考える−」
H法政大学 グローバル教養学部 小堀真知子准教授 「初等英語教育入門」
I武蔵工業大学 工学部 原昭夫非常勤講師 「まちづくり・地域づくり・風景づくり
            −みんなで環境をつくる−」
J明治大学 経営学部 大石芳裕教授 「マーケティング戦略−ブランド−」
K早稲田大学 文学部 小田島恒志教授 「演劇の翻訳を通して見る英米文化」
L関西大学 社会学部 黒田勇教授(学部長) 「メディア社会の現在」
M関西学院大学 文学部 後藤裕加子准教授 「イスラム帝国の繁栄と紙の文化史」
N同志社大学 スポーツ健康科学部 石倉忠夫准教授 「明日のために!〜スポーツの目標設定法〜」
O高知工科大学 マネジメント学部 平野真教授 「地域のユニークな元気企業の紹介」

@ 筑波大学 日本語・日本文化学類 小口千明教授
     『日本人が好む海岸風景とは−人々の思考に着目した地理学的文化論−』
《講義内容》
 「大学で学ぶということは、自分で問題を見つけて、その問題を解く方法を自分で考えること。」「当たり前だと思って見過ごしてしまう姿勢を打ち破ることが大切である。」 など大学で学ぶとはどういうことかを、小口先生の研究テーマに沿った様々なエピソードを通して分かりやすく教えてくださった。 生徒たちも文系分野の学問の奥の深さに驚き、メモを取りながら熱心に聞き入っていた。(小味和代)
《生徒の感想》
 「日本人の文化や価値観というものに昔から興味があったので、この講義を受講しました。 文系の講義のはずが、海水浴を例に挙げ、人の価値観が変わっていく過程を筋道立てて解明していった過程はまるで理系の授業のようで、理系の私もとても面白く感じた。 『当たり前と思っていることにも実は思いがけない歴史がある。』という小口先生の言葉を実感することができ、大学での研究にますます憧れてしまう講義だった。」(高3)
 「僕が今回、最も驚いたのは「明治時代まで、日本人には海水浴という習慣はなかった!」ということだ。しかも最初は病気の治療法として紹介された海水浴。 それに鉄道を普及させたい政府が目をつけ、一気に民衆に普及させていったというから驚きだ。 自分たちにとって、あまりにも当たり前の風習が、一部の人間の意図によって作られたということが面白かった。 他にもどんな風習がどんな意図で作られたのか、知りたくなった。」(高1)

A 東京大学 理学部 須藤靖教授 『夜空の向こうの物理学』
《講義内容》
 宇宙は何からできているのか?宇宙の大半を満たしているという正体不明の何か−『ダークエネルギー(見えない力)』−その謎が解ければ、21世紀の新しい宇宙像が打ちたてられるだろう…。 宇宙がテーマの講義であったが、その中で須藤先生は、「なぜだろう?」と考えることや、何か1つでもよいから「これだけは負けない」というもの(自信)を持つことの大切さを生徒に訴えておられた。(北川英里)
《生徒の感想》
 「真空と思っていた宇宙空間を満たす、正体不明・観測不可能なダークマター、ダークエネルギー。 これらは、宇宙の過去・現在・未来を知る上で、とても重要であるという。須藤先生は『大切なものは目には見えない。(見えないからこそ面白い。)』という言葉で講義を締めくくられた。 宇宙物理学を1つの手段として、大学へ進学しようとしている私たちに研究者としての心得を伝えようとしてくれている、そう思えた講義だった。」(高3)
 「世の中は不思議なことだらけである。学者たちがその不思議に気づき、それを研究することで世界は発展してきた。 不思議に思う心、その不思議を解き明かそうとする気持ちが、発展していく原動力になる。そう言いながら、須藤先生は夜空(宇宙)を熱く語った。 そういえば、幼い頃は、不思議だな、綺麗だなと見ていた夜空も、最近は意識的に見ることはなかった。久しぶりに夜空を眺めてみようと思った。」(高3)

B 大阪大学 基礎工学部 新井健生教授 『ロボット工学入門−ロボットの現在と未来』
《講義内容》
 ロボットの定義に始まり、現在活躍している、あるいは研究・開発されているロボットの紹介、そしてロボットの未来像についてまで、まさにロボットの過去・現在・未来について語っていただいた。 子どもの頃からアニメや映画で慣れ親しんでいるロボットについての話だったので、生徒も非常に熱心に聞き入っていた。 最後に「将来、ドラえもんのようなロボットは出来ますか?」という生徒からの質問に、笑いながらも丁寧に答えてくださった新井先生の姿が印象的であった。(宮本裕士)
《生徒の感想》
 「ロボットの研究・開発には様々な学問が関わっているという。 例えば、ヒトやクモなどの生物に似たロボットを作るには、その生物の性質・特徴を詳しく調べるため、生物学からの援助・協力が必要となる。 今までは、ロボット=工学部というイメージしかなかったが、自分が得意な分野からロボット開発に携わる方法を調べてみようと思う。」(高2)
 「ロボットとは何か。ロボットの定義は人によって異なるらしい。 今回の講義では、『人間や生物の形態や機能を持ち汎用性のあるもの』がロボットとされたが、自動掃除機なども考えようによってはロボットだという。 自分にとってのロボットは、やはり鉄腕アトムである。しかし、新井先生は、アトム誕生は現状では難しいと言う。 よし、阪大の基礎工学部に入学して、アトム誕生を目指そうかな。」(高1)

C 大阪大学 理学部 野末泰夫教授 『ナノと物性「スーパーアトムと強磁性」』
《講義内容》
 「勉強は、何が釣れるか分からない魚釣りに似ている。」「分からないところにこそ魅力がある。これからの講義は分からないはず、しかし、それでよい。」 「私は世界で1つしかないものを釣りあげることができたのかも…。」穏やかな語り口でスーパーアトム、最先端物性物理学への誘いが始まった。 高校化学の復習から最先端の物性物理学まで、光電効果、電子の波動性、不確定原理、量子力学などをキーワードに、 「もし、狭い空間に数個の電子を閉じ込めたらどうなるか?」等の素朴な疑問・アイデアから、多様性に満ちたナノ領域を解明していく興奮の連続であった。(杉田洋)
《生徒の感想》
 「大学の勉強・研究は、今の僕たちの勉強とは違って、答えも解き方も分からない問題を、いろいろ試行錯誤しながら解いていく作業なのだ。 野末先生が大学で行っているというスーパーアトムの研究の話を聴いて、その試行錯誤がとても面白そうに思えた。」(高2)
 「目では到底見ることができないナノメートル(10億分の1メートル)の世界。そんな世界の科学など私には関係ないと思っていた。 しかし、ゼオライトと呼ばれる物質によって、私の日常に深く関係していたことを教えてもらった。 例えば、石鹸、洗顔剤、猫のトイレ(砂場)、アイシャドウなど…。理系を志す者として、身の回りに使われている科学について全く知らなかったのは恥ずかしい。 少し、自分でも調べてみようと思った。」(高1)

D 高知大学 理学部 近藤康生教授 『古生物学入門:二枚貝が見た地球史』
《講義内容》
 ルディストやツツガキといった珍しい形の二枚貝の化石に生徒たちは興味深々。 なぜ、同じ二枚貝でも様々な形をしているのか? 近藤先生は、二枚貝を例に生物の進化について講義をされた。 元々は同じ貝でも、長い年月の中で、天候や生息地、捕食者などが変わり…、変化していく環境に適応するため形態を変えていき、 あるときは絶滅し、あるときは新たな種として生まれ変わる。 本物の化石を手に、その化石が生きていた時代に想いをはせる生徒の姿が印象的であった。(濱田里佳)
《生徒の感想》
 「今までは、生物の形に理由など求めたことはなかった。しかし、今回の講義を聞いて、生物の形は何らかの理由・目的があって進化した結果であることを知った。 様々な化石から、その生物が生きていた当時の環境を読み取り、生物の進化の謎に迫る古生物学に非常に興味を持てた。」(高3)
 「アサリやシジミなど、食べ物としてしかみたことがなかった二枚貝。彼らに何億年にも及ぶ進化の歴史があったなんて、当たり前だけど、これまで考えたこともなかった。 捕食者である魚などが進化すると、それに対抗するため貝も進化する。環境が変わって餌が少なくなると、それに合わせてまた進化する。進化には理由がある。 化石の形から、なぜそのような形になったのか、進化の理由を考える作業にすごく魅力を感じた。」(高2)

E 北里大学 薬学部 伊藤智夫教授 『チーム医療と薬剤師/飲んだ薬は身体の中でどうなるのか?』
《講義内容》
 2部構成の講義で、前半は薬剤師が果たす役割の具体的な説明と、災害時医療やがんプロフェッショナル養成プランなどの来た里大学でのチーム医療教育実践例の紹介をしてくださった。 後半では、薬による服用回数のちがいや効果の個人差や薬の飲み合わせなど、誰もが抱く疑問について、分かりやすく説明してくださった。 また、現在、伊藤先生のチームが精力的に研究・開発している薬物輸送担体についても紹介してくださった。 高校生向けに練られた素晴らしい講義で、生徒は熱心にメモを取り続けていた。(安岡美架)
《生徒の感想》
 「テレビ番組の『世界一受けたい授業』みたいな講義でものすごく面白かった。 皮膚に張ると心臓発作を抑えることができる薬の話や、薬を飲む回数を減らすことを可能にしたカプセルの話、遺伝子を調べることで個人専用の薬をつくる話など、 知らないことばかりで興味深かった。また、グレープフルーツジュースで薬を飲むと、死に至ることがあるという話も驚きだった。来年もこんな面白い講義を受けたいと思う。」(高1)
 「講義の中で、生物の授業で習ったばかりのDNAの塩基配列や鎌状赤血球に関係することが出てきた。 今、高校で習っていることが大学でも役に立つということが、改めて分かった。 受験だけでなく、その後のことも考えて、やっぱり授業には真剣に取り組もうと決意を新たにした。」(高2)

F 慶應義塾大学 経済学部 塩澤修平教授(学部長) 『経済理論の役割』
《講義内容》
 経済学とは何かから、経済理論の役割についてまでお話してくださった。 具体的な法律をいくつか例として取り上げ、その法律が社会に与える影響を経済理論に基づいて分析し、説明してくださった。 実際に大学で行っている授業さながらの講義に、生徒たちも緊張した面持ちで聞き入っていた。(田村和美)
《生徒の感想》
 「塩澤先生が教えてくれた経済学は、私が考えていたものと全く違っていた。数学を駆使して、社会の制度や法律がうまく機能しているかを解析していく経済学。 文系の私にとって受験科目でしかなかった数学の面白い使い方を知ることができた。将来、経済学に進むかはまだ分からないが、受験の先を考えて数学もがんばってみようと思う。」(高3)
 「『人間の本性に反する試みは、意図が立派でも成り立たない。』と言いながら、塩澤先生は経済理論に基づき『ノーカーデー』の有効性を否定した。 直感に頼って決断すると、本来の目的とは異なる結果を生んでしまう。それを防ぐために経済理論は必要だという。 ということは、法や制度を決断する人になるには経済理論を知っている必要があるということだ。将来、勉強しなければならない分野が、また1つ増えた。」(高1)

G 中央大学 法学部 橋本基弘教授 『法を学ぶとはどういうことか−国籍法違憲判決を題材にして考える−』
《講義内容》
 「法律学は法律を覚えたり理屈を学んだりする学問で難しそう」というイメージを持つ生徒が多い。橋本先生は、生徒が持つこのようなイメージを変えるべく講義をしてくださった。 法律学とは法を通して人間とは何かを考える学問であり、他人の立場に立って考えること、その人の痛みを感じることが大切であるという。 先日、最高裁が下した国籍法違憲判決を題材に、法とは何か、人間とは何かを考えさせられた、非常に有意義な70分であった。(滝石裕二)
《生徒の感想》
 「秩序ある社会を維持するために法は必要である。しかし、人間がつくったものだから間違いはある。間違いに気がついたら、直していけばいい。 先日の国籍法違憲判決には、法に携わる人間としての正義があった。 橋本先生が私たちに言った『法律に携わる人間には、自分の正義を信じ貫く姿勢が必要である。』という言葉は、先生の決意のようにも感じられた。」
(高2)
 「僕は今まで、法学部は弁護士や裁判官になりたい人が行くところだと、六法全書など難しい法律を延々と理解し覚えるところだと思っていた。 しかし、橋本先生によると、法学を学ぶとは、“Legal mind”という考え方、つまり、法律という理屈で物事を考える能力を身につけるところだという。 自分が持っている大学や学部のイメージがいかに間違っているかに気づかせてもらった。」(高1)

H 法政大学 グローバル教養学部 小堀真知子准教授 『初等英語教育入門』
《講義内容》
 小堀先生は、東欧、特にウクライナの小学校で実際に行われている英語教育を例に、第2外国語としての英語初等教育を紹介し、体験させてくださった。 文法体系から第2外国語を学習していく日本の授業と違い、生徒が楽しめる歌、踊りなどのアクションを通して言語を学習する東欧の授業は、生徒にとって非常に新鮮だったようだ。 今回の講演は、大学入試のための英語ではなく、その後にある英語学習の 目的を生徒各自が確立していく上で、とてもよい機会になったと確信している。
(岸本清子)
《生徒の感想》
 「“Why do you want to learn English? ”小堀先生が私たちに一番伝えたかったことは、この質問に全てこめられているのではないかと思う。 ビデオの中で、外国の子どもたちが積極的に、また失敗を恐れずに英語の歌や踊りに挑戦している姿をみて、うらやましく、また恥ずかしく感じた。 『なぜ勉強するのか。』この問いへの答えをみつけて、私も主体的に学んでいきたい。」(高3)
 「最近、ニュースや新聞などで、今以上に小学校から英語教育を取り入れるべきという国の方針を知った。 幼いころから英語をしなくてもいいのではと疑問に思っていたが、小堀先生の講義によって国の方針に納得した。 子どもは間違えることへの恐怖心や照れなど無しに英語に挑戦できるのだ。 英語を嫌いにならずに確実に身につけさせる方法を研究することは、子どもの、ひいては国の将来にとって大事なことだと感じた。」(高2)

I 武蔵工業大学 工学部 原昭夫非常勤講師 『まちづくり・地域づくり・風景づくり−みんなで環境をつくる−』
《講義内容》
 まちづくり・地域づくり・風景づくり、すなわち都市計画について、その目標や可能性について講義していただいた。 都市計画は、都市において生じる様々な問題を解決すること、住民の夢や理想を実現することを目標に立案されなければならない。 例えば、日本において大きな問題となっている人口減少(出生率の低下)や地方都市の衰退、 また全世界的な問題である環境問題等を解決させるためにはどのような都市計画を立案するべきなのか? スライドに映し出された実際の街の風景を眺めながら、自分たちの街の将来について真剣に考える生徒の姿が印象的であった。(小松重哉)
《生徒の感想》
 「『まち』をつくり守っているのは役人だと思っていたが、実は自分たちだった。 自分の身のまわりのことに関心を持つことが、自分の住んでいる『まち』をよりよく変え、 様々な問題を解決していく第1歩だという原先生の考え方は、自分にとってすごく新鮮だった。 今日からは、登下校のとき、音楽を聴いたりせず、“まち”に目を向け、耳を傾けてみようと思う。」(高3)
 「地震などの災害が起こり破壊された街の風景をスライドで見せてくれた。 将来起こりうる災害に対して何の対策もない無計画な街づくりが、いかに悲惨な結果を生むかが分かり少し怖くなった。 講義の後、学校の窓から高知の街を眺めていると、住宅や田畑、工場、幹線道路の分布がよく分かることに気がついた。 たまに、みんなで高いところから街を眺めるのも、防災という街づくりに役立つような気がした。」(高1)

J 明治大学 経営学部 大石芳裕教授 『マーケティング戦略−ブランド−』
《講義内容》
 「少し高いけど○×社製の製品を買おう」、これがブランドの力。現在、企業はブランドをつくるためにマーケティングに力を入れているという。 大石先生は、資生堂の「TSUBAKI」を例に、マーケティングとブランドについての講義してくださった。 テレビのCMでよく見かけるブランドについての話だっただけに、生徒たちは強い関心を示し、 大石先生が分かりやすく丁寧に教えてくださる企業戦略の講義に聞き入っていた。(川崎律子)
《生徒の感想》
 「大学の講義は、将来何になるのかを念頭に行われるようだ。大石先生も、資生堂のシャンプー“TSUBAKI”のマーケティング戦略の成功を例にして、 企業人として成功する秘訣を教えてくださった。『日頃から様々なことを経験し、自分のセンスを磨くこと。』『自分の考えに強い信念を持ち続けられるようになること。』 どちらも一朝一夕にできることではないので、今から心がけようと思う。」(高3)
 「テレビでよくみる資生堂のシャンプー“TSUBAKI”のCM。なぜ、12人も女優(南海キャンディーズの静ちゃんを含む)が出てくるのか。 なぜ、SMAPの“Dear Woman”がCM曲に採用されたのか。身近な商品を例にブランドやマーケティングについて分かりやすく説明してくれた。 これからCMを見るときは、企業の戦略を考えてしまいそうだ。」(高1)

K 早稲田大学 文学部 小田島恒志教授 『演劇の翻訳を通して見る英米文化』
《講義内容》
 翻訳家として現在活躍中の小田島先生。「生活様式や宗教などの違いをどう表現するか。」「日本における上下関係を静養劇に自然に溶け込ませるにはどうすればよいか。」 など、西洋劇を日本語に訳す際の難しさ、注意点などを具体的な例を示しながら、ユーモアを交えて楽しく紹介してくださった。 小田島先生の講義に、生きた演劇をつくる翻訳家の情熱を生徒も感じとっていたようだった。(中村宏行)
《生徒の感想》
 「1つの解答しかない高等学校の英語とは異なり、その作品が書かれた国・時代の背景をふまえて訳者の解釈によって様々な訳を与えられる物語。 今回の講義を聞いて、『英語を日本語に訳す』ことが楽しいそうだと初めて思えた。 もちろん、今、学んでいる英語が翻訳の仕事の土台となることは疑う余地もないので、しっかり取り組んでいこうと思う。」(高3)
 「小田島先生は、高校の英語の授業では教えてくれない(?)英語の奥深さを語ってくれた。たとえば、“You are clever / handsome / rich.”などは、日本人としては誉め言葉に思うが、実は皮肉っぽいニュアンスを含む表現だという。 また、“Good night.”も、テストでは『おやすみ。』と訳すが、状況によっては『今夜の君は素晴らしかった。』というニュアンスになることもあるらしい。 他にどんな意外なニュアンスが隠れているのか興味を持った。嫌いな英語を好きになるきっかけにできるかもしれない。」(高1)

L 関西大学 社会学部 黒田勇教授(学部長) 『メディア社会の現在』
《講義内容》
 「関西人はせっかちである・・・。」我々の多くが抱いている固定観念である。しかし、それは真実なのかという疑問から授業が深められていった。 我々が様々な事象に抱く「ステレオタイプ」(決まりきったイメージ)は、メディアの情報によって形成されていることが多い。 事実、関西人の歩行速度が格別速いという結果はない。関西人を題材にすると面白いというマスコミの意図を我々の「ステレオタイプ」に反映させているのである。 メディアは現実を映す鏡とはいえないこと、映像は誰の視点で作られているかによって全く違うものとなること等、 身近にあるメディアについて大いに考えさせられる授業であった。(金本竜一)
《生徒の感想》
 「『メディアから与えられる情報は、ある意図に基づいて作られた情報であり、それらが全て真実とは限らない。』初めて聞いたわけではない文言。 『メディアが関西人のイメージを作った』という黒田先生の講演を聴いて、初めて納得することができた。自分もメディアの思い通りになっていたと思うと、ぞっとした。 メディアに流されないためには、どうするべきかを考えてみようと思う。」(高3)
 「テレビは本当のことだけを伝えてくれていると信じていたが、そうではないらしい。 番組は高視聴率をとることを最大の目標としてディレクターがつくるもので、そのため、情報に誤差が生じているという。 『情報を鵜呑みにするな』とよく言われるが、その注意に初めて納得することができた。」(高2)

M 関西学院大学 文学部 後藤裕加子准教授 『イスラム帝国の繁栄と紙の文化史』
《講義内容》
 751年のタラス河畔の戦いをきっかけに、中国からイスラーム帝国アッバース朝へ製紙法が伝わった。これは受験の世界史ベスト10に入る暗記事項である。 しかし、受験の世界史では製紙法がアッバース朝にどのように受け入れられ、帝国にどのような変化をもたらしたのかまでは考えない。 この問題への明確な解答を与えていただいたのが今回の講義であった。当時の資料を駆使し、受験世界史では知ることのできないアッバース朝の世界を生き生きと再現された後藤先生の講義に、 生徒は世界史の本当の面白さを感じたに違いない。(三島順子)
《生徒の感想》
 「高校2年生のときに世界史の授業で学習した『イスラム世界』についての講義だったので、とても楽しく聴くことができた。 今までは理屈なしに覚えていた紙の普及について、その背景が分かり興奮を覚えた。 また、紙の登場によって羊皮紙が衰退していった理由の1つを実験で示してくれたので、抵抗なく納得できた。 高校で習う『覚える世界史』とは違い、当時の背景を深く追求していく大学の世界史に強く憧れてしまった。」(高3)
 「後藤先生の講義で一番面白かったのは、イスラム帝国でも今の日本と同じく偽造が行われていたということだ。 管理する側の人間の考え方や行動は、時代や国に関係ないんだなと思った。 このような偽造を防ぐために羊皮紙に替わって『紙』が普及し、その結果、法が守られるようになり社会の秩序が安定し、文明が発展した…。 私たちが普段何気に使っている『紙』が、実は偉大なものだと知ることができて、本当に面白かった。」(高3)

N 同志社大学 スポーツ健康科学部 石倉忠夫准教授 『明日のために!〜スポーツの目標設定法』
《講義内容》
 こうなりたいという願望を目標として明確化することは、練習の質の向上、倦怠の回避、内発的動機づけやプライドの強化、満足感や自信の増加、三位(心・技・体)一体のバランスなどの効果をもたらす。 この効果は、スポーツだけでなく勉強など日常生活のあらゆる面に応用できるといい、欧米では既に注目されているという。 良い目標とは、結果(勝敗)ではなく、内容重視の現実的、具体的、短期的なものであるらしい。 また、目標を達成するには、その目標に向けての練習、自己分析、練習内容の見直し等、地味な作業を積み重ね、繰り返すことが鍵であると教えていただいた。 この講義を聴講した生徒が、講義の内容を勉強面に応用し、成績を伸ばしてくれることを期待したい。(山本宏和)
《生徒の感想》
 「スポーツや勉強など全てのことで能力を上げるには、モチベーションを持つことが一番重要であるという。 そのモチベーションを高める手段として、目標設定法を紹介してくれた。自己ベストの110%くらいのレベルで、実現する可能性が50%くらいの目標が良い目標という。 部活は既に引退したが、『あのようにすればよかったのか。』『あれが悪かったのか。』など、参考になることは多かった。 もう部活では役立てることはできないけど、受験勉強で今日の講義を役立てようと思う。」(高3)
 「自分は野球部に所属しているが、これからの練習に取り組む姿勢を考えるよいきっかけになった。 チームとしての目標、それぞれのポジションとしての目標、皆で話し合って、それぞれにとって最善の目標を見つけたい。 高校野球部員として自分に残された時間で、最高の成績を残せるようにがんばる。」(高2)

O 高知工科大学 マネジメント学部 平野真教授 『地域のユニークな元気企業の紹介』
《講義内容》
 『地域のユニークな元気企業の紹介』と題して、高知工科大学マネジメント学部の平野真教授に講演して頂いた。 グローバル化・一極集中化の時代に、地方が「勝つ」ためにどのような試みが行われているかについてお話してくださった。 当然のことながら、地方は大都市や大企業と同じ戦略では勝てないので、いかに地域の現状を逆手にとった事業を実践しているかということを、 「発想の転換」「マーケティング」「商品開発」「パッケージデザイン」など様々な視点から紹介してくださった。 最後に「コミュニケーション」と「ネットワーク作り」の重要性を挙げられた。講義内容は、我々の生活にも結びつく非常に興味深い内容であった。(井上貴太)
《生徒の感想》
「『現状を嘆くよりも、弱みを強みに変える発想の転換を試みるべきである。そうすれば、生き生き楽しく過ごせる。』平野先生が私たちに伝えたかったことは、このことだと思う。 人口減少、高齢化、所得の減少など暗い現実をみつめることから始まった講義に暗い気持ちになっていた。 しかし、高知の田舎でも大企業顔負けにがんばっている企業などの紹介に、すこしうれしくなり希望がもてた。私も、生きがいをもって楽しく暮らしていきたい。」(高2)
 「過疎や高齢化に悩む地方でも、その地域の特徴を生かしたユニークな商品を作ることで大企業なみの成功を収めることができる。 しかし、成功するためには、アイデアを出す人、知識や技術を指導する人、実際に動く人など多くの人が、そして、その人と人とのつながり全体を管理・運営する人が必要であるという。 私もいつか地元の人たちと笑顔で働けるように、人と人を繋ぎ活かす能力、マネジメントについて学びたいと思った。」(高1)
 
〒780-8026 高知県高知市北中山85番地 Tel.088-831-1717(代表) Fax.088-831-1573
COPYRIGHT (C) 学校法人 土佐塾高等学校 All Rights Reserved.
当サイト内で提供される全ての表示物を、権利者の許可無く転載・転用することはできません。