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「過ち犯した」グリーンスパン氏認める 「マエストロ」の面影なく (1/2ページ)
【ワシントン=渡辺浩生】巧みな金融政策のかじ取りから「マエストロ」(巨匠)の異名をもとったグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長が、低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発した金融危機を招いたことへの自らの“過失”を認めた。金融危機の「戦犯」に数えられ、「過ちを犯した」と語る同氏の凋落ぶりは、規制緩和とグローバリズムによって世界経済を席巻した米国流市場主義が、大きな曲がり角にあることを象徴しているようだ。
23日、下院政府改革委員会の公聴会。証言に立ったグリーンスパン氏に、もはや「巨匠」の面影はなかった。かつて議会証言は同氏の独擅場だった。難解な言葉を多用し議員をけむに巻き、市場はそのメッセージの解読に必死になった。
グリーンスパン氏は金融危機を「1世紀に一度の津波」と表現し、自身の予想を超えた市場の大混乱に「ショックを受けた」と釈明を続けた。だが、議員は「危機につながった無責任な融資慣行をやめさせる権限があったはずだ」と、容赦のない質問を浴びせる。やがてグリーンスパン氏も認めた。
「金融機関が自己利益を追求すれば、株主を最大限に守ることになると考えていた。私は過ちを犯した」
これは規制や政府介入を緩め市場の自由に任せるという、自身と1980年代以降の米国が信望してきた経済理念の「欠陥」をも認めたに等しい発言だ。
レーガン政権下の87年、議長に就任し、ブラックマンデー(株価大暴落)やアジア通貨危機、大型ヘッジファンドの破(は)綻(たん)など数々の金融危機を乗り切り、高成長を主導してきた。2004年にはブッシュ大統領から歴代最多の5期目の指名を受け、ホワイトハウスの信頼を勝ち得てきた。
特筆されるのは、IT(情報技術)バブルの崩壊後、景気急減速を食い止めるために01年1月から段階的に実施した金融緩和策だ。この年9月の米中枢同時テロを受け利下げのペースを速め、03年6月には1・0%まで引き下げた。