需要を増やせばいいか、供給を改善すればいいか?
( i.e. 家庭に補助金を出せばいいか、研究開発に援助すればいいか?)
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「エコのために太陽光発電を増やそう」
という風潮がある。
これに対して私は反対して、次の立場を取った。
「増やすか増やさないかよりも、増やせるか増やせないかが重要だ」
つまり、「できもしないことを望むよりは、できることを高めよ」ということだ。(金で強引に実現するのではなく、技術で実現できるようにせよ、ということ。)
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この問題は、太陽電池について言えば、
「需要を増やすか、供給を改善するか」
という問題になる。(補助金で強引に需要を増やすのではなく、技術でコストダウンをせよ、ということ。)
しかるに政府やマスコミは、その逆の方針を取る。つまり、
「太陽電池を増やすために、需要を増やせ」
と。たとえば、購入者への補助金だ。
しかし、それでいいのか? 需要を増やすよりも、供給を改善するべきではないのか?
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これに関して、具体的な話題がニュースになった。次のことだ。(一部抜粋。)
太陽電池市場で、半導体製造装置メーカーが主役となっている。ノウハウがない新興企業などに対し、装置を丸ごと納入し、太陽電池メーカーに変身させている。記事はこう述べて、事例を示す。装置メーカーが、新興国(台湾・中国・韓国)の企業に装置一式を売却して、太陽電池メーカーを続々と誕生させているという。
もともとは太陽電池メーカーが主導して装置を設計し、半導体製造装置メーカーに発注していた。ところが、今後世界で装置ビジネスを展開できるのは「供給とサポートの力がある装置メーカーだけ」と言われる。
( → 朝日・朝刊・経済面 2009-02-18 。ネット上にはない。)
つまり、 装置も技術も労働者育成も、装置メーカーがすべて準備してくれる、というわけ。馬鹿でもチョンでも、(金さえあれば)太陽光発電の事業者になれるわけだ。太陽電池の製造の設備を金で買えるから。
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以上を見て思い出すのは、パソコン産業の例だ。
「パソコン産業は最先端産業だから重要だ」
というふうに政府もマスコミも叫んだ。しかし現実には、パソコン産業はただの「部品組み立て産業」と化してしまっている。工場は台湾や中国が主役だ。
その一方で、ステッパー産業や、シリコン・ウェーハー産業などの装置産業は、高度な技術を要するものとして、日本などの先進国が独占している。途上国はこの分野では、歯が立たない。
どちらも「ハイテクな IT企業」と見なされがちだが、実は、ただの組み立て産業と、装置産業とは、まるきり違うわけだ。
( ※ 具体的な例を言うと、キヤノンがある。キヤノンはもともと INNOVA というブランドでパソコンを生産していたが、いつまでたっても赤字なので、パソコン部門を廃止した。同時に、ステッパー部門は重視した。……ひるがえって、他の大手メーカーは、当時からずっとパソコンを生産しているが、ほとんど採算に乗っていない。そのうち撤退するメーカーも出てきそうだ。)
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では、太陽電池では、どうか?
政府は「太陽電池の購入者に補助金を出す」という政策を取る。なるほど、そうすれば、太陽電池のメーカーは潤う。そのおかげで、太陽電池メーカーは「商売になる」と喜ぶだろう。(そのメーカーは、途上国や日本のメーカーだ。)
しかし、そんなことでいいのか? その間に、まともな国は、装置産業の育成に開発費をつぎこむはずだ。(これは私の推進する「技術育成」に相当する。)
たとえば、米国がそうしたとしよう。米国が優れた装置産業を育成する。そのあと、日本は、他の途上国といっしょに、米国の装置産業から高度な装置を輸入して、太陽電池を生産する。すると、
「太陽電池をいっぱい生産できてすばらしい」
と思う人が多いだろうが、この産業はただの低レベルな労働集約産業にすぎない。パソコンの組み立て産業と同じである。できた製品はハイテクだが、生産する過程はただの労働集約産業。
このような組み立て産業は、低レベルの産業になる。当然、低レベルの賃金しかもらえない。
その一方で、米国の企業は、独自技術のハイレベルな製品を日本や途上国に売りつけて、ボロ儲けする。米国企業は装置を馬鹿高値で売りつけて大儲けをして、日本や途上国は、装置を米国から馬鹿高値で購入して、青息吐息になるわけだ。
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以上からわかるだろう。
パソコンであれ太陽電池であれ、大事なのは、工場で生産する量ではなく、技術開発だ。
そして、技術開発のためには、需要への補助金で需要を増やせばいいのではなく、開発への補助金で技術開発を高めるべきなのだ。
つまり、「需要を増やすために補助金を」という政策は、やるべきこととは正反対の方針となっている。愚劣。
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結局、私としては、次のことをお勧めする。
日本は、太陽電池そのものは生産しないで、太陽電池を生産するための設備を生産する。そのための高度な技術開発を行なう。つまり、装置産業が成長するようにする。
その一方で、太陽電池の生産は、特に熱心にやらない。やるならば、途上国の企業との合弁事業の形にして、リスクを回避する。(どうせ将来的には、途上国の企業には勝てないからだ。マザーボードや HDD と同様。)( → 参考記事「液晶生産設備を中国に」 )
また、太陽光発電の普及のための補助金は、一切出さないでいい。普及なんて、ただの金食い虫であって、(名誉以外に)何の意味もないのだから、ドイツあたりに任せる。
結局、こうだ。
ドイツは莫大な補助金を出して、太陽光発電の数を増やせばいい。
その間、ドイツ国民の出した補助金で、ドイツの企業のかわりに、台湾企業が儲かる。(台湾あたりが太陽光発電のパネルをドイツに売却する。ドイツはそれ大量に購入する。)
そして、その台湾企業に、日本は装置を高値でどんどん輸出すればいい。( intel が CPU を高値で売りつけるようなもの。)
ドイツや途上国は、カモになりたがっているのだから、カモにしてあげればいいのだ。日本はカモを食い物にすればいいのだ。それが賢明な先進国のやるべきことだ。
( ※ 一方、現状では、「普及のために補助金を出せ」という政策。あえてカモになりたがる政策。よほど食い物にされたいらしい。)
まとめ。
コンピュータ産業で重要なのは、たくさんのコンピュータを生産する会社( Dell や HP の下請けである途上国の会社)ではなくて、コンピュータの基幹部品や装置を製造する会社である。(ステッパーメーカーなど。)
太陽光発電産業で重要なのは、太陽光発電をする事業者(電力会社)でもなく、太陽電池を生産する会社(シャープなど)でもなく、太陽電池の製造装置を開発する会社である。(シャープで言えば社内の基礎開発部門。他にも有名でないが先端技術をもつ会社がいろいろとある。)
【 参考 】
関連情報として、ネット上の記事を示す。
現在の主流である結晶系の太陽電池は、すでに参入企業が世界で200社を超えた。「結晶系の太陽電池に関して言えば、設備の投資負担が比較的に軽いうえ、ずいぶん前から専用の製造装置も市販されている。単に作るという意味では、もはや結晶系太陽電池の参入障壁は消えたに等しい」上の最後では、
AMATやアルバックをはじめとする半導体・液晶装置メーカーの本格参入により、その薄膜太陽電池の一貫製造ラインが、早くも世の中に出回り始めたのである。次世代の薄膜まで市販の装置で簡単に作れてしまうなら、日本の太陽電池メーカーにとって、今後の差異化による反撃のチャンスは狭まる。
勢力を増す海外の新興専業メーカー、大手装置メーカーの本格参戦、そして目の前に迫りつつある壮絶なコスト競争――。冷静に眺めれば眺めるほど、日本の太陽電池産業を取り巻く環境は厳しい。はたして、日本勢はこの強烈な逆風を乗り越え、勝ち残ることができるのか。
( → 東洋経済 )
「日本勢はこの強烈な逆風を乗り越え、勝ち残ることができるのか。」
という質問がある。それに対する回答は、何か? 技術革新か? それとも、国の補助金か? (^^);
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なお、本項の話から得られる予想として、次の予想がある。
「日本は、太陽光発電の開発で、最終的には敗北するかもしれない。なぜなら、供給よりも需要を重視するからだ。日本は需要を重視するから、需要国になる。一方、諸外国は、供給を重視するから、供給国となる」
「ただし、必ずしもそうとも言えない。国の力に頼らずとも、民間企業が自力で頑張るからだ。その例がアルバックだ。この会社は装置を外販することで、急成長しそうだ。」
「一方、シャープは、装置を外販しないようなので、需要が自社需要に限られている。この分だと、あと数年で最前線から脱落するだろう」
パイオニアは、かつてはレーザーディスクでトップだったが、今では没落している。事業撤退。……将来のシャープは、現在のパイオニアか。
( ※ シャープは、装置産業として生き延びようとするならば前途洋々だが、外販せずに自社生産だけにこだわるようだと、お先は暗いね。堺市の自社工場建設なんかに夢中になっているようでは、数年後には工場が時代遅れになって、途上国の新鋭工場に完全敗北して、工場がスクラップになるだろう。……ま、スクラップにする前に、中国に売却するつもりかも。それでも、巨額赤字を出しそうだ。)
[ 付記1 ]
「需要を増やすか、供給を改善するか」
ということ。これは、比喩的に言えば、
「好きな女を得たいとき、札束で強引に女の心を買おうとするか、自分が彼女に愛される男になろうとするか」
ということだ。(ちょっと違うかな? (^^); )
もうちょっと正確に言えば、
「月への旅行を実現するためには、補助金をたっぷり注入して月ロケットの料金を値下げすればいいのではなく、月ロケットのコストダウンをするように技術開発をすることが大事だ」
ということだ。
とにかく、太陽光発電であれ、月への旅行であれ、
「補助金で赤字を埋めるよりも、技術開発でコストダウンを」
というのが、私の主張だ。
[ 付記2 ]
現状はどうかというと、巨額の補助金を出している。太陽光発電システムを購入した国民に補助金を出すこともあるが、太陽光発電のメーカーに補助金を出すこともある。こちらはすごく巨額だ。たとえば、こうだ。
大阪府が10年で150億円の補助金を支給し、堺市も同200億円の固定資産税減免を行うなどの誘致条件を提示した。つまり、シャープは1工場で 350億円ももらうわけだ。
( → 読売新聞の転載。他にも同種情報は多々あり。 )
で、もしこれが 10工場になったら 3500億円だ。その上、購入者にも補助金を払ったら、その倍になるか? げっ。
現状は、補助金漬けだ。
( ※ 大阪府が誘致のために一種の「値引き」をするのは、ある意味ではやむを得ないとも言える。地域振興策として。……しかしながら、そういう援助を受けたシャープが、これっぽっちも感謝の気持ちももたないのは、どういうことですかね。シャープは大阪府や堺市から補助金をたっぷりともらいながら、そのことをちっとも表明しない。それどころか、「自社技術がすばらしいからコストを大幅に下げられました」と自慢する。呆れたものだ。……自分の技術にたっぷり自信があって威張りたいのなら、補助金をすべて返上しなさい。大阪府みたいに最貧の自治体から巨額の金をむしり取るなんて、(自称)優良企業のやることじゃないですよ。)
( ※ ついでに言えば、こういうふうに補助金をたっぷりもらっている企業を「すばらしい」と報道するマスコミも、報道姿勢を改めてもらいたいものだ。どうせ同じように称賛するなら、米国政府から莫大な補助金をもらいたいビッグスリーを称賛したら? どうせ社会主義の経済政策が好きなんだから。)
[ 付記3 ]
「技術革新によるコストダウン」
を私は推奨する。そのことは、いつか実現するだろう。いつになるかはわからないが、いつかそうなることは確実だ。
で、そういう話を聞くと、太陽光発電の賛成派は大喜びして、こう思う。
「ほれみろ。だから、太陽光発電を推進するべきなんだ」
と。喜んで、飛び跳ねるかもしれない。
しかし、それは勘違い。正しくは、こうだ。
「コストダウンが実現したならば、もはや国がそれを推進する必要はない。国が補助金を出す必要はない。国は何もしないで放置しても、勝手にどんどん普及していくはずだ」
つまり、次の二者択一だ。
・ コストダウン不可能 → 補助金を無駄にするだけ。
・ コストダウン 可能 → 補助金の必要はなし。
どっちみち、需要のための「補助金」は不要なのだ。研究を推進する必要はあっても、普及を推進する必要はないのだ。
( ※ 太陽光発電の普及のために補助金を出すのは、国産の米や小麦や松阪牛に補助金を出すのと同じである。愚の孫頂。どうせ巨額の金をかけるにしても、研究開発に金をかける方がいい。……何度も述べたとおり。)
※ 以下は、経済政策の話なので、読まなくてもよい。
(マクロ経済的な需要増加政策との違いを示す。科学の話ではない。)
[ 補説 ] |
【 関連項目 】
→ 米国の太陽光発電
→ サイト内検索「太陽光発電」
タイムスタンプは 下記 ↓
>電池無しで、太陽光発電が自家消費を上回る場合、余りは買電しているのだろうか?
ここにドイツでの普及の鍵が(嘘が)あります。
例えば原価5円で作った電気を10円で売ることで電力会社は成り立っています。太陽発電の電力は10円くらいで仕入れなければ成り立ちませんが、ドイツでは20円くらいで買い取っています。差額はどうするか?電力会社が泣く?--これは一般の電力料金を値上げすることで補っているようです。太陽発電をしない人にも負担をさせているのです。設置条件に合う家、美観損傷に我慢できる家が何戸あるのか?もし十分に余裕があるとしたら何時、どうやってストップをかけるのだろうか?永久に続けることは不可能である。
一方、日本のように設置する費用に補助金を出す方式では競争原理が阻害され値段は下がらないことは農林水産業を見れば明らかである。
販売店レベルでの価格競争で生まれるのは粗悪な手抜き工事で、機器の寿命を大幅に縮めることが予想される。
オーナーさんの言葉どおり、画期的な技術開発が行われない限り、どうしてもペイしない装置である。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1412551444
ふうむ。ひとつ勉強になりました。
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小学館「日本国語大辞典」から。
ちょん …… 2(形動)まともでないこと。頭のわるいさま。また、そういう人や物。「ばかだの、ちょんだの」
日本でもドイツの方式を始めるようです。
皆さんの電気料金が上がります。