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太陽光発電については、嘘が出回っている。次のように。
「現状ではコストが十分に低下している。また、近い将来、他の発電と対抗できるコスト水準にまでコストが下がるだろう」
このような主張は、まったくの嘘だ。「地球温暖化」という主張よりも、もっとひどい。「地球温暖化」というのは、まだ議論の余地があるし、「真相はどちらとも言えない」というふうに判断できそうだ。一方、「太陽光発電のコストは低い(もうすぐ低くなる)」というのは、真っ赤な嘘だ。
こんな嘘を信じてはならない。
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以上のような俗説が嘘だということは、新聞を読んでいれば、すぐにわかるはずだ。しかるに、新聞を読まないネット・オタクや、文盲的な阿呆が、こういう嘘をあっさり信じてしまう。
そこで、真実を記してある新聞記事を示す。次のデータだ。
→ 朝日新聞・朝刊 2009-02-11 (ネットにはない。)
このデータは、朝日が自分で調査したのではなくて、他の機関が調べたのを、朝日がグラフ化しただけだ。また、ほぼ同等のデータは、私も前にどこかで見たことがある。そこで、元となるデータがどこかにありそうだと思って探したら、次のページがあった。
→ 太陽光発電システム設置価格の推移
このデータは、朝日のデータに比べると、最近の2年間ぐらいが欠けている。それでも、2005年以前のデータはちゃんとある。(2006年以降の分は朝日の記事を参照。グラフがある。)
ともあれ、これらのデータを見ればわかるように、ここ数年間、太陽電池の価格の低下はごくわずかである。
従って、正しい記述を示せば、次の通り。
- 2001年ごろまでの 10年間は、価格はどんどん低下した。(ただし、価格水準の絶対値は、依然として、かなり高かった。)
- 2002年以降は、だいぶ価格が下がってきたが、そのかわり、コスト低下はほとんどなかった。(特に、大量生産の効果は、あまりなかった。大量生産技術はすでに確立しつつあったからだ。価格低下は主として技術の向上によってもたらされた。)
- 今後も価格低下は見込めるだろうが、大量生産による効果はごく少ない。今後も年5%程度だろう。
- ただし、画期的な技術革新があれば、大幅なコストダウンも可能かもしれない。大幅なコストダウンが可能か否かは、画期的な技術革新の有無によって決まる。
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真相が何かは、以上で示した。
このあと、嘘の例を示す。太陽光発電の推進派は、嘘( or 夢?)ばかりを書くからだ。その典型として、Wikipedia の記事を示す。
Wikipedia には、次の記述がある。(現時点での記述。太陽光発電のコストについて。)
ほぼ経験曲線効果に従ってコストが低下しており、世界的には2012年頃には系統電力よりも安価になる(グリッドパリティに到達する)と見られている。これは嘘である。以下、説明しよう。
( → Wikipedia 「太陽光発電のコスト」)
(1) 経験曲線効果
「ほぼ経験曲線効果に従ってコストが低下しており」
というのは、明らかに事実に反する嘘だ。それが成立するのは、大量生産がなされていなかった 2001年以前である。(先の棒グラフを見ればわかるとおり。)
2002年以降は、もはやかなり大量生産が実現したので、コストの低下量はごく小さい。「どんどん下がる」ということはなく、「ろくに下がらない」というのが正しい。実際にそうだった。
(2) 競争力
「世界的には2012年頃には系統電力よりも安価になる」
というようなことは、あるはずがない。計算ミス?
・ 現状では、原発等の既存発電に比べて、コストは2倍以上。
・ 今後の価格低下は、年に5%程度。
したがって、Wikipedia の記事は、次のことを主張していることになる。
0.95 の4乗 = 0.5
こんな数式、成立するわけないでしょ! 単純にグラフを外挿するだけでも、こんなひどい結論にはならない。(先の棒グラフを参照。)
とにかく、これまでのペースで進む限り、「2012年頃には系統電力よりも安価になる」なんてことが、あるはずがない。仮に、そういうことが起こるとしたら、今後1〜2年の間に、一挙にコストが半減しなくてはならない。つまり、画期的な技術革新が起こることが前提となっている。(夢物語?)
( ※ 本項では「年に5%程度」という数値を示したが、実際はもっと悪いらしい。朝日の記事によると、近年の価格低下率はもっとずっと小さな値となっている。上昇したこともある。……とにかく、楽観は禁物。)
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結論。
Wikipedia の記事は信頼のおけないものが多いが、特に太陽光発電の記事は嘘ばっかり。わざと嘘を書いている。(人々はそれにだまされる。)
[ 付記1 ]
実は、この手の嘘を言うのは、Wikipedia に限らない。朝日などの過去記事を検索してみるといい。たとえば、4年ぐらい前の記事を調べてみるがいい。ずっと前から「あと4年後」「あと5年後」というふうに言っている。
だから、2012年になっても、「あと4年後」というふうに言い出すはずだ。)
( ※ これはつまり、「ドンガバチョのテーマ」であろう。「あしたがだめなら あさってにしましょ あさってがだめなら しあさってにしましょ どこまでいっても あすがある」 → 該当の歌詞 )(この歌はそのうち、太陽電池派のテーマ・ソングになるかも?)
[ 付記2 ]
楽観的なエコ推進派がいかに嘘ばかりついているか、その具体的な証拠を示す。過去の証文を持ち出して。
《 太陽電池 》
2001年の時点で、太陽電池について超楽観的な予測が公的に示された。下記の通り。
→ 2009年には 2000年の6割減のコストという予想
( 出典は → 新エネルギー財団の報告書(pdf))
この予想は、大ハズレ。当時の予想がいかに甘すぎるかは、これを見ればわかる。(現状でも、同じく超楽観的だが。オオカミ少年か、ドン・ガバチョ。)
《 燃料電池 》
昔の新聞記事から、ホンダ、ベンツ、フォード、トヨタの見解を示す。
本田技研工業は七日、ガソリン車に代わり将来の自動車の主流になるとされている燃料電池車を二〇〇三年にも実用化する方針を明らかにした。二〇〇四年を実用化の目標としている独ダイムラー・ベンツ、米フォードに先んじて、開発を進める意向を示したもの。トヨタ自動車も二〇〇三年をめどに開発を目指しており燃料電池車の開発で先陣争いが激しくなりそうだ。つまり、ホンダ、ベンツ、フォード、トヨタは、「2003〜2004年に燃料電池車を実用化する」と表明したわけだ。で、その結果は? もはや撤退同然だ。
(朝日新聞 1998-07-08 の記事)
[ 付記3 ]
私は楽観派を批判している。だが、私は別に、悲観派であるわけではない。楽観派の嘘を安易に信じてはならないが、だからといって、「どうせ駄目だ」と悲観しているわけでもない。
私の主張は、
「コストダウンは絶対に不可能だ」
ということではなくて、
「コストダウンのために技術開発をせよ」
ということだ。(何度も述べたとおり。)
[ 付記4 ]
だから問題は、(画期的な)技術革新があるかどうかだ。
では、どうか? どうやら、それは、あるらしい。ただし、米国発の技術だが。……この件は、前に述べた。(かなり新しい情報。)
→ 米国の太陽光発電
ただ、この手の情報(自社PR)は、かなり眉唾のことが多い。あっさり信じるべきではあるまい。
前にも同じようなことが報道されて、結局尻すぼみになったことがある。(似た例は[ 付記2 ]に示したとおり。)
実験室でできたということと、大量生産が可能だということとは、まったく別のことだ。楽観は禁物。
( ※ そう言えば、「高温超伝導」というのも、技術開発は進んだが、実用レベル化に達した例はほとんどないようだ。リニアモーターカーでの利用が有望らしいが、それとていまだ実用化されていない。……高性能の太陽電池も、どうなることやら。)
( ※ ともあれ、必要なのは、技術開発だ。なのに現状の方針は、「需要への補助金で、低性能の太陽電池を大量生産すること」である。これは、方針としては最悪だ。この件は、またあとで述べる。)
【 関連項目 】
→ サイト内検索「太陽光発電 嘘」
やれやれ、です。