東京に単身赴任中だ。一人暮らしの気楽さで、都心にマンションを借りている。たいてい深夜、東京駅近くの支社から歩いて帰宅する。ここが日本の中心と誇らしげな「日本橋」を渡り、約30分。その間、だいたい5、6人のホームレスを見かける。男性だけでない。枯れ枝のようにやせた年配の女性が新聞紙で防寒した姿は痛々しい。
派遣切り、内定取り消し‐今年に入って雇用をめぐる原稿をデスクする機会が増えた。「職と同時に住居も失った人が多い」というくだりが胸に響く。年末、日比谷公園に開設された派遣村は、「板子一枚下は地獄」の雇用状況を目の当たりにさせた。冬場は凍死もあり得るこの国で、憲法にある「健康で文化的な最低限度の生活」とは居住権の保障をおいて何があるのだろう。そう自問しつつ、人影が減った都心を歩く。コートにマフラー、手袋と完全武装のわが身を少し恥じつつ。 (北里)
=2009/02/20付 西日本新聞朝刊=