23区の2009年度予算案
重点施策、目玉事業を追う
【暮らし】生活防衛 生活保護と住所2009年2月19日 「生活保護を受けるには住所がないとダメ」−。こんな言葉で、住居のない生活困窮者の申請を拒絶する役所も多い。だが法律的には、申請時に住居がなくても生活保護は受けられる。「派遣切り」などで住居を失う人も増え、より適正な生活保護の運用が求められている。 東京都千代田区は、年末年始に日比谷公園に開設された「年越し派遣村」で寝泊まりした人々から生活保護申請を受け付け、二百五十人を超える全員の受給を認めた。弁護士の舟木浩さんは「同区の運用が本来の姿。自治体が住居の有無で、申請を排除するのは違法行為」と指摘する。 生活保護は「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法二五条)を保障する最後のセーフティーネット。特に、契約を打ち切られた元派遣労働者は、契約期間が短いため雇用保険の受給資格がない場合が多く、頼れる制度は生活保護しか残されていない。 それでも申請すら受け付けない「水際作戦」をとる自治体はまだ多い。中部地方の元派遣社員男性(45)は数日前まで住んでいた寮があり、寝泊まりする車を止めていた市の窓口で生活保護を求めたが、「住所がないと(保護判定の)調査もできないから、申請できない」と拒絶された。 対して厚生労働省社会・援護局保護課の巻口徹課長補佐は「住居を失った人が、いま困っている場で保護を申請する。どの自治体もそこで拒むことは許されない」と強調する。同省は二〇〇三年の「ホームレスに対する生活保護適用」通知などで適正な運用を全国の自治体に求めている。 しかし地方の運用基準はあいまいだ。当事者が保護申請を一度断られても、ホームレス支援団体などの第三者が同行すると一転認定される例も目立つ。舟木さんは「財政負担を増やしたくないことに加え、野宿者は保護開始後の支援でも自立が難しいと考え、『なるべく認定しない』方針で動く自治体が多い。だからこそ、自立しやすい、野宿期間が長くならないうちの支援が重要になる」と話す。 ◇ 住居がなくても保護申請できる法律的根拠は何か。 厚労省は、申請を受けて保護の要否を決定する(生活保護法二四条)、被保護者が希望したときは、適当な施設に入居させる(同三〇条)の二つから、「住居がなくても申請できるのは当然」と解釈する。一四条では「住宅扶助」を定めており、敷金・礼金も支給の対象となる。 〇三年通知では「ホームレスが保護の相談に来訪した際や急迫保護を適用する場合は必要な保護を行う。(ホームレスの自立を支援する)基本方針に沿わない取り扱いをしない」と、法律を“補強”している。 住居探しは民間同士の契約のため「行政の責務」にできないが、一月下旬の参院予算委で舛添要一厚労相は「民間のアパートなどの情報も十分お知らせすることに全力を挙げる」と言明し、全国への周知徹底を図るとした。 保護認定で柔軟に対応する東京都以外にも改善の動きがある。滋賀県は一月、各市担当者を集め、住居がない人から保護申請があった場合、住所欄に公園など野宿先を記入させ、居宅確保を指導し、敷金などの支給を申請させることを求めた。「働いていた場所で対応できるよう、県全体で足並みをそろえようという判断」(同県健康福祉政策課)だ。また広島市は住居がない人に対し、簡易宿所でも生活保護の住宅扶助費支給の対象にしている。 だがこんな対応をしている自治体は少数派だ。生活困窮者支援団体「ほっとポット」(さいたま市)代表理事で社会福祉士の藤田孝典さんは「保護開始の前提になる居宅確保までの進め方が分からない自治体のために、国は具体的な実施マニュアルを作ってはどうか」と提案している。
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