◎東京五輪誘致 国会決議急ぎ世論喚起を
二〇一六年夏季五輪の開催都市決定まで残り二百二十日を切った。誘致競争が佳境を迎
えるなか、金沢市で開催された北國政経懇話会で、経済評論家の西村晃氏が「東京開催の可能性は65%」との見方を示した。オバマ米大統領就任で、同大統領の地元・シカゴの優勢が伝わる一方、国際的な金融危機を引き起こした米国への反感が根強くあり、東京五輪招致委員会も「東京優位」の手応えを感じているという。
ただ、東京の弱点は、シカゴ、マドリード(スペイン)、リオデジャネイロ(ブラジル
)のライバル三都市に比べて世論の支持が低い点にある。五輪招致の国会決議が民主党の反発などで延期されたことも暗い影を投げかけている。三兆円の波及効果をもたらす五輪誘致を成功させるため、国会決議を急ぎ、世論の喚起に努めたい。
一六年夏季五輪の開催都市は今年十月二日、デンマークで開かれるIOC総会で決まる
。昨年六月の一次選考では、主要会場を半径八キロ以内に収め、「世界一コンパクトな会場配置」をうたう東京の開催計画が一位の評価を受けた。
二位のマドリードは、一二年ロンドン大会に続く欧州開催という弱みがあり、四位のリ
オデジャネイロは一四年にサッカーのワールドカップ開催を控え、財政面での不安がある。シカゴは三位通過とはいえ、米国にIOCのスポンサー企業が多く、オバマ大統領という切り札を持つ。このため、シカゴと東京の「一騎打ち」との見方が広がっていたが、金融危機が東京の思わぬ追い風になった。
IOC委員は富裕層が多く、景気悪化で損失をこうむっている。オバマ人気も既にピー
クを過ぎ、東京の優れた開催計画と治安の良さ、世界第二位の経済力が改めて評価される可能性が高い。
問題は、IOCの調査で国民の支持率が59%と低く、シカゴの74%に水を開けられ
ていることだ。IOCは開催都市の条件として、地元の盛り上がりを挙げており、東京が誘致競争で優位に立っていることをもっとアピールする必要がある。国会での五輪招致決議は、世論の関心をオリンピックに向ける効果があるだろう。
◎湯涌温泉活性化 県境の動脈づくり早く
昨年七月、大雨に襲われた金沢市の奥座敷・湯涌温泉の本格復興を進める活性化まちづ
くり事業費が市の新年度当初予算案に盛り込まれた。金沢湯涌夢二館広場での野外ステージ開設、玉泉湖の壊れた橋の架け替え、旧白雲楼ホテル跡地の整備などだが、これとともに同温泉を経由し県境を越えて東海北陸自動車道福光インターチェンジに至る主要地方道・金沢湯涌福光線(金沢湯涌福光連絡道路)の整備を早めたい。
一昨年十一月から昨年二月末にかけて石川県が湯涌温泉を訪れた観光客を対象にした観
光動態調査で、同温泉から富山県の南砺・五箇山に向かう予定があった人は五人に一人の割合で多く、その六割が連絡道路の整備を望んでいることが分かったように、連絡道路の整備は湯涌温泉の活性化に大きく貢献するのは明らかだ。
金沢と南砺の福光をつなぐ道路は三本ある。国道304号、主要地方道に位置づけられ
ている県道の金沢井波線と金沢湯涌福光連絡道路だ。国道304号はこの十年間に整備され、金沢井波線の整備も二〇一〇年度末完了を目標に進んでいる。
二本の幹線道路の整備の終了にメドがついたため、石川、富山両県とも金沢湯涌福光連
絡道路の整備に前向き姿勢を見せている。その背景には東海北陸自動車道の全線開通により双方向性の往来が盛んになり、連絡道路の整備の必要性も高まったことがある。これを追い風に金沢湯涌福光連絡道路整備促進期成同盟会の両県や国への働きかけも熱を帯びてきた。
湯涌温泉は全部で九旅館のこじんまりした温泉だが、加賀藩の歴代藩主の湯治場として
栄え、大正年間には詩人画家の竹久夢二が愛人と滞在したほか、ドイツで開かれた万国鉱泉博覧会で世界三名泉に選ばれている。
「金沢の奥座敷」といわれるゆえんもそこにあるのだが、白雲楼ホテルがなくなってか
ら年間四、五万人も客が減り、今は宿泊、日帰り合わせて約七万人。南砺・五箇山との交流を盛り上げ、往時のにぎわいを取り戻すためにも連絡道路の整備が必要だ。