旅限無(りょげむ)

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3月になる前に 其の七

2009-02-23 18:01:43 | チベットもの
■先に引用したラサ市内の引率取材ツアーの詳報がありました。

……中国チベット自治区ラサで昨年3月に大規模な暴動が起きてから1年となるのを前に、中国当局は一部の外国メディアに同自治区での取材を認めた。現地は平穏を取り戻しているように見えるものの、1959年3月のチベット動乱から50年という節目を控え、当局は暴動の再燃に対する警戒を強めている。……

■これは毎日新聞の記事ですが、きちんと「暴動の再燃」という当局が嫌がるに違いない表現を使っております。何も見せない情報封鎖を続ければ、この「再燃」を心配する声が海外に満ちて行くでしょうし、だからと言って完全なる情報公開になど踏み込んだら、止め処なく「スクープ」が連発されて収拾が付かなくなるでしょうから、どうしても奇妙な統制管理の下での取材ツアーということになります。


暴動後、同自治区での外国メディアの取材は規制されており、当局の手配による取材ツアーは、ラサで聖火リレーが行われた昨年6月以来。「農奴解放50周年」の名目で組まれた今回の取材ツアーは10〜13日の日程で、アジアや欧米などのメディア8社が参加した。取材団によると、ラサ市内の商店は通常通り営業しており、名刹のジョカン寺やポタラ宮前の広場では、多くの巡礼者が全身を地面に投げ出すチベット仏教独特の祈り「五体投地」を繰り返していた。一部の商店の壁に暴動で燃えた時の焦げ跡が目に付く以外、表向きは暴動の影響を感じさせない。

■参加したジャーナリストの立場としては、北京政府の広報宣伝役を務めている振りをしながら、少しでも「真実」の欠片を収拾しようとプロの五感を総動員したのでありましょう。このツアーが企画された経緯は明らかにされていませんが、取材許可を求める海外メディアの声と、北京政府側の思惑が奇妙に捻れて一致したものと推測されます。言うなれば、狐と狸の化かし合いというわけでしょう。


だが、中心部には武装警察が50〜100メートル間隔で立ち、24時間態勢で不審者に目を光らせている。巡礼者によると、武装警察は取材団が現地入りする直前に制服から私服での警戒に切り替えたという。暴動後の3月下旬に組まれた取材ツアーで外国メディアに「自由がほしい」と直訴した僧侶の一人、ロンジェさん(27)が当局の手配で今回の取材に応じたが、「他の僧侶に唆されただけ」と語り、態度を一変させた。

■この僧侶の身に何が起こったのか?という大いなる疑問がそっくり残されたまま、突如の変節を取材させられた取材者側としては、押し隠された苦悩を彼の表情から読み取りたいところだったでしょう。しかし、取材を「手配」した当局が監視している場所で、真相を探るのは更に大きな悲劇を生む原因になります。ジョカン寺の境内やポタラ宮殿の前で五体投地をしていた巡礼者たちが、いつ何処からやって来たのか?これも当局が「手配」したものかも知れませんし、仮に自分たちの信仰心でやって来た人達だったとしても、無骨な制服姿の武装警察から胡散臭い目で見られながらの巡礼ならば、聖地巡礼の感動も色褪せてしまうことでしょう。


ラサ市の曹辺疆・副市長は「暴動1年を前に破壊活動を行おうとする者がいる可能性は否定できない。法を破る者を厳しく取り締まる」と強調した。暴動後、当局は953人を拘束し、うち76人に実刑判決を言い渡したという。中国政府は国内向けにもチベットの「民主改革」を宣伝している。自治区の人民代表大会(議会)は先月19日、1959年のチベット動乱が完全に制圧された3月28日を「農奴解放記念日」とする議案を採択し、国内メディアを通じて世論・思想の締め付けを強めている。
2009年2月12日 毎日新聞

■50年目の節目の年に、1箇月と10日前という実に慌しいタイミングで「記念日」が採択されるというのは異様な話で、このまま3月下旬に突入すると何が起こるか分からない!という切迫した危機感が当局を動かしたのでしょう。しかし、その不穏な空気を掻き消すための「記念日」制定ならば、逆効果になってしまう可能性の方が高いでしょうなあ。
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