ロシアンルーレット
テーマ:医療まずは、不幸にも亡くなられた患者さんのご冥福をおいのりします・・・。
このニュースを聞いて、僕が素直に思ったことは、医師として大変不謹慎かも知れませんが、医療従事者は恐ろしいロシアンルーレットをやり続けているということでした・・・。
血小板がある程度少なくても、患者さんの呼吸が困難で、かつ腹水が大量に貯留していれば・・・。
僕も、患者さんに『じゃあ、腹水を抜きましょう
腹水が抜けて、お腹の張りがとれれば患者さんは劇的に楽になるのですから・・・。
医師であるならば、迷う余地はないだろうと思います。
患者さんの苦痛もいかばかりのものだったかと思いますが、その当事者になってしまった主治医の先生の気持ちを思うと・・・。
せつない思いでいっぱいになります
僕も以前、救急外来で造影CT検査をやって、アナフィラキシーショックを起こして患者さんを殺しかけたことがありました・・・。
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応の一つで、薬物や食べ物その他のいろいろな抗原が体内に入ることによって起こる反応です。
血圧低下、嘔吐、喘鳴、呼吸困難などを起こし、すぐに対処しなければ死につながります
CT室から帰ってきて、呼吸困難がみられエビネフリンを打ったものの、あっという間に血圧低下、意識消失、徐脈、呼吸停止
そんな体験は初めてでしたが、気道確保、心臓マッサージなどの蘇生を試みたところ・・・。
体が反応したのか・・・。
まさに、今から挿管をしようとしてた時でした。
バイタルを見ていたナースから『先生、心拍戻りました
どうやら、一発目のエビネフリンが少~し時間がたってから効いてきたようでした
患者さんが意識消失し、呼吸停止状態になったその瞬間、僕の頭の中をよぎったのは・・・。
あぁー、俺の医師人生は終わったなぁ・・・。
これから大変な訴訟が始まるんだろうなぁ・・・。
刑事裁判かぁ・・・。
俺、被告人とか呼ばれちゃうんだなぁ・・・。
でした
もちろん、目の前の患者さんを何とかしなきゃという気持ちも当然ありますから、救命処置に体は自然と全力を尽くしてはいましたが、足や手の震えを隠すことで精一杯だったような気がします・・・。
いつもと同じように問診し、いつもと同じように造影CTをとっても、こんな恐ろしいことが起こることがあるんだと医療の恐怖を実感した日になりました・・・。
一緒にいた研修医たちから、『先生がいてくれて良かったです
なんて言われましたけど・・・。
『今回は運が良かっただけだよ』なんて強がってみせるのが精一杯でした
日常的に行っている医療行為でも、突然患者さんが命の危険にさらされるという初歩的なことに改めて感じ、思い知らされたのです・・・。
多かれ少なかれ医師という職業をしている以上、そんな恐ろしい経験や修羅場の経験を避けて通ることは出来ません・・・。
経験を積めば積むほど、そんな修羅場をくぐり抜けていくしかないのですから。
ただ、そのような修羅場に当たることも運であって、修羅場をくぐり抜けられることも運であるならば・・・
こんな恐ろしい職業もありません
確かに修羅場をくぐり抜けるためには、相応な知識に裏打ちされた技術が必要なことは言うまでもありませんが、それらを持ち合わせていたとしても、くぐり抜けられない修羅場が待っていることも医師である人たちならば知っているはずです・・・。
医師が偏在だと言われています。
科で偏在、地域で偏在と言われています。
偏在の理由を『訴訟リスクの高い科が人気がないから・・・』、『都市部の充実した研修病院が人気だから・・・』だとされています。
そして、そのような考えで医師になることが、まるで悪いかのように訴訟リスクを避ける選択や、研修システムが充実している都市部の病院を選択する医師たちが悪いかのように吹聴されています・・・。
しかし、僕は訴訟リスクを避ける選択も、研修システムが充実している都市部の病院を選ぶ医師たちも悪いなんて思いません。
多くの医師たちなら『大野事件』、『大淀事件』、『割りばし事件』、そして今度の『尼崎事件』の話を、自分自身のこととして、ある医師は教訓にし、ある医師は批判し、そしてある医師は医療現場から去っていきます・・・。
ロシアンルーレットで弾丸が出てしまったのは、始めた人が悪いのでしょうか
それとも、ゲームに参加した人が悪いのでしょうか
または弾丸が入っていることを確認しないで引き金を引いた人が悪いのでしょうか
ロシアンルーレットで頭を撃ち抜いたのが今日は自分でなかったことでホッとして、明日は自分のピストルには弾丸が入っているかも知れないと思う毎日から出ていく人たち・・・。
僕にはとても批判できそうにありません
だって、あの日の弾倉には6発の弾丸が入っていて、たまたま僕が撃った1発が不発だっただけなのですから・・・。
■気持ちわかります☆
私はいつも、私の勤務を避けるかのように、事件が起こっているので、かなり運のよいナースです。転倒とか、不思議と私の勤務では当たらないし。以前、外科で勤務してたとき、CVを挿入するのに、肺まで、ついちゃったドクターがいました。訴訟問題にはならなかったけど、先生はヒヤヒヤもんだったみたいです。ほんとにドクターって責任重いですよね。あたし達、ナースも気をひきしめて、頑張りまーす☆