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2009-02-02

ロシアンルーレット

テーマ:医療
先日、肝不全の患者さんに『穿(せんし)』をして、腹水を抜いたところ出血が止まらず、患者さんが亡くなるというニュースがありました・・・。
まずは、不幸にも亡くなられた患者さんのご冥福をおいのりします・・・。


このニュースを聞いて、僕が素直に思ったことは、医師として大変不謹慎かも知れませんが、医療従事者は恐ろしいロシアンルーレットをやり続けているということでした・・・。


血小板がある程度少なくても、患者さんの呼吸が困難で、かつ腹水が大量に貯留していれば・・・。
僕も、患者さんに『じゃあ、腹水を抜きましょうビックリマーク』と間違いなく提案するでしょう。
腹水が抜けて、お腹の張りがとれれば患者さんは劇的に楽になるのですから・・・。
医師であるならば、迷う余地はないだろうと思います。


患者さんの苦痛もいかばかりのものだったかと思いますが、その当事者になってしまった主治医の先生の気持ちを思うと・・・。
せつない思いでいっぱいになりますガーン


僕も以前、救急外来で造影CT検査をやって、アナフィラキシーショックを起こして患者さんを殺しかけたことがありました・・・。
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応の一つで、薬物や食べ物その他のいろいろな抗原が体内に入ることによって起こる反応です。
血圧低下、嘔吐、喘鳴、呼吸困難などを起こし、すぐに対処しなければ死につながります叫び


CT室から帰ってきて、呼吸困難がみられエビネフリンを打ったものの、あっという間に血圧低下、意識消失、徐脈、呼吸停止あせる
そんな体験は初めてでしたが、気道確保、心臓マッサージなどの蘇生を試みたところ・・・。
体が反応したのか・・・。
まさに、今から挿管をしようとしてた時でした。
バイタルを見ていたナースから『先生、心拍戻りましたビックリマーク』、『血圧も上昇していますビックリマーク
どうやら、一発目のエビネフリンが少~し時間がたってから効いてきたようでした汗



患者さんが意識消失し、呼吸停止状態になったその瞬間、僕の頭の中をよぎったのは・・・。
あぁー、俺の医師人生は終わったなぁ・・・。
これから大変な訴訟が始まるんだろうなぁ・・・。
刑事裁判かぁ・・・。
俺、被告人とか呼ばれちゃうんだなぁ・・・。


でしたガーン


もちろん、目の前の患者さんを何とかしなきゃという気持ちも当然ありますから、救命処置に体は自然と全力を尽くしてはいましたが、足や手の震えを隠すことで精一杯だったような気がします・・・。
いつもと同じように問診し、いつもと同じように造影CTをとっても、こんな恐ろしいことが起こることがあるんだと医療の恐怖を実感した日になりました・・・。


一緒にいた研修医たちから、『先生がいてくれて良かったです汗もし、僕たちだけだったら、ダメでした・・・』
なんて言われましたけど・・・。
『今回は運が良かっただけだよ』なんて強がってみせるのが精一杯でしたガーン
日常的に行っている医療行為でも、突然患者さんが命の危険にさらされるという初歩的なことに改めて感じ、思い知らされたのです・・・。


多かれ少なかれ医師という職業をしている以上、そんな恐ろしい経験や修羅場の経験を避けて通ることは出来ません・・・。
経験を積めば積むほど、そんな修羅場をくぐり抜けていくしかないのですから。
ただ、そのような修羅場に当たることも運であって、修羅場をくぐり抜けられることも運であるならば・・・
こんな恐ろしい職業もありません叫び


確かに修羅場をくぐり抜けるためには、相応な知識に裏打ちされた技術が必要なことは言うまでもありませんが、それらを持ち合わせていたとしても、くぐり抜けられない修羅場が待っていることも医師である人たちならば知っているはずです・・・。


医師が偏在だと言われています。
科で偏在、地域で偏在と言われています。
偏在の理由を『訴訟リスクの高い科が人気がないから・・・』、『都市部の充実した研修病院が人気だから・・・』だとされています。
そして、そのような考えで医師になることが、まるで悪いかのように訴訟リスクを避ける選択や、研修システムが充実している都市部の病院を選択する医師たちが悪いかのように吹聴されています・・・。


しかし、僕は訴訟リスクを避ける選択も、研修システムが充実している都市部の病院を選ぶ医師たちも悪いなんて思いません。
多くの医師たちなら『大野事件』、『大淀事件』、『割りばし事件』、そして今度の『尼崎事件』の話を、自分自身のこととして、ある医師は教訓にし、ある医師は批判し、そしてある医師は医療現場から去っていきます・・・。


ロシアンルーレットで弾丸が出てしまったのは、始めた人が悪いのでしょうか!?
それとも、ゲームに参加した人が悪いのでしょうか!?
または弾丸が入っていることを確認しないで引き金を引いた人が悪いのでしょうか!?


ロシアンルーレットで頭を撃ち抜いたのが今日は自分でなかったことでホッとして、明日は自分のピストルには弾丸が入っているかも知れないと思う毎日から出ていく人たち・・・。
僕にはとても批判できそうにありませんガーン


だって、あの日の弾倉には6発の弾丸が入っていて、たまたま僕が撃った1発が不発だっただけなのですから・・・。



コメント

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■気持ちわかります☆

私はいつも、私の勤務を避けるかのように、事件が起こっているので、かなり運のよいナースです。転倒とか、不思議と私の勤務では当たらないし。以前、外科で勤務してたとき、CVを挿入するのに、肺まで、ついちゃったドクターがいました。訴訟問題にはならなかったけど、先生はヒヤヒヤもんだったみたいです。ほんとにドクターって責任重いですよね。あたし達、ナースも気をひきしめて、頑張りまーす☆

■こんばんは(^-^)

わたしの母は肝臓癌でした
当然腹水も貯まりました
その対応については本当に状態に合わせて適切に対処していただき今も大変感謝しています
お仕事大変ですが大きないっぱいの感謝をお医者様に持っているものもいる事を知ってねっ
だから頑張って下さいね
応援しています
!(^^)!

■腹腔穿刺っていうんですね・・・

随分前になりますが父が肝硬変と肝臓癌で腹水

が溜まっていて主治医の先生に説明を聞いた日

血の混じった真っ赤な腹水を4~5リッター程抜い

て、その晩に亡くなったけれど・・・

心臓も風船みたいに弱って膨らんでましたし、トイ

レまで歩かせたから死が早まったにしても、その

行為がなくても多分一か月も持たないと言われて

いたので誰を恨むこともなく、安らかに眠ってほし

いと思ったものでした。

医師の仕事は本当にロシアンルーレットの様な鬼気迫

る現場で毎日闘っていらっしゃると思うと、とても

じゃないけど医療事故が起きても運命としか思え

ない様な気がします・・・

お疲れでしょうけど頑張ってくださいね(^_-)☆

■看護学生の実習で…

先生お疲れさまです☆私がまだ看護学生の頃実習先で受け持たせていただいた患者さん。食事摂取できなくなりCV挿入に…まずは右、5回くらい何度やっても入らず…そして左も何度やってもダメ。他の先生を呼ぶこともなく再トライ…も虚しく失敗。結局左右の肺をついてしまい患者さんは見る見るうちに悪化し、実習最終日には実習生の私はバイタルしか取らせてもらえない状態に。実習が終わる直前に亡くなってしまいましたが後にも先にもあんなひどいのは見たことありません。CV挿入前まではおしゃべりもしていた患者さんの苦しそうな顔が今でも忘れられません。その病院では大問題になったのは言うまでもありません…

■でも☆

ドキッとすることも日々たくさんあるとは思いますが頑張ってください
(≧ω≦)

■お疲れさまです

仕事をしていてなにかが起こると当事者じゃなくてよかった、と思ってしまいます。
でも、ニュースで報道されるような医療過誤はいつ自分の身にふりかかってきてもおかしくないのですよね。。。

■まさに…。

その治療で亡くなる患者さんを前の病院で沢山見ました。
ターミナル患者さんに多く見られました…。

私も、肝機能障害が有るので不安は有ります。

■その名の通りかもしれない・・・

そして、精一杯、果敢に戦うしかない職業なのかもしれませんね・・・

主人も一度ありましたよ(><;)裁判になりかけ、すったもんだしましたが、事態が好転したら恐ろしいくらいに先生様になっちゃうところが、また
ビックリでしたけどねf^_^;

信じて委ねる患者様に答えるしかない職業でもあるのでしょう・・・悲しいけれど、答えきれない時
も数々あるのが理不尽な現実。

お疲れ様でした♪

■ゆうじ先生…

お疲れさまです。

本当に、ロシアンルーレット、ですね…。
入院患者さんであれば、お互いに話しをしたりして、徐々に信頼関係ができるかもしれない。
その先生の熱意を知れば、何か起こっても、クレームにはならないかもしれないですけれど…

緊急で来られた場合などは、良く知らないままの手術に…。
そして、医療現場では、そのような先生方の熱意とは裏腹に、予期せぬ出来事も起こり得るのでしょうね。

命を預ける側と、預けられる側…
私たち患者も、そのような先生方の想いも知った上でお願いをし、不測の出来事も起こり得ることを理解できたら良いですね。

本当に、いつも緊張の毎日…
心を強く持ち、自分を高めなくてはいけないこと、大変だと思います。
けれど、そのような先生方、看護師さん方がいてくださるおかげで、私たちの健康が保たれることに感謝いたしますm(__)m

本当に、いつも大変なお仕事お疲れさまです。
ありがとうございますm(__)m

ゆうじ先生、休める時は…
大至急おだいじに^^

■お疲れ様です!

医療現場でのアクシデントや、ヒヤリハットは本当にけっこうあったりしますからね・・
人間の体はまだまだ神秘の固まりですしね。
だからこそ、毎日が真剣勝負し続けるしかないわけですよね!

ロシアンルーレットですか・・
できれば避けたいです(汗)

■ドキドキ

ドキドキしながらこの記事よんでしましました。
患者さんにご無事で本当によかったですね。

訴訟リスクをかかえながらも、真剣に医療に取り組んで患者さんを助けようとする姿、本当に尊敬しています。

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