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2009.02.26UP

#75ギタリストとしてのジョン・レノンが単純に好き (斉藤和義)

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 デビュー曲のタイトルは「僕が見たビートルズはテレビの中」。ビートルズでもストーンズでもよかったんですけど、ビートルズは時代の象徴としてわかりやすかったし、もちろん大好きだし。あの曲を作ったのは90年とか91年くらいで、湾岸戦争があったりベルリンの壁が崩壊したりチャウシェスク大統領が処刑されたり、世界中いろいろすごかったでしょ。そういう中でできた曲だったんですね。60年代は自分としては後追い文化で、ヒッピー・カルチャー的なものに20代の頃は憧れたし、そういうものの象徴として名前を借りました。

 最初にビートルズに触れたのは小学校2年くらいのとき。うちにオフクロの弟が居候してた時期があって、その人がすごいビートルズ狂の人で、風貌もジョン・レノンっぽくしていて、カセットにビートルズのベスト・テープを作ってくれたんですね。"将来きっと、和坊は好きになるから"って2~3本くれたのかな。それをよく聴いてたんですね。ビートルズが何なのかもよくわからずに歌謡曲と同じレベルで、「イエスタデイ」とか「ミッシェル」とか単純にいい曲だなぁと思ってました。で、中学のときに『悪霊島』っていう映画で「レット・イット・ビー」が主題歌になってヒットして、クラス中が"あのいい曲は何だろう"ってなってるときに"ビートルズに決まってるじゃん"って。それが優越感だった。他に褒められるようなこともなかったんで、人の知らない音楽を知ってるっていうことでより音楽が好きになるきっかけになりましたね。でも中高生の頃はメタル青年でいかにギターを速く弾くかに命をかけてた。将来はギタリストになりたかったし、何を聴いてもギターしか聴いてなかったから、ビートルズに興味はなかった。高3くらいでそういうのも飽きてきちゃって、そしたら今度はビートルズしか聴かないっていう変な奴がいて、そいつがある日"今日からストーンズ・ファンになる"って言ってビートルズのアルバムを全部くれたの(笑)。それで改めて聴きだしましたね。

 音作りでもいろいろ参考にしました。参考どころか"パクリじゃん"みたいのもいっぱいある(笑)。今やビートルズはブルースに近いっていうかね、古典みたいなものだから。曲作りを始めた頃にもすごい参考にしてましたね。1曲が短いのにたっぷり聴いた感覚があるのは何故だろう、って考えたり。例えば2回目のAメロは1回目のAメロと最後の部分だけがちょっと変わる、そうすると繰り返しなのに違った風に聴こえるんだなとか、語尾だけ上げると次のサビにつながるなとか、参考になりましたね。レコーディングでも、ひとりで多重録音とかしだした当初ちょうど一緒にやってた蜂谷さんっていうエンジニアの人がジョージ・マーティンと友達で、ジェフ・エメリックに直に教えてもらってた人なんですよ。だからリンゴのドラムの音みたいにするにはフェアチャイルドっていうすごい古いコンプレッサーを使って、普通だったら有り得ないくらいにレベルを突っ込む。針が振り切れて動かなくなるくらいにするとあの音になるとか、そういうオタク的なことは結構やりましたね。ビートルズの写真を見て同じマイクを探してきて使ってみたりだとか。

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Gibson J-160E

「アコギなんだけどピックアップがついてて、エレアコの元祖みたいなやつ。ジョージもジョンもビートルズのライブではほとんどこれを使ってた。僕のはある楽器屋さんにいただいたんだけど、ピース・モデルっていって、ジョンが1回サイケ・ペイントにしたのを剥いで元のナチュラルに戻してベッド・インのときに使ったっていうやつの復刻版。アコギでも作りが半分エレキだから、アコギの鳴りとしてはわりとショボいの。最初は"なんだこのペラペラの音は"って思ったんだけど、ちゃんとつないでVOXのアンプから音を出すと、まさに"あぁあの音だ!"ってなるんですよ」


 ロンドンもリバプールも行きました。ミーハーに名所めぐりをしたくて、リバプールではマジカル・ヒストリー・ツアーっていうバス・ツアーに乗っちゃった(笑)。半日コースだったけど、すごいよかったの、それが。英語を喋れる人と行ったからガイドさんの言うことを通訳してもらえたんだけど、ガイドさんは本当にビートルズ大好きなお兄ちゃんで、親族から取材したすごい細かい情報を教えてくれる。ジョンがポールをバンドに誘おうと思ってた矢先にポールが新しいバンドを作るって噂を聞いて、それを阻止するために自転車で駆け抜けた丘がここです、みたいな(笑)。ジョンのお母さんが交通事故で亡くなった場所では「マザー」がかかったり、ベタベタなんだけど、その場では"おお~っ"て。きれいで風情があっていい街でしたね、リバプール。楽しかったなぁ。ロンドンではアビーロードの横断歩道も渡った。行ってもそこでは絶対写真を撮るまいと思ってたけど、撮った(笑)。

 ジョン・レノン・スーパー・ライブに何回が出させてもらって、ヨーコさんとも会いました。2~3年前に出たときかな、記者会見があって、"ジョンのどこが好きですか?"って質問されて、"ジョンのギターが好きです。愛と平和の人みたいなイメージが強いけど、それよりギタリストとして単純に好き"って言ったら、あとでヨーコさんに"あなたもギターをやられるのね。ジョンはいつも家でギターを弾いては「僕のギターは認めてもらえない」って嘆いていたから彼が聞いたら喜ぶわ"って言われて、ちょっと泣きそうになりました。

取材・文/佐々木美夏

斉藤和義

ミュージシャン

1966年6月22日生まれ。栃木県出身。93年シンガーソングライターとしてデビュー。「歩いて帰ろう」「歌うたいのバラッド」「ウエディングソング」等のヒット曲を持ち、そのダイナミックなライブ・パフォーマンスも多くのファンから支持されている。09年2月25日には音楽プロデュースを担当した映画『フィッシュストーリー』のサントラをリリース。主題歌「Summer Days」には"サージェントペッパーのポスター""笑うジョン、ポール、ジョージ、リンゴ"などのフレーズが登場する。
斉藤和義オフィシャルサイト http://www.kazuyoshi-saito.com/

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