――格闘技イベントに選手を派遣するという今までのお仕事から、裏方に回ってイベントを仕切る立場に変わりました。やはり緊張の種類が違いますか。
國保 そうですね、やっぱり考える部分や範囲がちょっと違ってきますから。今までは、出す選手一人か二人のことを考えればいい、逆に主催者側、プロモーター側から言われたことについてだけを考えればいいという感じでした。それが今度はまったく逆の立場のことも考えなければいけない。
――吉田道場の選手を送り出す立場であると同時に、イベント全体をまとめる立場でもありますね。
國保 そこはもうプロモーターサイドに徹しましたね。逆に、普通以上に吉田道場に対しては厳しくいろいろな部分で当たったというか、そうせざるを得なかったという感じですね。自分的には公平以上にほかの選手を見なきゃいけないというところがありましたし、ほかの選手からもそう思われちゃいけないというところでやってきましたから。
――吉田道場の自主興行という印象を与えてしまう可能性もありましたからね。
國保 最初はまあ、そういう声も出るかなと思いましたから、なおさら「そうじゃない」というところを見せなきゃいけないですし。やっぱり吉田(秀彦)選手は吉田選手の立ち位置、瀧本(誠)選手は瀧本選手の立ち位置、またほかにも五味(隆典)選手、三崎(和雄)選手が出る中で、各々の立ち位置に従って、公平以上にほかの選手を出すことができたかなと思います。「吉田道場イベント」とはもう言われていないんじゃないかな。
――たしかに、その色はまったくなかったですね。吉田選手、五味選手、三崎選手を並べたことで、王・飛車・角をきちんと揃えたイベントなんだなという印象を受けました。
國保 まず、日本からもう一度「総合格闘技」というものの熱を発信したいという思いと、今回ここに集ってくれた選手たちが、ただ出られる場ができればいいというのではなく、イベント自体を盛り上げたいという共通の思いを持ってくれていたと思いますから。王・飛車・角の話が出ましたけど、その3人に限らず、全選手が本当に頑張ってくれたと思っていますし、結果論ではありますけど、本当にみんながいい試合してくれた。やっぱり、そこに尽きると思うんですよね。どんなにいい演出をしようと、どんなに大きな会場でやろうと、試合内容が悪ければお客さんもガッカリするでしょうし。極端に言うなら、演出が悪くても試合が良ければ満足して帰ってくれるでしょうし。
――従来の格闘技イベントを意識した面もありましたか。ずっとPRIDEにも関わってこられただけに、「PRIDEみたいなものを見せなきゃいけない」とか、潜在意識の中に当然あってもおかしくないと思うんですが。
國保 それはないですが、まったく新しいものが作れれば一番良かったと思います。時間がない中ですべてを新しくするだけのアイデアが出し切れなかったということと、そこにまだまだ勝負が打てなかったというところでは、反省はありますね。どうしても今までのPRIDEを含めた総合格闘技に似たところで、いいところは拾っていこうとせざるを得なかった。それが現実だと思うんですね。ただ、これから2回、3回とやっていく中で「らしさ」というものは当然のことながら出していかなければいけないでしょうね。