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社説:北朝鮮の発射予告 人工衛星でも容認できない

 北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」を予告した。数年のうちに通信、資源探査、気象予報など実用衛星の運用を目指し、まずは実験通信衛星「光明星2号」を打ち上げるべく本格的な準備活動中との発表である。

 北朝鮮には長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準備らしき動きがあると報じられてきた。これを「ミサイルではなく人工衛星用のロケットだ。宇宙の平和利用だ」と否定してみせたわけだ。

 しかし、北朝鮮の核実験を受けた国連安全保障理事会の制裁決議は、核実験や弾道ミサイル発射のほか「弾道ミサイル計画に関連するすべての活動」の停止も求めている。

 そして周知の通り、弾道ミサイルも衛星用ロケットも基本的には同じ技術によって飛ぶ。従って人工衛星打ち上げもミサイル計画に関連があり、この決議に違反するという見解を米韓両政府は示した。米国務省報道官は「北朝鮮は非核化に集中せよ」と求めた。

 これは正論である。北朝鮮は国際秩序に挑戦し、周辺国を脅迫してきた。ロケットに原爆を積めば核ミサイルになる。宇宙の平和利用を主張する前に核放棄を進めるのが筋だ。現時点では、ミサイルであれ人工衛星であれ容認できないと言わざるを得ない。

 北朝鮮は98年、予告なしにテポドン1号を発射し、一部分は日本列島を飛び越えて国民に衝撃を与えた。発射後に北朝鮮は「光明星1号」という人工衛星の打ち上げに成功したと発表したが、米国の専門機関がいくら調べても該当する衛星は見つからなかった。日本はミサイルの発射実験だったと結論付け、米国は「ごく小型の衛星を打ち上げようとしたが失敗した」との判断を公表した。

 この時も今回の予告でも使われている衛星名「光明星」は金正日(キムジョンイル)総書記その人を意味する。打ち上げ成功なら、いかにも北朝鮮好みの国威発揚となる。誇示される技術力は、米国との交渉カードとしてのミサイルの価値を高めるだろう。

 また、ミサイルの開発で北朝鮮とのひそかな相互協力が取りざたされてきたイランが、2月初めに人工衛星打ち上げ成功を発表した。北朝鮮が続いても不思議ではない。

 しかし同時に、北朝鮮が「テポドン2号」にあたるミサイルだけを発射し、人工衛星の打ち上げに成功したと再び虚偽の発表をする可能性も排除できない。

 ミサイルか衛星か、結果を待つより発射阻止が重要だ。北朝鮮は明らかに米オバマ政権との交渉を求めて揺さぶりをかけている。しかし北朝鮮を説得できるのは中国しかあるまい。こうした状況を勘案すれば、米中が協力して北朝鮮の挑発的予告に対処するのが最善と言える。北朝鮮は真の国益とは何か、長期的視野で考慮すべきである。

毎日新聞 2009年2月27日 東京朝刊

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