08年10〜12月期の実質経済成長率が、35年ぶりの大幅マイナス(前期比年率12.7%減)となった。09年1〜3月期はさらに落ち込む可能性が高い。
景気の底割れを回避するために新たな景気対策が必要だ、とのコンセンサスが形成されつつある。景気悪化の速さや、GDP比7〜8%に達すると予想されるデフレギャップの大きさ、企業収益の悪化や雇用情勢の厳しさを踏まえ、必要十分な景気対策が直ちに策定・実施されるべきであろう。規模や内容の議論はあろうが、少なくとも「何もしなくてよい」という選択肢はないはずだ。
しかるに、政治の体たらくはいったいどうしたことか。08年度第2次補正予算は、関連法案審議の遅れにより、成立後ひと月たってもまだ実施できないでいる。09年度予算の成立はまだ先だし、解散・総選挙となれば、追加景気対策の議論はたなざらしになってしまうだろう。その背景に、次期政権をにらんだ政治の駆け引きがあることは明白だ。与野党の議員にとっては、自らの政治生命をかけた闘いなのだろう。
だが、昨年12月だけで34万人も失業者が増え、非正規雇用者が3月にかけて12万人強失職すると懸念されている時に、政権のために政策を犠牲にしているということは、政治が国民の痛みを共有していないということに他ならない。生活を守る、生活が第一といったスローガンが空疎に聞こえる。
米国オバマ政権は、発足後1カ月で過去最大の景気刺激策を成立させた。「直ちに対策を打たなければ、経済危機が国家の破滅に転じてしまう」という危機感、政治による痛みの共有が、政府や議会を駆り立てたのではないか。うらやましい。(山人)