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リニア中央新幹線:駅を我が町に 山梨の4地域が綱引き

リニアの想定ルートと駅を誘致する4地域
リニアの想定ルートと駅を誘致する4地域

 東京-名古屋をわずか40分で結ぶ予定のリニア中央新幹線。その途中駅の設置をめぐって今、山梨県が熱い。「各県1駅」が有力視されるなか、今年に入って4地域の綱引きが急加速。「支線を」との声まで出ている。予定ルート上にある他県(神奈川、長野、岐阜)にはまだ、そこまでの盛り上がりはない。なぜ、山梨だけ?【沢田勇】

 その理由は山梨リニア実験線にある。財団法人「鉄道総合技術研究所」とJR東海が運営し、97年に大月市-都留市(18.4キロ)で走行実験を始めた。元自民党副総裁の故金丸信氏が誘致したと言われている。県リニア交通課は「素通りさせるために実験線を誘致したのではない」と断言する。「リニア交通課」なる部署があるのも、全国で山梨県だけだ。

 県は鉄道総研に技術開発費134億円を無利子で貸し付け、実験線工事のための残土捨て場まで用意した。総額200億円もの県税を投じており、見返りとして駅の設置は当然というわけだ。

 JR東海はリニア中央新幹線の2025年開業を目指す。3ルートが想定されるが、山梨を通ることは確実だ。昨年12月、国土交通省がJR東海に対し、整備計画策定に必要な最後の調査を指示したことで、駅誘致の動きが急に熱を帯びた。

 富士山周辺の12市町村からなる「リニア中央新幹線富士北麓(ほくろく)・東部建設促進協議会」(図(1))は「世界遺産登録を目指す富士山と首都・中京圏を結ぶ架け橋に」(会長=小林義光都留市長)と、県東部への駅設置と富士山周辺までの支線の新設を要求。実験線をまっすぐ西へ延伸した付近の6町も「リニア中央新幹線建設・新山梨駅誘致促進峡南地域協議会」(図(4))を結成。JR身延線との接続を求める。

 甲府盆地東部の3市(図(2))、そして「本命」とささやかれる県都・甲府市を中心とした4市町(図(3))も誘致団体を組織して活動している。

 4地域は山や川など主に地形的な要因で隔てられ、歴史的に地域内の結び付きが強い。現在も広域行政事務組合などで結束が維持されているため、それぞれが別個に駅誘致に取り組んでいるようだ。

 JR東海の葛西敬之会長は昨年12月26日、日本記者クラブでの講演で、中間駅は各県に1駅ずつが「常識的な話だと思う」と語っている。ノンストップと各駅停車の「2系統を考えることも可能」とも述べた。

 山梨県民でもある鉄道アナリストの川島令三(りょうぞう)さん(58)によると、時速500キロで走るリニアを駅に停車させると所要時間が5分増える。仮に4県に1駅ずつ設置すれば、東京-名古屋の所要時間はノンストップの1.5倍の1時間かかる計算だ。現在、最速の「のぞみ」は同区間を1時間半余りで走っており、東海道新幹線とさほど違わなくなってくる。

 川島さんは「第2東海道新幹線と位置づけるなら、ノンストップが理想。地域活性化の点では各県1駅もいいが、ダイヤ編成が混乱するかもしれない」と話す。仮に中間駅の場所が決まったとしても、JR東海は建設費用の全額地元負担を求めており、全額JR負担を求める県との隔たりは大きい。

毎日新聞 2009年2月26日 13時23分(最終更新 2月26日 16時06分)

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